「女性作家は面白い漫画を描けない」発言に、末次由紀や羽海野チカらが反論!

wezzy

2018/8/8 01:15


 東京医科大学が入学試験で行っていた女子合格抑制の問題。あまりにもひどい女性差別が秘密裏に行われていたことには怒りを禁じ得ないが、こういった差別は社会全体にはびこっているのかもしれない。そう思わざるを得ないような話がツイッターで話題になっている。きっかけは、漫画家のコダマナオコ氏によるツイートだった。

<以前、男性編集さんに「結局女性作家って本当に面白い漫画は描けないじゃないですか」って言われた。私がどうかはさておき女性でもすごい作品描かれる先生はいっぱいいるのにな。ということを全然関係ないけど、東京医大の件きっかけで思い出してた>

この“男性編集者による発言”に対しては、多くの怒りの声が飛んだ。まず、『ちはやふる』(講談社)の末次由紀氏はこのようにツイートしている。

<この発言については愚かすぎて反論する気にもなれない。「地球は丸くない」と言われたような気持ちで、バカだな、としか。性別による作家性で好みでない場合はあると思いますが、みんながみんなその線引きを飲めるわけがない。一般化は絶対できない>

<「女性作家」という一般名詞だとなんか男女論的な文脈に話が落とし込まれる感覚があるけど、「高橋留美子、萩尾望都、岡崎京子って本当に面白い漫画は描けないじゃないですか」と固有名詞で言い換えると自然に脚がガクガク震えてくるな。よくもまあ漫画編集者の身でそんなトンチキなこと言ったなという>

女性漫画家を前にして、面と向かって「女性作家は面白い漫画を描けない」などと言う人は社会性の欠けた相当な特異例な気もしなくはないのだが、こういった線引きで作家を判断する価値観は、その男性編集者だけのものではないようだ。

末次氏は<25歳くらいの時、出版社のパーティで「本当に面白い漫画は30歳までしか描けない」って編集者に言われたことがありました。さあまた来た。なにその線引き。当時25歳だったから「そうなんだ」と思っちゃったけど、そんなわけあるかぁ>ともツイートしている。この話は女性差別とは直接関係ないが、「人をラベルで判断する」という点では、同根の問題である。

漫画業界という、世の中の半歩先を進んでいなければならないような場所でも、こういったことが頻発していることには頭が痛くなるが、「女性作家は面白い漫画を描けない」発言に怒りの声をあげた作家は他にもいる。

『ハチミツとクローバー』(集英社)や『3月のライオン』(白泉社)の羽海野チカも、このようにツイートして異論を投げかけた。

<「結局女性作家って本当に面白い漫画は描けないじゃないですか」とか言う編集が現れたら、私の担当のT田さんが「話詳しく聞かせてもらおうか」って腕とかゴキゴキいわせながらその編集部に行くと思う(※ガチ高橋留美子先生ファン)>

声をあげたのは女性作家だけではない。『機動警察パトレイバー』(小学館)のゆうきまさみ氏も<「本当に面白い」ってのがどういうことかよく分からないけど、少なくとも僕は過去に女性作家の描いた多くの面白い漫画と出会って来ましたよ>と、男性編集者の見識に疑問を投げかけた。

これまでに名前をあげられた萩尾望都、高橋留美子、岡崎京子はもとより、長谷川町子、さくらももこ、大島弓子、山岸涼子、柴門ふみ、吉田秋生、など、日本の漫画史にその名を刻んだ女性漫画家は数多く、その数を列挙したらリストはどこまでも続くものになるだろう。

件の男性編集者の「女性作家は面白い漫画を描けない」は不勉強にもほどがある意見なのだが、それを反論の論拠とするのは少し違っているのかもしれない。

そもそも、「男性作家」や「女性作家」というラベリングで人を判断しようとする、その考え方自体に大きな問題があるからだ。そして、その発想は「差別」につながっていくものである。

末次氏は一連の議論のなかで<知ったような顔して線を引いていく人がいるけど、それらを超えていくことが私たちにはできる。それを証明しながら生きて行きたい。面白いものを作れるのは30歳まで? 女性には無理? は? どうして? 何を見てるの? ないよそんな線!>とツイートしていた。

東京医科大学の一件は、2018年の現在でもいまだに女性差別の問題がなにも解消されていないということを示す象徴的な例だったが、末次氏が<それらを超えていくことが私たちにはできる>と言っているように、漫画をはじめとした文化は人々の価値観を変える大きな力になる。

(倉野尾 実)

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