ビギナーは60~70年代のモデルを。アンティーク・ウォッチの選びかた

editeur

2018/8/6 05:58

現行モデルにはない“アンティーク”ならではの魅力とは?


腕時計の大量生産や、それにともなう「チープ化」が進んだ1970年代中旬の“クォーツ・ショック”から生まれたアンティーク・ウォッチの再評価。年々価格も上昇しており、なかには現行モデルよりも高価で売買されることもあるという。そうなると、特にビギナーであれば、無難に現行モデルを選んだほうが良いのでは? と思ってしまう人もいるだろう。はたして「アンティーク・ウォッチを選ぶべき」理由は、どこにあるのか。日本のアンティーク・ウォッチ専門店の草分け「SWEETROAD(スイートロード)」店長、平野拓生さんは、いちばんの魅力として現行モデルにはないデザイン性を指摘する。

「アンティーク全般にいえることですが、現代の製品にはないデザインがいちばんの魅力でしょう。アンティーク・ウォッチの場合は、時計に使われている素材もデザインに大きくかかわっていますね。たとえば、現在は使用が禁止されているトリチウムを蓄光剤(夜光)として文字盤に使っていたりとか。経年変化したトリチウムは、独自の色味と風合いがあって、現行品では再現が難しいんですよ。単にデザインだけなら復刻版をつくることも可能でしょうが、素材が持つ特性まで含めれば、やはりアンティーク・ウォッチには、ここにしかない魅力があるんです」(平野さん、以下同)

また、最近では市場価格がどんどん上昇する傾向にあるとはいえ、それでも現行モデルに比べ、同じブランドの腕時計を比較的安価に入手できる場合が多い点も、アンティーク・ウォッチの隠れた魅力だ。

「モデルやコンディションによって価格が大きく変わるので一概には言えませんが『ロレックスがほしい』、『オメガがほしい』というように、ブランド重視で腕時計を選ぶ場合、アンティーク・ウォッチのほうが現行モデルよりも大幅に安価ということはよくあります」

たとえば、5~10万円程度の価格帯で販売されることが多い1970年代のオメガ『シーマスター』などは、いかにも“オメガ”というわかりやすさもあり、一般的にも人気が高いモデルだという。

デザイン性や価格など、さまざまな角度から語れるアンティーク・ウォッチの魅力だが、この世界に足を踏み入れる以上、やはり気になるのがコレクターたちの動向。平野さんによれば、アンティーク・ウォッチのコレクションにも、一定のトレンドや棲みわけがあるという。

「もっともコレクターが多いのは、やはり名の通ったブランドのモデルですね。なかもで、ロレックスやオメガのスポーツモデルは、いつの時代も高い人気を集めています。一方で、敢えて有名ではないメーカーのモデルにこだわる方も少なくありません。人気ブランドのモデルに比べ、価格の上昇が期待できず、売却時の価格が購入時より下がる場合も多いのですが、それでもユニークなデザイン性や、知る人ぞ知るという希少性の高さに魅力があるのです」

資産的な価値よりも、自分が納得できるデザインや希少性を重視するというのは、まさにアンティーク・ウォッチ蒐集の王道なのかもしれない。ちなみに、国内ブランドのアンティーク・ウォッチを蒐集する人は、グランドセイコーなら“亀戸工場派”、“諏訪工場派”というように、製造工場にまでこだわりを見せるというから面白い。

ポイントはメンテナンス性。パーツ調達が難しいモデルは避けるべき


このように、大人のホビーとしてもかなり魅力的なアンティーク・ウォッチ。しかし、アンティーク品である以上、現行モデルのように気軽に選ぶことが難しい側面もある。初心者がアンティーク・ウォッチを選ぶ場合には、何をおいてもメンテナンスのしやすいモデルを選ぶことが重要と平野さん。現行品と違いパーツも“アンティーク”となっているため、故障やオーバーホールの対応が難しいモデルが多いのだという。

「初心者が最初に手に入れる1本、という観点でアンティーク・ウォッチを選ぶなら、60年代~70年代のモデルをオススメしています。この期間は機械式時計の全盛期にあたり、個体数も多いことから価格もこなれているほか、メンテナンスに必要なパーツの調達も容易なんです。一方で、それ以前の時代のモデルは、あまり初心者向けとはいえません。当時の腕時計は、お金持ちの嗜好品という面が強く、流通数も少なかったため、パーツの調達が難しいことが主な理由です」

たとえば40年代のアンティーク・ウォッチを購入した場合、ちょっとした故障でもメンテナンスに10万円以上の出費が珍しくないそう。また、希少性の高さから、そもそもメンテナンスが不可能に近いモデルもあるというから注意したいところだ。気に入った品を長く愛用することはもちろん、一種の「歴史的遺産」に近い存在ともいえるアンティーク・ウォッチは、所有する人にも「歴史を継承する」という意味合いもある嗜好品。大人のホビーとして嗜む際には、次世代に遺すべき逸品を保護する、というくらいの気持ちをもって、責任のある扱いを心がけてほしい。

「SWEETROAD」平野さんがオススメする、人気のアンティーク・ウォッチ(2)


チュードル「プリンスオイスターデイト/Ref.7966」
12時位置にあるバラのマークが特徴的で、通称「デカバラ」「バラチュー」と呼ばれるモデル。1964年製。雰囲気良く焼けたオリジナルシルバーダイヤルは、いかにもアンティークらしい仕上がり。ケースは後年仕上げ済みで、傷の少ない綺麗な状態。ブレスには、ロレックス純正3連巻きブレスが装着されている。22万8000円(税込)


「ビギナーにオススメできる60~70年代のアンティーク・ウォッチの中でも、アンティークの良さが光る逸品。チュードルでありながら、価格もお手頃なのでブランドにこだわる人にも良いのではないでしょうか」

※価格は取材当時のもの。同じモデルでもコンディションにより価格が異なる場合があります。
※在庫の有無については、店舗に直接ご確認ください。

あなたにおすすめ