「俺はデキる!」と勘違いしてる人にすすめたい。「絵」を用いた自問自答法――タムラカイ(ラクガキコーチ)

ビジネスパーソンとして活躍するためには、日頃から自問自答、内省を繰り返すことが有効だ。しかし、具体的にどうやって内省をすればいいのか分からない、という人も多いのではないだろうか。

今回は、グラフィックカタリスト(=アイデアや感情をイラスト・絵で・ラクガキで可視化する専門家)として社内外のイベントで活躍する富士通のタムラカイさんに、絵を用いた内省のコツを伺った。

プロフィール
タムラカイ(タムカイ)さん

2003年富士通入社、UI/UXデザイナーとしてWeb制作やスマートフォンブランド立ち上げなどを担当。個人活動として2009年個人ブログ、2014年にラクガキ講座『ハッピーラクガキライフ』」を開始。2016年「グラフィックカタリスト・ビオトープ」を結成。自著「アイデアがどんどん生まれる ラクガキノート術 実践編」ほか数冊。


「俺はデキる!」と勘違いしていた、イタい20代前半

さまざまなビジネス系イベントにグラフィックカタリストとして登壇し、所属先の富士通でも研修講師やイベントのグラフィックレコーディングを担当するなど、大活躍なタムカイさんだが、意外にも20代前半は「暗黒期だった」という。

タムカイさん「自分にはデザイナーとしてのプライドと自信はあるのに、社内のデザインコンペに全く通らず、社内ではむしろ『仕事ができないダメなやつ』というレッテルを貼られていました。にもかかわらず、会社やプライベートの人間関係で『俺はデキる!』と高慢な態度で接していたので、入社してわずか半年で友人がほぼ全員去っていきました。まさに暗黒期でしたね」

そんなタムカイさんを救ったのが、同じ社員寮に住む同僚の「お前、このままだと本当に誰もいなくなるぞ」という耳の痛いひと言。
自分でも薄々「このままではマズい」と思っていたが、痛いところを突かれて腹をくくったという。

暗黒期から抜け出すためにタムカイさんが取り組んだのは、ロールモデルを見つけ、徹底的にマネすること。人間関係は、前述のイタいひと言を伝えてくれた同僚の立ち振舞を、徹底して取り入れ、話し方など1つずつ変えていった。

仕事面では、当時社内で最も評価されていたデザイナーの作品を社内サーバから全てダウンロードし、画像編集ソフトで3200倍まで拡大。グラデーションの角度や影の落とし方など、徹底的に研究した。

タムカイさん「薄々気づいていたことをズバッと言われて『覚悟』が決まりました。
自分が変わるためには『自覚』と『覚悟』が必要です。自分と向き合って自覚し、何か1つやる/止めるという覚悟を決めたんです」

スキルアップを重ねた結果、徐々に仕事で評価されるようになり、受け答えの態度も変わっていったという。当初は「ウチのチームに来るな!と思っていた」という上司も、認めてくれるように状況が変化していった。

絵に描いてアウトプットすることは、実は簡単

当初こそ他人からの忠告で「自覚」と「覚悟」を経て自分を変えきたタムカイさんだが、今は絵を描くことで自分との対話(=内省)をおこなっているという。

しかし一般的なビジネスパーソンは、そもそも絵を描くことに慣れていない。
タムカイさんのように、絵を描くことで自分との対話を行うには、どうすれば良いのだろうか。

タムカイさん「それを解決するのが、僕がいろいろなワークショップで伝えている『エモグラフィ』と『エモーションマップ』です。言葉 = 文字情報だけで考えるのは限界があるので、シンプルな図版やアイコンをを直感的に組み合わせることで思考を広げるきっかけにすればいいと考えています」

エモグラフィとは、感情(emotion)+記法(-graphy)、つまり感情記述記号を用いた非言語コミュニケーションの技法。

ワークショップでは、まず
口(5種類)×目(5種類)×眉毛(4種類)=100種類
の表情の描き方を教えている。

エモーションマップは、マインドマップのように主題を中央に書き、周囲に4つの表情と吹き出しを書いてみることから始める。表情に合わせて吹き出しの中のセリフを埋めていくことで、それが主題に対して考える「切り口」になる。例えば主題を自分自身にすることで、自分が今感じていることや、置かれた状態を俯瞰して考えられるようになるのだ。

この2つのツールを使うことで、自問自答や内省のキッカケが得られるとタムカイさんは考えている。

仕事を任されるには「本気の出し方」を知っておくべき

タムカイさんは自身のミッションとして「世界の創造性のレベルを1つ上げる、本気で」ということを掲げている。

昨年9月頃から「世界の創造性のレベルを1つ上げる」と言い始めていたが、末尾に「、本気で」と付けたのは最近のこと。「そんなこと、本当に思っているの?」と言われたのがキッカケだった。

タムカイさん「『本気でやる』ことは自分にとって大事にしていることだと気づいたんです。本気でやると、やっぱり人に伝わるし、本気でやって結果が出れば、次の仕事も来るんですよね」

しかし、最近「本気の出し方を忘れている人が多い」とタムカイさんは警鐘を鳴らす。普段から70%の力しか出していない人が、いきなり100%の力は発揮できない。

本気の出し方を思い出すために必要なのは、自分の状況が「ヤバい」と自覚し、そこから脱出すること。または、仕事だけでなく、人から依頼されたことには、常に120%の結果が出るようにすること。

タムカイさん「ちょっとしたことでも120%返そうと思えるので、依頼者が自分の好きな友人や仕事仲間だといいですね。それを繰り返すうちに、本気の出し方が見えてきます」

周りから何か依頼してもらうためには、そもそも自分は何が好きなのか、何ができるのかを周囲に発信しておく必要がある。自分は何が好きなのか、何ができるのかを把握するためには、やはり自問自答し内省することが必要。全ては1本の線につながっているのだと言える。

自分の強み・アイデアを上手に周りにアピールしよう

タムカイさんは最近、得意なことやできることが分かっている友人に、仕事を頼むようにしているという。
本気でやってくれそうな人に依頼し、本気で返してもらえたら次も仕事を依頼する――それを繰り返すことで、相手に常に本気を出せるようになってほしいと考えているからだ。

その一環で、近日発売予定のツール「オトグラフィカード」のイラストを友人に依頼したところ、必要な作品数は40点だったにも関わらず、候補作を100点も出してくれた。本気で取り組んでくれた結果、先日無事完成したとのこと。

タムカイさん「自分の強みやリソースがはっきりしないと、『好きなことをやりたい』といくら言っても、任せてもらえないはずです。
自分の強みとアイデアが、所属組織の方針と合致していることを周囲に上手に伝えることで、ようやく仕事として任せてもらえる可能性が出てきます」

タムカイさんは、今後もエモーションマップや、新たに開発した「オトグラフィーカード」を用いながら、自問自答や内省のキッカケを作り、自分の好きなことを仕事につなげられる人を増やして、世界の創造性のレベルを1つ上げられるよう、本気でコミットしていきたいと語ってくれた。

エモーションマップは、誰でも今日からすぐ使えるツール。ぜひ自らとの対話のキッカケに活用してみてほしい。

文・筒井智子 写真・小澤亮

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