現代篇なしでも違和感ないが、予告に大物女優!! すずが闇墜ちする『この世界の片隅に』第4話

日刊サイゾー

2018/8/6 20:00


 8月6日は世界で初めて核兵器が実戦使用された日です。米軍の爆撃機B-29エノラ・ゲイが標的にしたのは、雲ひとつなくよく晴れた広島市でした。エノラ・ゲイが広島市の相生橋に向かって投下した原子爆弾によって、広島市は一瞬にして焦土と化し、十数万人もの命が奪われました。こうの史代原作コミックの実写ドラマ『この世界の片隅に』(TBS系)は、戦火に見舞われる前の広島市で生まれ育った平凡な女の子・すずが呉市へと嫁ぎ、戦時下の日常を過ごす物語です。迫りくる悲劇を前に、すずたちはどのような生活を送っていたのでしょうか。第4話を振り返りたいと思います。

(前回までのレビューはこちらから)

昭和19年(1944)8月。広島に原爆が投下される1年前です。すず(松下穂香)は呉湾が見渡せる段々畑で、美しい海岸の風景をスケッチしていました。以前、遊郭街に迷い込んだときに、親切に長ノ木への道順を教えてくれた遊女・リン(二階堂ふみ)へのお礼に、リンがまだ見たことのない長ノ木からの眺望をプレゼントしようと考えていたのです。ところが、スケッチしているところを憲兵(川瀬陽太)に見つかり、敵国のスパイではないかと疑われてしまいます。北朝鮮では観光客が気軽に風景写真を撮っていると、すぐに没収されてしまいます。当時の日本も似たような状況でした。

憲兵から叱責され、すずはしょんぼり。でも、これには義母のサン(伊藤蘭)と義姉の径子(尾野真千子)は大爆笑。天然キャラのすずがスパイに間違われたことが、おかしくてたまりません。まだ幼い径子の娘・晴美(稲垣来泉)まで一緒に笑っています。すずが嫁入りしたことで、戦時下でも笑いが絶えない北條家でした。そんな明るい北條家に、第4話ではさざ波が立つことになるのです。

■リンドウの花言葉は「悲しんでいるあなたを愛す」


 第4話のメーンとなるのは、すずと遊女・リンとの交流エピソードです。劇場アニメ版では上映時間の都合で、片渕須直監督が泣く泣く割愛した原作コミックで描かれているすずとリンとの関係性を、実写ドラマ版は丁寧に掘り下げていきます。最近痩せたすずが産婦人科で妊娠していないかどうかを診てもらった帰り道、すずはリンと再会します。先日は、すずの姓が北條だと知り、態度を豹変させたリンでしたが、この日は機嫌を取り戻していました。同世代の女性ながら、遊女と主婦と異なる生き方をする2人は、子どもを産む意味や自分たちの居場所について語り合います。リンの“居場所がなくても生きていく”というタフさに、すずは素直に感銘を受けるのでした。

呉に秋が訪れ、昭和19年の終わりが近づいてきます。すずが納屋を片付けていると、リンドウの絵柄のかわいらしい茶碗が出てきました。夫の周作(松坂桃李)に尋ねると、「わしの嫁さんになる人が使えばええと思うて買うた」とのことです。しばらくして、すずは北條家の近くにリンドウの花が美しく咲いているのを見つけます。ちなみにリンドウの花言葉は「悲しんでいるあなたを愛す」です。そういえば、再会したときのリンはリンドウ柄の着物をまとっていました。すずの脳裏に3つのリンドウが並びました。いつもはぼーっとしているすずですが、さすがにこれにはハッとします。

周作がすずに縁談を申し込む前、結婚を考えていた相手がいたそうです。北條家の人は誰も教えてくれませんでしたが、周作の元カノはあのリンさんだったのです。慌ててすずは部屋に戻り、周作の机の中をガサ入れします。机の中から出てきた周作のノートの裏表紙は四角く破かれていました。それは字の書けないリンが「親切なお客さんに書いてもらった宝物」という名前、勤め先の住所、血液型が記された紙片と一致する大きさでした。

それまでは天然キャラで通してきたすずですが、優しい夫・周作の知られざる過去を知って、闇墜ちしていきます。「どうせ、私は代用品」と、周作が夜のおつとめを求めてきても、すずは拒むのでした。場面変わって、国防婦人会の集まり。竹ヤリを手にしたすずは、奇声を発しながら巻藁に向かって突撃します。すずのやり場のない怒りが炸裂します。第3話では周作にアイスクリームをごちそうになり、目をハートマークにしていたすずですが、一転してダークサイドへと転がり落ちていくのでした。現在、YouTubeで配信中のオリジナルドラマ『アストラル・アブノーマル鈴木さん』にも松下穂香は主演しており、心に闇を抱えた地方在住のユーチューバーを楽しげに演じています。劇場アニメ版の声優を務めたのんよりも、堀北真希的な女優に成長していきそうですね。

■原作にはない感涙の子別れシーンと気になる設定の改変


 第4話では、尾野真千子演じる径子の母親としての一面もクローズアップされました。径子が亡くなった夫の実家に残してきた長男の久夫(大山漣斗)が、ひとりで北條家を訪ねてきました。久々の再会を喜ぶ径子は、サンからそっと手渡された牛肉の缶詰を開け、精一杯のごちそうで久夫をもてなします。まだ子どもなのに、久夫はすごくしっかりしています。戦時下では、子どもも呑気ではいられません。久夫は父方の家を継ぐために、母・径子にその決心を告げに広島市から一人で来たのでした。息子の成長ぶりがうれしい反面、とても哀しく径子には感じられます。その晩は遅くまで、晴美も加えて母子3人でトランプ遊びに興じるのでした。

径子の長男・久夫が北條家を訪ねてくるエピソードは、原作にはない岡田惠和脚本のオリジナルシーンです。久夫は原作でも劇場版でも、名前は出てくるものの、実際には登場しません。また、径子と別れて山口で暮らしていることになっていました。実写ドラマ版では山口ではなく、広島市で暮らしているというのが気がかりです。径子たち母子3人が楽しげに夜更かししている場面を見てしまっただけに、その後のこの母子を襲う惨劇を思うと、胸が掻きむしられる思いです。原作&劇場アニメ版と違って、実写版では誰が生き残り、誰が戦死するのかがはっきりと分かってしまいそうです。

そして第4話のエンディング、ようやく水原哲(村上虹郎)の登場です。周作の過去を知ってしまったすずの前に、タイミングよく幼なじみの水原が現われ、人妻・すずの心は思わずよろめいてしまいそうになります。すずも水原も周作も、そしてリンも、自分たちにこの後どんな人生が待っているのか知ることもなく、愛する人への想いを胸に秘めながら戦時下の日常を生きていくのでした。

■『このせか』とリンクする、もうひとつの世界


 今回、昭和19年の世界に非常にスムーズに入っていけたのですが、予告編でその原因が分かりました。第4話は榮倉奈々が登場する現代篇が冒頭にもエンディングにもなかったのです。榮倉奈々と古舘佑太郎のちょいウザなやりとりがない分、すずたちが生きている世界にストレートに感情移入することができました。現代パートがないことにまるで違和感がなかったのって、製作サイド的にはどうなんでしょうね?

さて次回予告では、介護の仕事から逃げ出した佳代(榮倉奈々)の「世界でいちばん好きな人」が現われました。ちらっとしか映りませんでしたが、大ベテラン女優の香川京子さんです。小津安二郎監督や黒澤明監督の名作映画に出演した名女優です。現代篇とすずたちが生きた時代を結ぶキーパーソン的な役割を果たす節子役だそうです。節子の口から、すずや周作のその後が語られるのでしょうか。俄然、現代篇が気になってきました。

第4話の視聴率は9.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)でした。前週の9.0%からちょっぴり微増です。すずの闇落ちに続いて、視聴率まで爆落ちせずに済みました。第1話~2話を様子見していた劇場アニメ版のファンは去ったかもしれませんが、ここからジワジワと新しい視聴者を増やしていきたいところです。

こうの史代ファンには、もうひとつニュースがあります。今晩、8月6日(月)の夜7時30分からはNHK総合で、こうの史代のもうひとつの代表作を原作にした常盤貴子&川栄李奈主演ドラマ『夕凪の街 桜の国2018』がオンエアされます。原爆が投下された広島で暮らしていた人たちが、その後どんな人生を過ごしたかを描いたものになります。『この世界の片隅に』とかなりリンクする物語です。

8月15日の終戦記念日を直前に控えた次週の第5話では、すずにどんな運命が待っているのでしょうか。しっかりと見届けたいと思います。

(文=長野辰次)

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