業界と世間のタブーを「無視」して躍進する話題のブランド

TABILABO

2018/8/7 19:00


「若い人がファッションへの興味をなくし、洋服が売れなくなった」──。最近、よく聞くこんな話。でも、それって本当?  SNSにはお気に入りのファッションに身を包んだセルフィーが日々アップされ、多くの“いいね!”やシェアを獲得しているのも、また事実。「服が売れないのはブランドのせい」。 そう語るのは、SNSの情報発信力を駆使し、今、10代を中心に絶大な支持を集めている「BLACK BRAIN Clothing」のブランドディレクター・iLLNESS氏。90年代後半~00年代前半の“裏原宿ブーム”にヒントを得た、現代のストリートブランドの在り方とは……。メディア露出を避けてきた人気ブランドのキーマンに迫る。

話題のストリートブランド
「BLACK BRAIN Clothing」



「BLACK BRAIN Clothing」(以下 BBC)は、2016年にiLLNESS氏が仲間内に配るためのTシャツを刷ったことからはじまったストリートブランド。

挑発的なグラフィックや、iLLNESS氏がSNSに公開する過激な画像、コメントが話題となり、ウェブストアのみでの販売ながら新作は発表後数分で完売し、ラフォーレ原宿などで開催されたポップアップショップでは、徹夜組を含む長蛇の列ができるほど圧倒的な注目度と人気を誇る。

話題のミュージシャンやアーティスト、人気YouTuberなどに多くの愛用者をもつ注目のブランド。

今の時代、ストリートは
路上にはない。あるのは......



──BBCは一般的に“ストリートブランド”と呼ばれることが多いと思いますが、iLLNESSさんはストリートの定義をどう捉えていますか?

ストリートは“居場所”だと思ってる。

家や学校に居場所をもてない人たちにとって、唯一の居場所になれるところ。だから、僕らが若いころは、みんな服屋やスケートショップに溜まったり、友だちのバーにいったりしてた。ほかに居場所がある人はそんなところにいかないけど、家や会社からはじき出された人たちが辿りつく場所がストリートなのかなって。みんなでクラブにたむろしたり、かつてはホントに“路上”にストリートが存在してた時代もあった。

でも、現代は街のなかにストリートは存在してなくて、インターネットにしか存在していないと思う。

だって、昔はなんでも許されてたはずの路上なのに、今じゃできることは限られてるし、一方でネットでできないことは存在しない。

そうなると、みんなネットをベースに住みはじめるのは当たり前だと思う。

──路上とネットでは、コミュニケーションの手法がまったく違うように思うんですが……。

BBCの熱心なファンの子たちは、高校生ぐらいのキッズが中心なんだけど、彼らはSNS上だとすげぇフレンドリーだけど、実際に会って目を見て話しても、ほぼ何も伝わらないっす。

今の子たちは友だちと基本情報をやり取りするベースがSNSだから。

だって、SNSのアカウントを3年間も相互フォローしてたら、3年間ずっと毎日何十通も文通してるようなもんだからね。それこそ生活リズムもわかっちゃうぐらい相手のことは理解できるし、SNSの情報量ってやっぱりすごいんだよ。

──BBCの人気の理由に「SNSの活用の巧さ」があると思うんですが、そういった点も含めて、既存のファッションの売り方をあえて無視しているようにも感じます。

そもそも、春夏とか秋冬ってシーズンごとにコレクションをしっかり作って売るやり方を「今はやりたいことをパッとその場でできる状態なのに、馬鹿くせぇ」って思ってる。だって、Tシャツのプリント屋にデータを入稿して、売れたらそのままお金になるって状態が整ってるのに、半年後に狙いを絞ってチームで動くなんて……馬鹿らしいでしょ。

──確かに、BBCは新作をリリースする頻度が既存のファッションブランドからは考えられないほどハイペースです。毎週金曜日に新作をリリースする意図は?

意図っていうか、どうやったら俺は自分のことをかっこいいと思えるかって考えたときに、たまにデータを分析して、その答えと“まったく違うこと”をわざとやって結果を出すってのが必要。「何時にPV(ページビュー)が増えるとかってデータは俺もわかってるし、お前らはそれを信じてやってればいいよ。でも、俺は違うから。俺が売りたい時に、勝手に売るから」って感じ。

「お前らは俺が売るまで勝手に待ってろ」って姿勢を貫けなくなったら、そのときは辞めどきだなって思ってる。

90年代の「裏原宿ブーム」のなかで
感じたトッポいカッコよさ



──ブランド立ち上げ当初は、突然新作の販売を開始してファンを慌てさせたり、わざと品薄感を煽ってるのかなと思っていました。

あれはむしろ、データを気にせず、たんに売りたいときに売っただけ。

最初のころはリリースのタイミングを告知しないで販売を開始したら「なんて不親切なブランドだ」って言われつつも、そのうちみんながリリースタイミングを予測して勝手にホームページを見にくるようになった。そのときは「時間の盗み合いから抜け出すことができた」って思えて、すごい嬉しかったですね。

テレビでも映画でもザッピングを防ごうと躍起になってるでしょ? そんななかで「この15分間だけでいいから俺を見ろ」ってのが俺はできてるんだなってわかって「これでいいんだ」って思えた。

俺はまさに90年代後半の裏原宿ブームの全盛期が原体験として刷り込まれてるんですけど、あのときの裏原宿のアパレル関係者たちって……まぁヤンチャだった(笑) 店の裏でハッパ喫ってるし、酒飲みながら接客してるし、ショッパーに買ったもんを適当に突っ込んで「おい、何見てんだよ」って感じで客に渡してたし、すげぇ接客態度が悪かった。

そういうトッポいクールな人たちがひどいサービスで客を相手にしてるけど、それでも商品が売れてるってのがカッコよかったんですよ。

それがファッションの原体験として刷り込まれてるから、自分が同じことをやっても許されると思ってるし、許されてるってことはみんなに特別扱いされてる……つまり、みんなからカッコいいって思ってもらってるって状況だと思ってます。

──確かに、BBCはかつての裏原宿ブームのSNS版のように感じるんですが、それは意図してのこと? それともナチュラルに?

じつは完全にナチュラルです。

ただ、自分が心臓マッサージ受けてる最中の写真をTシャツにプリントしたり、SNSに新作の販売時期の問い合わせがきても「はぁ? 知らねぇ」みたいな返事をしたり、自分がムチャクチャなことをやってるのは自覚してる。あえて一度ムチャクチャなことをやってみたら反応がよかったので、そこから分析しはじめたってのがあるかもね。

塩対応どころかタバスコみたいなやり方だけど(笑)、それでも支持してくれるってことは間違ってねぇなって。

人気YouTuberやミュージシャンとの
フレンドシップで広がった可能性



──当時の裏原宿では、有名人が着用して人気に火がついたブランドがたくさんありましたが、BBCも有名なYouTuberが着たことでブレイクした側面もあると思います。それは当時の流れを意識して、有名人に配ったりしてるのかなって思ってたんですが……。

売れてるyoutuberにいきなり服の着用をお願いしたことはないよ。マホトくんなんかも、もともとは俺がへきトラハウスのカワグチジンとつながってて、カワグチ経由で向こうから声をかけてくれただけ。

あとは、ヒップホップミュージシャンのJinmenusagiくんもSNS繋がりだし、YENTOWNのJNKMNなんかは、最初は普通にネットショップ経由で買ってくれて「ごめんね。先に気づけばプレゼントしたのに」って、あとで伝えたぐらい。「ブランド立ち上げたから着てよ」ってお願いするんじゃなくて、もともとSNSで繋がってた人たちから「Tシャツちょうだい」っていわれてプレゼントしただけ。

よく「有名人に服を着せるのうまいですね」っていわれるんだけど、全部パッシブ(受け身)なの。それが裏原宿の時代は「俺らは杉並」とか「俺らの地元は新宿」みたいな感じで地域やチームごとにトッポい連中が繋がってたけど、俺らの場合は繋がりが地域じゃなくてインターネットになっただけなんだよね。


── 一般的には、ネット上のコミュニティというと少しマニアックなイメージがあり、不良やストリートというカルチャーとは距離がある印象なんですが、BBCの周辺にはかなり不良な人たちが集まっている印象です。

いわゆる“クラスタ”(群れ)っていうか、ウェブにも地域性ってあるから。

ウェブ上ではコミュニティってレイヤー状に広がってて、そのなかにはオタクがいるレイヤーもあればトッポい連中がいるレイヤーもあって、それぞれが繋がってる。

俺の場合はアパレルだとかストリートカルチャーがバックボーンで、不良っぽい人たちやそこに憧れるキッズに気に入ってもらえたって感じ。ストリートの現場が路上からインターネットに変わっただけで、今も昔もキッズのやってることは一緒なんだよね。

ストリートファッションにしても昔は街で見かけたカッコいい不良に憧れて服を買ってたのが、今はインスタで見るように変わっただけで、トッポい子は相変わらず“目新しくて人と違ったもモノ”を常に探してる。

ストリートカルチャーにしても、昔はセンター街のイラン人から携帯番号ゲットしてクスリ買ってたのが、今はSNSのDMでテレグラム交換して取り引きしてるだけでしょ?

結局、やり方は違ってもやってることは同じなんだよ。


「BLACK BRAIN Clothing」

HP/http://www.blackbrain.tokyo/

iLLNESS twitter/https://twitter.com/illne5s

iLLNESS Instagramhttps://www.instagram.com/illne5s/?hl=ja


【後編】はこちら

「すべてを晒さなきゃブランドは生き残れない時代になる」iLLNESS インタビュー【後編】

Top image: (C) 2018 TABI LABO

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