某企業、夫を亡くした69歳女性に金融商品を押し売り→1600万円の損害与える


 2月8日、警察庁は2017年に全国の警察が認知した特殊詐欺は1万8201件(前年比28.6%増)で、7年連続で増加したと発表した。被害総額は約390億3000万円にも上り、被害者の7割が65歳以上だという。

このように、明らかな詐欺集団による案件は確かに多いのだが、あおい法律事務所の荒井哲朗弁護士によれば、まっとうな金融商品と明らかな詐欺との、その中間ともいえる詐欺まがいの金融商品が世の中に出回っていて、しかも表向きは健全に見える販売会社も少なくないという混沌とした状態にあるという。

2013年、前月に夫を亡くして哀しみに暮れるE子さん(69)のもとに、金地金(金の延べ棒のこと)の販売会社と称するF社の営業マンから、純金積立の電話勧誘があった。「今は何も考えられない」と言うE子さんに、「金は絶対的に不動の資産だから」「100パーセントの責任で悪いようにはしない」などと営業マンは言葉巧みに話を持ちかけた。

その商品は、一般的な純金積立を装いながらも、実は分割金の支払いが200回前後に設定されており、支払いが完了しなければ金の所有権は移転しないという先物取引的なものだった。つまり、E子さんは85歳を過ぎなければ現物を受け取ることができない計算になる。中途解約は可能だが、結局は手数料などで客が不利な条件になるように設定されている。

しかし、営業マンは商品の仕組みやリスクに関する説明は一切せず、中途解約をしても現物を受け取ることができると虚偽の説明までして、E子さんと契約を結んでしまう。その商品が商標登録されていることもあり、E子さんはすっかり信用して、勧められるままに数回にわたり金や白金の売買契約を結んだ。

その後の対応で不信感を持ったE子さんが3年後に中途解約を申し出たところ、それまで2000万円を投じていたにもかかわらず、400万円しか戻ってこなかったことに愕然とする。思い悩んだE子さんは娘に相談し、消費生活センターを経て荒井弁護士にたどり着き、訴訟に踏み切ることになる。

今年1月、高裁の判決が下った。「公序良俗に著しく反し、不法行為を構成させるに十分な違法性を有する」とし、F社に残りの1600万円を支払うことを命じたのだ。ところが、F社のHPを見ると、その商品を「手軽にできる従来にない純金積立」と謳い、今もなお主力商品として販売している。

「判決は高裁のものですから影響力は強く、業者としては無視し得ないと思います。今後は開き直って商売を続けるか、何か工夫をこらしてくるかは、まだわかりません」(荒井弁護士)

HPにはさらに「類似商品、類似業者にご注意ください」とか、「金関連の特殊詐欺が報告されているので十分ご注意ください」などの注意書きがあり、知らない人が見ればまっとうな会社だと勘違いしそうだ。

●投資か投資詐欺かは「見抜けない」と心得よ

詐欺や詐欺まがい商法は、人が興味を引きそうな何か新しいものをまとわせることが多い。最近増えているのが、仮想通貨のまがい商法だ。今年に入り、仮想通貨の不正流出が問題になったが、それでも仮想通貨の人気は衰えを知らない。悪徳業者は、そこに目をつけるのだ。

「高配当プログラムを謳ったものや、マルチ商法みたいなもの、金(きん)と交換できるというものなど、いろいろですね」(同)

荒井弁護士は取材などで「投資か、投資を装った詐欺かはどうすれば見分けられますか?」という質問をよく受ける。そんなときには、「あなたにわかるはずがないし、わからないということをわかってください」と答えている。

「それほどの情報を持っていない一般の人が、『そのリスクはどこにあって、どの程度なのか』『リスクが顕現化したときにはどういう損失が生じるのか』『詐欺じゃないのか』などということは判断できないんです。だから、世間では『貯蓄から投資へ』と盛んに煽るけれども、まっとうだといわれている投資商品だって、相当のリスクがある」(同)

それでは、詐欺や詐欺まがいの商品にひっかかってしまった場合、勝訴を勝ち取るポイントは何なのだろうか。

「金融取引をめぐる訴訟というのは、いろいろな事情が総合的に判断されます。だから、違法性の決め手はコレという性質のものではない。被害者の属性――資産、収入、学歴、職歴、投資経験、現時点の判断力の状況など――、そして買わされた商品のリスクと複雑さの程度に応じた説明をしているのかどうかなどを全体的に考察するのです。たとえば、東大卒で金融機関にずっと勤めていた人が『業者の説明が足りなかったから騙された』と言っても、勝つ見込みは少ないかもしれない。つまり、その人にふさわしい商品なのか、業者は客の理解能力に応じた商品説明をしているのかということですね」(同)

もしだまされたと気づいたときには、あきらめないことが重要である。
(文=林美保子/フリーライター)

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