TVの放送作家ってどんな仕事してるの?どうやったらなれるの?

テレビ番組を企画して構成する職業・放送作家――。お笑い芸人・森三中の大島美幸さんの夫であり、数々の人気番組を担当する鈴木おさむさんや、ダウンタウンの幼馴染であり、彼らの番組を手がける高須光聖さんなど、放送作家の中には世間にも知られる存在がいる。ところが、放送作家がどんな仕事をして、どれほどの報酬を得ているのか、職業としての一面についてはなかなか知られていない。

そこで現役の放送作家たちにアンケートをとってみた。どんな仕事をして、どうやったらなれるのか? そこから見て取れたのは、人気番組の裏側でじつにさまざまな作業をして、必死にテレビを盛り上げる姿だった。

そもそも放送作家ってどうやったらなれるの?

――「学生の頃にお笑い芸人さんのラジオでハガキ職人をやっていました。そしたらパーソナリティーの芸人さんに声をかけていただき、番組の作家さんを紹介してもらいました」(30代・バラエティや情報番組を担当)

ラジオのハガキ職人(おもしろいネタを投稿して常連になるリスナー。もちろん今ではメールやTwitterでの投稿もある)から声を掛けられ、プロになったという放送作家は結構いる。大御所・秋元康さんもラジオ局に台本を送ったことから、きっかけをつかんでいる。

――「芸能プロダクションがひらく放送作家養成スクールに通っていました。先輩のツテで番組に必要なリサーチ資料をつくるのを手伝ったのが最初です」(20代・ドキュメントバラエティを担当)

ひとまず、放送作家の学校に通ったという人はたくさんいた。但し、卒業したからといってプロになれる保証はゼロ。そこからツテをつかって何かしらの仕事にありつく、というのが実情のようだ。
養成スクールによっては、卒業するとお笑いライブのスタッフになって、進行やネタづくりを始めるというところもある。そこから実力を認められて、初めてお金が発生する“仕事”にたどりつくという。なかなか厳しい世界だ。

――「同じ大学に放送作家をやっていた先輩がいたので、その人に弟子入りしました」(40代・情報番組を担当)

今でも「弟子入り」というスタイルはあるらしい。有名な放送作家や事務所には「弟子にしてください」「入れてください」という直談判があるそうだ。

――「元・芸人で売れずにやめてしまったのですが、同期のコンビが売れたので、彼らの番組にブレーンとして入れてもらったのがきっかけ」(30代・お笑いバラエティを担当)

放送作家の中には、元・芸人というキャリアを持つ人が一定数いる。表舞台では売れなかったが、裏方にまわったことでレギュラー10数本を持つ売れっ子になった人も。

具体的に放送作家ってどんな仕事してるの?

――「番組の企画書を書く。放送台本を書く。ナレーションも書く。新コーナー案も考えたり。ただ、“作家”ってついてるから書くことが仕事っぽく思われてますけど、会議でしゃべって提案することが大事なんです」(30代・バラエティや情報番組を担当)

話を聞いてみると、放送作家の仕事はじつに多種多様だと感じる。担当する番組によっては「ジェスチャーゲームのお題を考える」といったものや、「スポーツ選手が挑戦したらおもしろいオリジナル競技を提案する」といった細かいアイディアも求められる。
また、「ディレクターが撮ってきたVTRの感想を言うのも仕事です」(20代・ドキュメントバラエティを担当)というように、編集への意見も求められる。
さらに、何十人も出席する会議では、プロデューサーや演出家たちを納得させられる企画アイディアを提案するなど、その業務を一口に説明するのはなかなか難しい。
他にも、以下のようなこともするという。

「会議で笑わせて盛り上げるのも仕事といえば仕事」
「ネタ番組だと、まだ無名の芸人のオーディションに審査員として参加。合格者を決める」
「番組の収録に立ち会って、タレントの話し相手になる」
「ストレスのたまったディレクターの飲みにつきあって愚痴を聞いてあげる」…etc

大変そうだ(笑)。映像を撮る以外は何でもやるのが放送作家なのだ。

ピンキリなんだろうけど、実際はどれくらい稼いでるの!?

――「作家になって2年目くらいで食えるようになりました。リサーチを手伝っていた番組がレギュラーになったので定期的な収入が得られて」(20代・情報番組を担当)

放送作家のギャラは完全歩合制。プロとして食べていけるようになるまでに、半年という人もいれば、5年以上かかったという人もいて、これはもう実力差や運に左右される様子。

―― 「24歳で、大手企業の部長職である父親の月収を超えました。儲かるときは儲かるし、儲からないときは悲惨(笑)。浮き沈みは激しいです」(40代・バラエティを担当)

放送作家の中には“億”越えする人もいるらしく、一方で儲かってない人は年収50万円以下という人もいた。たくさん稼ぐには番組のかけ持ちをしなければならないので、柔軟な発想や思考が求められるのはもちろんだが、なによりタフな体力が必要らしい。

昨今、耳にする“若者のテレビ離れ”についても聞いてみた

果たして放送作家たちは“テレビ離れ”の現象についてはどう思ってるのだろうか?

――「若い視聴者が最初に見るのはTwitterなどのSNS情報でしょう。そこから『おもしろい番組なら観てみようかな』という感じかと思います。という意味では、話題になれば見逃し配信でもなんでも観てもらえるはず」(20代・バラエティを担当)

――「いずれはテレビも含めた多くのコンテンツが、タブレットやスマホでも観られる時代が来るでしょうから、その時は改めて“テレビの取材力”や“見やすさ”などが見直されるような気はします」(40代・情報番組を担当)

これらの声からは、おもしろければどんな形であれ観てもらえると信じて番組を作っている姿がうかがえた。そして、こんな現実も。

――「正直、テレビを作っているのに家にテレビがないADさんもいます。けどその分、テレビっ子とは別の感性に驚かされることもあります」(30代・バラエティや音楽番組を担当)

もはやテレビっ子がテレビを作る時代は終わりつつあるようだ。テレビ、ネット、ゲーム、コミック……あらゆるコンテンツを楽しむクリエーター志向の若者が、たまたま個人的な理由でテレビ制作を選んだのだ。そりゃ、テレビも変わるわけです。
もしかしたら、テレビを持ってない放送作家も現れるかも??

今回、現役の放送作家たちにアンケートをとってわかったことは、テレビの未来について悲観的な人はほぼいないということだ。みんな、厳しい現実を受け入れつつも、「こんなことができるかも」「可能性はむしろ広がっている」と前向きだった。そして、昨今テレビが叩かれることも多いせいか、謙虚な姿勢もうかがえた。

――「あらゆるコンテンツの中から、自分の手がける番組が選んでもらえるように作ってます。そのためならどんな苦労もしますよ」(20代・バラエティを担当)

苦境の中でも楽しませることを考え続ける放送作家。その仕事はテレビの未来を明るく描くことかもしれない。【文:鈴木 しげき】

執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰。

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