幅広いリスナーに愛される サザンオールスターズのヒットを探る「臼井孝のヒット曲探検隊 ~アーティスト別 ベストヒット20」

OKMusic

2018/8/6 18:00

CD、音楽配信、カラオケの3部門からヒットを読み解く『臼井孝のヒット曲探検隊』。この連載の概要については、第1回目の冒頭部分をご参照いただきたい。ただし、第5回の安室奈美恵からは2017年末までのデータを反映している。

■コミックバンド扱いから 不動の国民的アーティストへ

サザンオールスターズについては、熱心なファンサイトやWikipediaなどで丹念にまとめられたものがあるので、ここでは簡潔にまとめてみたい。彼らは青山学院大学の学生で結成されたバンドで、1978年6月25日にシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。ちなみに、この6月25日は後にTAISHITA記念日と設定され、ほぼ毎年のように何らかのサザン関連アイテムのリリースやLIVEの実施、あるいは活動に関する重大な発表が行なわれている。

当初はその早口でまくし立てるような歌詞やランニングシャツに短パンという衣装でコミックバンド扱いされがちだったが、翌年の3rdシングル「いとしのエリー」のロングヒット以降、アルバム・アーティストとして定着し、以降、国民的アーティストへの道を歩むことになる。

アルバムは着実に売り上げを重ねていたものの、シングルとしては「チャコの海岸物語」が久しぶりのヒットとなった1982年に、メンバーの桑田佳祐と原由子が結婚、そして1985年に原が産休に入ったのをきっかけに、翌年以降、各メンバーのソロ活動も盛んになる。

デビューまる10年となる1988年6月25日に、シングル「みんなのうた」にて再始動し、以降1989年の通算26作目となるシングル「さよならベイビー」で意外にも初のオリコン1位を獲得(ちなみに、レコード以外の要素を加味した『ザ・ベストテン』では「いとしのエリー」「チャコの海岸物語」「Bye Bye My Love (U are the one)」「Melody」が1位を獲得。世間のイメージはこちらに近いかもしれない)。

■ドラマ中心にヒットを量産した90年代、「TSUNAMI」で再ブレークした 00年代を経て08年に活動休止

90年代に入ると「涙のキッス」「エロティカ・セブン」「あなただけを ~Summer Heartbreak~」「愛の言霊 ~Spiritual Message」とドラマ主題歌への起用でミリオンヒットを量産するなど、CDバブル時代の波にも上手く乗っていた。しかし、1997年頃からやや難解な作品が増え、TOP10ヒットはキープするも、徐々にヒットに翳りが見えてきた。

それを払拭したのが、やはり2000年の「TSUNAMI」だろう。しばらくの間、あえて避けてきたようなサザンの王道中の王道バラードだが、蓋を開けてみればオリコン調べのみで累計294万枚以上というヒットで、これは日本史上でも3番目という売上げに。以降は、再び年間TOP10クラスのヒットを出すようになった。ただ、2001年以降は、桑田のソロ活動が活発になり、また桑田作品とサザン作品の区分も難しくなってきたこともあって、2008年に無期限での活動休止を宣言。以降は、また各メンバーがソロ活動に入っていた(但し、2011年の東日本大震災に向けたチーム・アミューズとしてのチャリティー・シングル「Let’s try again」にメンバー全員で参加)。

■2013年の活動再開後も 順調にヒットを重ね、 メンバー全員60代に突入

その後、デビュー35周年となる2013年6月25日に活動再開を発表し、2015年には約10年ぶりとなるオリジナルアルバム『葡萄』を発表、50万枚以上を売り上げ、オリコン年間CDアルバムの7位にランクインし、その健在ぶりが見て取れた。ちなみに、サザンオールスターズとしては何度かの活動休止期間もあるのだが、その期間中も桑田佳祐はソロあるいはKUWATA BANDなど別名義の活動もあり、桑田佳祐自身はデビューから還暦を過ぎた現在に至るまで、ほぼ毎年のように何らかの新作をリリースしている。これもサザンや桑田に若いファンが生まれ続ける大きな要因と言えるだろう。

そして、この2018年にはサザン名義では約3年ぶりとなる新作を発表。まず、6月にはサザンとしては初となる配信シングル「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」をリリース。本作は長瀬智也主演の映画『空飛ぶタイヤ』の主題歌に起用され、その社会派の内容に合わせてか、哀愁漂うメロディーのエールソング。今回は集計対象外だが、既に10万ダウンロードを突破している。

■「壮年JUMP」の“アイドル”とは、 SMAP、アムロちゃん? それともヒデキ?

続く7月にも配信シングル「壮年JUMP」をリリース。こちらは三ツ矢サイダーの2018年CMソングに合わせた爽やかなポップチューンで、それでいて自分が大好きだったアイドルへの感謝を込めて「夢ありがとう グッバイ」と歌う部分が、ちょっと切なくも聴こえる。

そのためか、SNS上では“この歌はSMAPの歌では?”、“アムロちゃん(安室奈美恵)への感謝ソングでは?”、はたまた過去のサザンのLIVEでサプライズ登場したという縁もあって“ヒデキ(西城秀樹)を想い出して泣けてくる!”といった年輩の方の意見も飛び出している。

こうした幅広いリスナーに愛される国民的アーティストの根幹となっているのは、やはりサザンの大半の楽曲を手がける桑田佳祐の類まれなソングライティング力だろう。それは社会風刺の効いたものから放送コードギリギリどころか自粛してしまうほどのエロい歌詞まで、また曲調もロック、ジャズ、歌謡曲、沖縄民謡など自由奔放でありつつ、それを一流のヒットソングに仕立てるという唯一無二の存在だ。8月にはデビュー40周年を記念し、約20年間をまとめたプレミアム・アルバム(どうやらベスト盤とは呼ばないそう(笑))『海のOh,Yeah!!』が発売、出荷では累計400万枚をも超えている98年発売の『海のYeah!!』にどこまで迫るかにも期待がかかる。

そんなサザンの総合ヒットはどんな曲が並ぶだろうか。リスナーの中には、サザン作品と桑田ソロ作品を特に意識せず聴いている人もいるだろうが(その証拠に「好きな“サザン”の楽曲は?」のようなTV番組のアンケートで、必ずと言って良いほど「波乗りジョニー」や「明日晴れるかな」など桑田ソロ名義の楽曲が入ってくる)、サザンだけでも大量のヒット曲があるので、ここではグループとしての魅力にスポットを当てて考察してみたい。

■総合1位はダントツで「TSUNAMI」

総合での1位は、やはり2000年の44thシングル「TSUNAMI」となった。あまりに当たり前でつまらない結果と思われるかもしれないが、CD(シングル)1位、配信2位、カラオケ1位と軒並み上位なので、文句の付け様がない。特にシングルは累計294万枚で、これは日本のシングル史上でも4番目となる特大ヒットだ。

当時はTBS系バラエティ番組『ウンナンのホントコ!』内で、日記の通り動いてみれば恋愛感情が生まれるか皆で見るという企画「未来日記」コーナーの主題歌として話題となったとはいえ、当初はこれほどの大ヒットを予想できた人は殆どいなかったであろう。

「TSUNAMI」と同時発売が、前作「LOVEマシーン」がミリオンヒットだったモーニング娘。の「恋のダンスサイト」、前作「本能」が自身最大ヒットだった椎名林檎の「ギブス」と「罪と罰」、さらに、週間1位を連発していた鈴木あみの「Don't need to say good bye」の4作が同時発売、さらに倉木麻衣のデビュー作「Love,Day After Tomorrow」が上昇中で、サザンの前作「イエローマン~星の王子様~」が累計10万枚に満たなかったので、筆者自身も1位はおろかTOP5入りも難しいと思っていた。しかし、実際は初回盤がすぐに品切れで、プレミア化、その後も3カ月にわたってTOP5入りするほどのメガヒットとなり、年末には文句なしの日本レコード大賞受賞となり、翌年の第73回選抜高校野球の入場行進曲にも選ばれた。

ちなみに、30周年LIVEに向けて募集された“LIVEで演奏して欲しい曲”のリクエストでは「TSUNAMI」は4位だったが、LIVEには行かないけれど、ダウンロードで1曲だけ好きだったり、TVやラジオで聴いて気に入ってカラオケで歌ったりという、よりライトなファンでは圧倒的に「TSUNAMI」が支持されるということだろう。

■ノン・シングルの「希望の轍」が 「真夏の果実」とともに総合TOP10入り

総合2位は1992年の31stシングル「涙のキッス」。ドラマ『ずっとあなたが好きだった』主題歌で、マザコンの夫・冬彦を演じた佐野史郎の怪演と、主人公・美和を演じた賀来千香子の怯えた時の瞳孔の開き切った大きな瞳も印象的で、番組の視聴率アップに伴い、CDセールスもロングヒットの末、自身初のミリオンヒット(累計約154万枚)、親しみやすいメロディーと共感を呼ぶ切ない歌詞で配信やカラオケでもヒットし、TOP10入りしている。ちなみに、3部門ともTOP10入りしているのは「TSUNAMI」とこの「涙のキッス」のみ。各部門のランキングがハイレベルで大きく変わるのも、名曲だらけのサザンゆえの現象だろう。

総合3位は1990年の28thシングルで、桑田佳祐が監督を務めた映画『稲村ジェーン』の主題歌となった情緒あふれるラブ・バラードの「真夏の果実」。CDバブル期以前の作品ということもあって、CD部門は14位(それでも累計約55万枚というハイレベル!)ながら、配信が3位、カラオケが2位という安定した強さで、総合ではTOP3入りとなった。ちなみに、前述の30周年LIVEでのファンリクエストでは1位となっている。

また、同映画の挿入歌となった「希望の轍」もノン・シングル曲ながら総合9位、30周年ファンリクエストでも2位に入るほどの人気曲だ。こちらは、「真夏の果実」とは対照的に、ノリの良いアッパーチューンで、LIVEでも終盤の盛り上がりをさらに高揚させるほどの定番曲で、桑田ソロLIVEでも披露されるほど重要な楽曲となっている。

■不倫がテーマでも爽やかご当地ソング 「LOVE AFFAIR」が総合5位に

総合4位には1993年の32ndシングル「エロティカ・セブン」、同5位には1998年の41stシングル「LOVE AFFAIR~秘密のデート」がランクインし、ドラマ主題歌が並んだ(前者は『悪魔のKISS』、後者は『Sweet Season』の主題歌)。CDセールスでは「エロティカ~」は170万枚超に対し、「LOVE AFFAIR~」は60万枚弱と100万枚以上の開きがあるものの、配信やカラオケでは「LOVE AFFAIR~」のほうがより多くの支持があり、総合ではほぼ僅差で並ぶ結果となった。

「LOVE AFFAIR~」はドラマに合わせて、不倫をテーマにしたやるせない男の心情をつづったミディアム・ナンバーで、ともすればその身勝手さを糾弾されそうな内容だが、これだけ支持されているのは、横浜の観光地を盛り込んだ現代版の“ご当地ソング”として楽しめることや、サザンらしい爽快さがドロドロになりがちな内容を中和していることも大きいのではないだろうか。

■「いとしのエリー」は 必殺パターンの連続

総合6位には1979年の3rdシングル「いとしのエリー」が登場。レコード(CDではなく)では累計70万枚を超え自身10番目のヒットとなったものの、オリコンの週間ランキングでは最高2位に到達するまで2カ月かかっており、このことからもコミックバンドと誤解されて、なかなか名曲が届かなかったことが読み取れる。当時、レコードではジュディ・オングの「魅せられて」や岸田智史の「きみの朝」などに阻まれて2位止まりだったが、『ザ・ベストテン』では有線やラジオ、はがきリクエストなど総合的に強いという、サザンの強みが現れた結果、7週連続の1位となっている。

また、1979年発売ながら、1983年から1997年の間に4度にわたって放送されたドラマ『ふぞろいの林檎たち』の主題歌となったこと、さらに結婚式ソングとして定番化していることも人気の要因だろう。この曲もイントロのコーラスが聴こえた瞬間に、特に年輩の女性ファンが号泣し始める必殺バラードだ。カラオケで3位なのは、その曲調もさることながら、「エリー」の部分を好きな人の名前に変えて歌えてしまうという別の必殺パターンがあることも大きい。

■シングルカップリングの「蛍」は 2010年代で最大の人気曲に

総合9位の「希望の轍」と同ポイントで、総合10位に「蛍」がランクイン。2010年代の楽曲では一番人気となっている。本作は2013年の54thシングル「ピースとハイライト」のカップリング曲となっている映画『永遠の0(ゼロ)』主題歌のレクイエム的な楽曲で、2015年のアルバム『葡萄』をしめやかに終えるための重要なバラード。配信やカラオケでの人気に加え、CDシングル「ピースとハイライト」がオリコンTOP200内に57週、TOP100内に30週もランクインしたのは、このカップリング曲の支持からだろう。

TOP20全体を見渡すと、『海のYeah!!』収録曲が11曲、『海のOh,Yeah!!』収録曲が8曲と、直近の20年間を見ても、ヒットがしっかり出ているのも特筆すべき点だ。ベテランにもなると、どうしても初期の数年にヒットが集中し、あとは新たなヒット曲を出さずにLIVEに重点を置くアーティストがほとんどなのだから。

■サザンの真の名曲は 「イエローマン」!?

毎回、最後に各アーティストの隠れた名曲を紹介しているが、サザンの場合はやはり1999年発売の「イエローマン~星の王子様~」を挙げたい。本作は、シングル、配信、カラオケのTOP20はおろか、TOP40にすらまったく入っていないのだが、LIVEで歌われる頻度が非常に高く、『海のOh,Yeah!!』にもセレクトされていることから、桑田本人もお気に入りのはずだ。

確かに明解なラブソングでもなく、カラオケで歌いやすいバラードでもないのだが、LIVEで聴くと、沸々と血が騒いでくるような不思議なナンバーなのだ。ちなみに、2005年に「勝手にシンドバッド」から2000年の「TSUNAMI」までの44作のCDシングルが12cm仕様で再発売された際、「イエローマン」は6番目に高い売り上げとなった。これはアルバム未収録ということもあるが、やはりLIVEやラジオ等で聴くたびに中毒になって買ってしまったという人も多いのだろう。ちなみに再発で最も高ランクだったのは1983年の「ボディ・スペシャルII」。これもLIVEで欠かせないナンバーだ。

■近いうちに生「TSUNAMI」が 聴けますように

2019年には全国ドーム&アリーナツアーも開催されるとのこと。サザンのファン層は、LIVEのお客さんを見渡すと、明らかに2世代や3世代で楽しんでいる様子があるし、また桑田のレギュラーラジオ番組『やさしい夜遊び』では、その音楽への探求心と下ネタ(笑)に誘われてか、若いファンが非常に多い。こうした幅広いファンが親しめるアーティストやヒット曲が増えれば、世の中はもっと理解しあえるんじゃないかな、なんてサザンの楽曲を聴くたびに強く感じている。

そして、2011年以降、TVやLIVEで歌われていない「TSUNAMI」が、いつか純粋なラブソングとして聴けるような世の中になればと心静かに願っている。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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