若きヴァイオリニスト・戸澤采紀 ヴァイオリンとの出会いから現在、そして将来の夢

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2018/8/7 15:00


2016年に15歳の若さで日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門第1位を獲得した、戸澤采紀が、2018年9月21日に東京の浜離宮朝日ホールでリサイタルをひらく。彼女は、2001年、ヴァイオリニストの両親(父親は東京シティ・フィルのコンサートマスターを務める戸澤哲夫)のもとに生まれた。

ーーヴァイオリンを始めたきっかけは何ですか?

両親がヴァイオリニストなので、両親のひらく(レッスンの)発表会で弾くために幼稚園生のときからヴァイオリンには軽く触っていました。最初、母に習っていたのですが、『お母さんは怖いから、お父さんに習う』といって、父に習ってみたら、父は母の百倍怖くて、それで一度ヴァイオリンをやめました。そしてしばらくピアノを習っていました。

小学校1年生のときに、父と母がたまたま同じ舞台でオーケストラのなかで弾いている(注:父がコンサートマスターを務める東京シティ・フィルの演奏会に母がエキストラとして参加)コンサートを聴きに行って、ピアノではこの中に入れないんだなと思って、そこで『ヴァイオリンをやりたい』と両親に言いました。

ーー曲は何でしたか?

東京シティ・フィルの定期演奏会でマーラーの交響曲第7番『夜の歌』でした。大きなオーケストラの迫力に圧倒されました。

小学1年生の終わり頃から、父が小さい頃についていた保井頌子先生に習って、本格的にヴァイオリンを始めました。プロを目指して毎日練習するようになりました。
戸澤采紀
戸澤采紀

ーー毎日どれくらい練習していましたか?

小学1、2年生のときは毎日1時間くらいでしたが、小学校3年生のときには毎日2時間くらい楽器に触れるようになったと思います。

ーー初めてオーケストラと共演したのはいつですか?

フルのオーケストラでは、中学校2年生のとき、かながわ音楽コンクールで大賞をいただいて、神奈川フィルとシベリウスの協奏曲を弾いたのが初めてでした。

そして中学2年生のときから3年間、フィンランドの代表的な室内楽音楽祭、クフモ音楽祭に参加しました。シベリウスの音楽を身近に感じることができるようになりました。

ーー中学校はどのように過ごしていました?

近くの公立の中学校に通っていました。部活は茶道部で、ヴァイオリンは地道にコンクールに挑戦するという感じでした。そして、中学3年生のときに、小学6年生から毎年受けていた学生音楽コンクールで第1位をいただきました。

ーー高校は東京藝術大学附属高校に進学されましたね。

玉井菜採先生が藝大にいらして、藝高に入ればたくさんレッスンが受けられると思って、藝高を受験しました。

ーーそして高校1年生のときに日本音楽コンクールで優勝されました。

コンクールは予選から3次までいろいろな曲を一気に勉強できる良い機会だと思いました。自分なりに最善の準備をして、それを評価していただけたのは、素直にうれしかったです。本選では一番好きなヴァイオリン協奏曲であるシベリウスの協奏曲を弾きました。
戸澤采紀
戸澤采紀

ーー9月の浜離宮朝日ホールでのリサイタルでは、モーツァルト、ベートーヴェン、イザイ、プーランク、ミルシテインなど、多彩なプログラムを組んでいますね。どのようにプログラムを決めましたか?

今年の夏に国際コンクールを受けに行くので、その課題曲も入れて、幅広く選びました。

まず、プーランクのヴァイオリン・ソナタが大好きなので、それをメインにしようと思いました。中学生のときから、ジェラール・プーレ先生のレッスンを受けていて、このソナタはエスプリやちょっとしたニュアンスがものすごく生きてくる曲だと思います。プーランクのソナタは、フランス音楽にしては、暗くて、深い作品です(注:スペイン内戦で銃殺された詩人ガルシア・ロルカの思い出に捧げられている)。

イザイの無伴奏ソナタ第5番は、イザイの6つの無伴奏ソナタのなかではマイナーな方ですが、その魅力を伝えたいです。第5番は、弾いていると、風が吹いたり、光が差してきたりなどの風景を感じるので、そういうものを表現できればと思います。

モーツァルトのソナタ第18番は、あとのプログラムが重いので、最初に、お客様への挨拶として、この明るく伸びやかなに演奏できたらいいなと思っています。

ベートーヴェンのソナタ第8番は、ずっと弾きたいなと思っていました。中身が凝縮されていて、明るく、温かく、表情豊かな曲です。

ミルシテインの『パガニーニアーナ』は、コンサートで聴いて、なんてカッコいい曲なんだろと思いました。華やかで、ヴァイオリニストの作った曲なので、たった8分のなかにヴァイオリンに可能な技巧が詰め込まれています。

ーー今回のリサイタルについて抱負をお願いします。

初めて大きなホールでリサイタルをひらくので楽しみです。憧れのホールの響きを感じながら、伸びやかに楽しく、17歳の今しかできない、瑞々しい演奏をしたいと思います。
戸澤采紀
戸澤采紀

ーー今、高校3年生ということですが、将来的にはどういうヴァイオリニストになりたいと思っていますか?

私の将来の夢は、ベルリン・フィルに入ることです。私がヴァイオリンを弾くようになったきっかけが最初に言ったオーケストラのコンサートで、オーケストラに入りたいからヴァイオリンを続けてきました。

ベルリン・フィルに入りたいと思ったのは小学校のときからです。カラヤンの指揮するベートーヴェンの交響曲第7番を初めて聴いたときに本当にビビっと自分のアンテナに引っ掛かりました。ベルリン・フィルを生で聴いたのは、サントリーホールでのラトルが指揮するベートーヴェンの交響曲第1番と第3番です(注:2016年5月)。ホールが地鳴りするようなパワフルな音だけでなく、それぞれの演奏家が自由に音楽をしていて、自分から音楽を作っている。指揮者が提示し、演奏家がそれに応えるだけでなく、その上をいくような音楽を作っていく。そういう音楽の波が感じられ、とても憧れます。

ーーベルリン・フィルがお好きなのですね。

私はクラウディオ・アバド(1933~2014)の大ファンなのですが、それはアバドがベルリン・フィルの芸術監督をしていた頃にベルリンに留学していた両親の影響です。家のCDラックにアバドのコーナーがあり、アバドのCDが本当にたくさんあります。特に彼のマーラーが好きでよく聴いています。アバドのライヴの録画や録音を見たり聴いたりすると、彼がまるで魔法使いのように音楽を動かしているのがわかります。オーケストラの鳴り方が、力の入ったものではなく、まるで息を吐くように、自然に鳴っている感じで、それがものすごく好きです。ベルリン・フィルが好きなのですが、彼が振るルツェルン祝祭管弦楽団のCDやDVDも大好きです。

ですから、なるべく早いうちにドイツに留学したいと思っています。とにかくベルリン・フィルに入りたいので、そのためにまず、カラヤン・アカデミー(注:ベルリン・フィルの若手養成機関)に入りたいと思っています。

ーーオーケストラの曲では何が好きですか?

マーラーが大好きで、交響曲第2番、第9番、第10番が特に好きです。マーラーの交響曲を全曲弾かないと死ねません(笑)。
戸澤采紀
戸澤采紀

取材・文=山田治生 撮影=荒川 潤

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