51歳の沢村一樹が月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』で主演に起用されたワケ

wezzy

2018/8/6 19:15


 現在放送中の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系、月曜21時~)の第4話(7月30日放送)の平均視聴率が11.7%を記録し、自己最高記録を更新した(関東地区、ビデオリサーチ調べ、以下同)。その昔、数多くのトレンディドラマを輩出し、1990年代、2000年代と栄華を極めた「月9」。しかし、フジテレビが誇る「月9」の金看板も最近はかげりを見せ、平均視聴率が1桁で終わるのが常態化しつつあった昨今で、この視聴率はなかなか上々のようである。

とはいえ、「月9」の主演が沢村一樹である。正直、第一報を聞いたときは「うそでしょ?」と口走った人も少なからずいたはずだ。だって「月9」である。フジテレビの金看板である。キムタクが山口智子と主演した『ロングバケーション』(1996年)では平均視聴率29.6%を獲得、松たか子と主演した『ラブジェネレーション』(1997年)や『HERO』(2001年)では平均視聴率30%超えを果たした。ほかにも、『素顔のままで』(1992年、主演/安田成美・中森明菜)、『ひとつ屋根の下』(1993年、主演/江口洋介)、『あすなろ白書』(1993年、主演/石田ひかり・筒井道隆、共演/木村拓哉、西島秀俊など)、『やまとなでしこ』(2000年、主演/松嶋菜々子)など高視聴率な名作を連発してきた枠。つまり、「数字(視聴率)が見込める役者」ではないと「月9」主演は張れないと長らくいわれてきたのだ。

それが昨今の「テレビ離れ」が加速し、「月9」ブランドの崩壊が進むにつれ、近作の迷走感はなかなかのもの。ここ何作かをさかのぼっただけでも、『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(2017年、主演/篠原涼子、平均視聴率6.7%)、『海月姫』(2018年、主演/芳根京子、平均視聴率6.1%)、『コンフィデンスマンJP』(2018年、主演/長澤まさみ、平均視聴率8.9%)などが続く。昔は高視聴率が約束されていた「王道のラブストーリー」を排し、変化球を投げ続けてはいるが、視聴率的に見るとなかなか苦戦中のようである。

そこで、沢村一樹である。現在51歳。「月9」主演俳優の中でダントツの最高齢である彼は、端正なルックスと安定した演技力で数々のドラマや映画に出演。過去に連ドラ主演がなかったわけではないが、どちらかというとヒロインの相手役や父親役などが多かった印象が強い。連ドラ主演作としては『DOCTORS~最強の名医~』(テレビ朝日系、2011年~)があり、2018年までにシリーズ3本、スペシャルドラマ3本が制作されるほどの人気シリーズだが、本来の「月9」のイメージとは真逆に位置する硬派な医療ドラマ。近年では『レンタル救世主』(日本テレビ系、2016年)や『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』(テレビ東京系、2017年)にも主演したが、どちらも低視聴率に苦しんだ。つまり、沢村一樹を「月9」主演に抜擢するべき客観的データが、見当たらないのである。

ここで、ある妄想を披露してみたい。一寸先は闇のテレビ業界。沢村一樹が主演に確定するまで、キャスティング会議や実際のオファー案件として、ほかにもいろんな候補があったと推測できる。そもそもこの『絶対零度』シリーズは過去2作で主演を務めていた上戸彩の刑事としての成長を描いてきた作品。この第3弾も上戸彩主演で継続させることは決して難しくなかったはずだ(なお、今作では「謎の失踪を遂げ、海外で殺された」という設定)。しかし「今は子育てに専念するため主演を引き受けるのは難しい」と本人が断ったとの噂も飛び交ったため、このキャスティングは相当難航したのだろうとついつい邪推してしまう。
キムタクでも、ましゃでも、西島でも、菅野美穂のダンナでもダメなんだ!
では、この『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主人公、井沢範人は、そもそも誰になるはずだったのか? あくまでも私の妄想であるが、51歳にして「月9」主演俳優の仲間入りを果たした沢村一樹に対する違和感を払拭すべく、ここに分析結果を披露する。

【木村拓哉】 
現在45歳。有吉弘行に「月9バカ」とあだ名をつけられるほどの「月9」看板俳優。主人公の年齢設定やキャラクター的にもかなりハマるうえ、いまだに視聴率が取れる役者でもある。が、人気シリーズに途中参戦するにはあまりにも看板がでかすぎる、か。近作『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系、2018年)との作品的なカブリもあって却下。

福山雅治】 
現在49歳。『ガリレオ』(フジテレビ系、2007年~)シリーズで人気を博し、同じく「月9」を代表する俳優。主人公のひょうひょうとしたキャラは福山もやりがちだが、演技力では沢村に軍配が上がる。そもそも頻繁に役者業をする人でもないうえに、「福山のコメディ演技はなんか寒い」という声も多いため、却下。

【西島秀俊】 
現在47歳。ストイックな役作りに定評があり、アクションシーンも見事にこなす人気俳優。かなり適任のような気もするが、『ストロベリーナイト』(フジテレビ系、2010年~)、『MOZU』(TBS系、2014年~)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系、2017年)などアクション系刑事ドラマに多数出演しているため、お腹いっぱい感があり、却下。

【堺雅人】 
現在44歳。『半沢直樹』(TBS系、2013年)で大ブレイク。『真田丸』(NHK、2016年)以降、連ドラ主演作をもうずいぶん見ていない。人気シリーズに途中参戦するぐらいなら、『半沢直樹』するよね。却下。

つまり、沢村一樹以外に適任がいないのである。人気シリーズの主演を引き継ぎ、ややこしいキャラ設定の主人公をひょうひょうと演じ切り、連ドラの頭を張れる人材が。

もはや「月9」に王道のラブストーリーはいらない
 しかし、『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』を実際に観てみると、沢村一樹のハマり具合にはうなり声を上げてしまうほど。もともとシモネタが大好きで、バラエティ対応もうまい沢村。哀しき過去とコメディタッチなセリフ回しの切り替えも見事だし、アクションシーンも想像以上に美しい。謎の失踪を遂げた上戸彩がピンポイントで存在感を出してくるのだが、その共存関係もうまくいっている。

また、犯罪を未然に防ぐ「ミハンシステム」をもとに捜査を進めるという設定自体が、海外ドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』と丸カブリなのだが、沢村の51歳とは思えないスタイルや端正な顔立ちが海外ドラマ的世界観に見事にマッチし、その近未来すぎる設定がナチュラルに見えてほどなじんでいる。もはや「月9」に王道のラブストーリーなどいらない。そう思ってしまうほど、沢村の芝居に目を奪われてしまうのだ。

長らく迷走し続けてきた「月9」ドラマ。現在オンエア中の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』が作品的にも視聴率的にも成功したら――。これぞ、真の「脱・月9ドラマ」と言えるのかもしれない。

【文/藤原三星(ロボティア編集部)】

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