東京医大の差別減点、受験料6万円を女子は取り返せる?弁護士にきいてみた

女子SPA!

2018/8/8 15:46



文科省の前局長の息子を“裏口入学”させた東京医科大学が、一般入試で女子受験生の点数を全員減点したことが分かり、驚きあきれる声が高まっています。

東京医大の一般入試の試験は、一次試験はマークシート式のペーパーテストで足切りが行われ、突破できた受験生だけが2次の面接と小論文、適性検査に進む形式になっています。

この二次試験の小論文の結果について、女子受験生は女性だというだけの理由で全員が減点操作されていました。

その具体的なやり方は、今年の場合、まず男女全員に対して得点に0.8かけます→つぎに男子の現役・1~2浪生は20点をプラス、3浪は10点プラスします→すると女子全員(それと4浪以上の男子も)が“2割引き”のままなので、本当なら合格していた学生も大きく不利になり、落ちる女子が続出するという結果になるわけです。

差別的な点数操作は、女性の合格者を全体の3割前後におさえる目的で行われました。同大内部調査委員会によると少なくとも2006年からとされており、ともすると、もっと長年にわたって続けられてきたものだといいます。

◆女子受験生は受験料6万円を取り返せる?

東京医大の入試の募集要項には、女性が不利になることは書かれていません。このことを知っていれば、志望校を変えた女子受験生もいたのではないでしょうか。

同大の一般入試の入学検定料6万円。東京医大の今年の一般入試の受験者は女子1018人ですので、6108万円もの収入になっています(ちなみに男子受験者は1596人です)。

女子志望者が減ることは、すなわち収入減なので、そもそも女子を多くは合格させない腹づもり(同大の今年の入学者は男子71人、女子14人)にもかかわらず受験だけはさせて金を落とさせるとは、ゲスの極みと言うべき所業でしょう。

もし過去に受験した女子学生が個人もしくは集団で、一般入学試験の入学検定料6万円を返してくれるよう求めた場合は、かなえられるでしょうか?

グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に訊いてみました。結論から言うと「受験料の返還を求めることはできる」とのことなのです。(以下、「」は刈谷弁護士)

「憲法では、14条において性別による差別を禁止しています。したがって、結論から申し上げると、女性であることのみを理由として一律に減点している大学の措置は憲法に違反する違法な行為ということになりそうです。

もう少し深く掘り下げて考えてみましょう。大学側が、男女平等をまっとうし、男女比を1:1とするために、どちらかの性別の点数を調整していたというケースです。

この場合、結果的には男女平等になっているように見えますが、それによって落とされることとなった受験生の立場からしてみればたまったもんじゃありませんし、世間一般の理解も得がたいものがあるでしょう。

このように、結果的な男女平等を貫くための措置が不平等を招くということもあるため、何をもって“男女平等”とするのかというのは非常に難しい問題なのです。」

◆男性定員、女性定員というようなカタチで、あらかじめ定員数を公表しておくべきだった

「ここで、大学側の説明に注目してみましょう。

報道などによると、大学側は、『系列病院などの医師の数を確保するため、離職率の高い女性よりも男性を優遇した。』などの理由でこのような措置をとったと説明しているそうです。

女性は産休や育休があるからという理由が背景にあるそうですが、昨今では育児休暇に関しては男性もとるべきものだという風潮も高まっているので、この言い分はあまりに時代遅れということになるのではないでしょうか。

結果として男性合格者の数を多くしたいという大学側の方針そのものの適否について述べることはしませんが、もしそうしたいのであれば、男性定員、女性定員というようなカタチで、あらかじめ定員数を公表しておくべきだったと言えるでしょう。

もし、男性定員、女性定員を決められていて、それぞれの上位者が合格者となるような入試方法を採用していたとすれば、それは大学側の経営方針として法律上許されない基準であるということまでは言えないでしょう。」

◆知らずに受験した女性受験者たちは、少なくとも入学検定料の返還を求めることはできる

「このように考えると、今回の大学側の措置の問題点は、①女性であることのみを理由として一律に減点していたこと、および ②そのような採点方法をとることをあらかじめ公表していなかったこと、ということになります。

そして、公表もないままに女性のみを理由として一律に減点することは、憲法14条の趣旨に照らして許される措置ではないでしょうから、そのような基準があることを知らずに受験した女性受験者たちは、少なくとも入学検定料の返還を求めることはできると思われます。」

医師になる志を持ち勉強した女子受験生や、塾・予備校の費用などの金銭的負担も含めサポートしたその家族の希望を踏みにじったにもかかわらず、“女性医師や研究者の育児と仕事の両立を支える”国の事業に選ばれ、三年間で計8千万円の補助金を受けていた東京医大。言われずとも、自ら進んで女子受験生に受験料の返却をしてもいいんじゃないでしょうか。

◆医師だけじゃない?企業採用でも「女性は働けない」扱い

今回の減点について、東京医大の内部調査委員会は「女性差別以外の何物でもない」とハッキリ報告書に記した上で、同大の前理事長・臼井正彦被告は、女性は結婚出産で育児をし、勤務時間も長くできないとみなし、「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」などと発言したとしています。

彼のように「女性は働けない」といった理由で男性を優遇することが、医師の業界だけでなく、企業の採用時にもなされているのが現状だと聞きます。

この状況はなんとかならないのでしょうか? また、採用に不合格だった女性が訴訟を起こすなどした場合、勝ち目はあるでしょうか?

刈谷弁護士に答えてもらいました。

◆企業の採用試験では男性の優遇が表面に現れにくい

「“私企業において男性が優遇されている”ということは、それが仮に事実だとすれば、今回の大学入試とは異なり、それが表面に現れにくいという特徴があります。

つまり、大学入試で行われる学力テスト等の場合は明確に“点数”によって合否が決まるのに対し、私企業の採用試験では、“面接”という点数化することが難しい方法が用いられているので、男性を優遇しているかどうかが不明であることの方が多いのです。

そして、私企業の職務内容にはさまざまなものがあるでしょうから、採点項目の中に“体力”というものが設けられていたとしても、それが直ちに男性を優遇し、女性を差別する目的のための項目であるとは言えないでしょう。」

◆企業の採用での男性の優遇があっても法的には難しい

「このように、私企業の採用基準についてはそもそも公表されていないことも多く、どのような人材を欲しているかということについては第三者が口出しできるような内容ではないことが多いでしょうから、たとえば女性であることのみを理由とした不利益な取り扱いが行われていることが明らかにでもならない限り、採用試験を違法ということは難しいと思われます。

したがって、結果的に採用試験の結果として男性の採用数が多くなったとしても、それは男女平等な試験をおこなった結果であるという会社側の言い分が優先されるでしょうから、現実に“私企業において男性が優遇されている”としても、そのような現状が改善されるようになることもまた、難しいといえるでしょう。」

男女平等への道のりは、なかなか遠いようです…。ただ、このまま黙っていては、ますます遠くなるばかりであることも間違いないですね。

胸くそ悪い思いをするのは、今生きている私達の世代で終わりにしなければ!と平成最後の夏、心に刻みました。

【刈谷龍太(かりや りょうた)弁護士】

1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院 修了。2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラムの執筆などを行う。男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務においても顕著な活躍を残す。

<文/女子SPA!編集部>

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