石原さとみ「高嶺の花」際立つ峯田和伸の「頭脳」と野島伸司の「古さ」2話

エキレビ!

2018/7/25 09:45

『高嶺の花』というタイトル、石原さとみと峯田和伸というキャスティング、そして野島伸司による脚本。これらの材料が揃った時点で「容姿端麗で育ちの良い石原を、冴えない中年男の峯田が真心とピュアな愛で落とす」的な内容だと、筆者はたかをくくっていた。言うなれば、『101回目のプロポーズ』的な。(関連)


これが、観たら全然違うのだ。

石原さとみ演じる令嬢・月島ももが育ちの良さをビタイチ感じさせないところからして、読みが外れていた。それ以上の予想外は、峯田演じる自転車店の店主・風間直人である。
彼を甘く見ないほうがいい。ただの朴訥とした男ではない。次第に登場人物の本性が露わになっていくのは、“野島あるある”の一つ。チラッとした発言や行動で、風間のキレ者っぷりが透けて見えてきたのだ。

殴られるのも計算通りの峯田和伸
先週放送第2話におけるハイライトの一つは、自転車店でのシーン。ももがスナック喫茶で元カレ・吉池拓真(三浦貴大)と決別、その直後にふらりと立ち寄ったくだりだ。

ももは上目線だ。店に入るなり、いきなり風間のことを「私の彼氏」と発表し「私たち、付き合うことになったの」と宣言。慌てて否定に入る風間。ガンガン来るももに、風間は距離を取った。
「元カレさん、引きずってるんですよね?」
女性と付き合ったことのない風間の態度を、周囲は叱責する。「それはそれでね、チャンスと言うか……」と、肉食化のススメを授ける。ももも、そんな態度で来られることを望んでる。

もも 自分で言うのもアレだけど、ぷーさん(風間)相手だったら余裕で「こんな奴になんでこんな可愛い子が!?」っていう案件でしょ?
風間 いや、だからこそですよ! なんか、裏があんのかなあって……
もも あるわよ! だから、忘れさせてって話よ!

エンジンがかかったもも。徹頭徹尾、上から行く。

風間 俺なんかには、完全に高嶺の花ですよ……。
もも たぁーかーねーのはーなーよ! だけど、いいじゃない。花の蜜吸っていいのは、綺麗なちょうちょだけじゃない。あんたのようなアブラムシやカナブンだって吸いに来ていいんだって!

エンジンがかかりすぎて、言ってることがヤバい女になっているもも。

風間 少し考えさせてもらっていいですか。
もも はぅっ! 頭おかしくなりそう……。もういい。別に、この人じゃなくたって誰だっていいんだから。無理に頼まない。はっ!? っつか、なんで私が頼む!? この私がお前ごときに!
風間 ほらー! やっぱり、誰でもいいんですよねえ?
もも ぬあーっ!(風間をビンタし、倒れる風間を見下して)ハッ!

力強い足取りで、キレながら店を出ていくもも。一方、鼻血を拭きながら風間が発した一言がイカしてる。
「よかった~。元気出たみたいで。こっち、鼻血出たけど」
今の状態で交際をしても、ももは幸せにならない。彼女はヤケになってるだけ。それを察するからこそ、風間はつれない態度を取った。自分のことだけを考え、“都合のいい女”としてももをキープしようとした吉池とは対称的だ。

第1話で家庭内暴力を振るった太った中学生のことを、風間は気にし続けている。彼に日本一周を促したが、中学生は漫喫に籠もって拗ねるばかり。風間はLINEでコミュニケーションを図り、中学生の心の扉を開けようと試みた。
「まだネカフェかな?」
「まぁいいさ。逃げ出す勇気は持てたんだ」
「大丈夫だから」

確かに、風間は優しい。でも、中学生にメッセージを送る姿は、リモコンを握ってるだけのようにも見える。心を読み、その時の最善の選択肢を取り、想定の着地点に相手を導く。もも相手にも、中学生相手にも。
1話のラストシーンが忘れられない。気の抜けた顔で携帯の将棋ゲームを遊び、レベル99へ簡単に到達、勝率100%をキープし続ける風間。その素養を活かし、彼は変な悪知恵を働かせないだろうか? いや、ほら。何しろ、ダーク展開が大好きな野島伸司だけに……。

野島伸司に感じる古さ
少し、野島伸司に触れたい。こんなことは言いたくないのだけど、古いのだ。細かいところが。

まず、前述の自転車店のシーン。今の心境を、ももはこんな風に語った。
「今さっき、あそこのスナックで会ってきたのよ。元カレと! で、『もう二度と会わない』って強~い気持ちでさよならしたとこなわけ。で! その道すがら、ここにぼんやりおセンチに寄ってるっていう流れ」

続いて、スナック喫茶でももと吉池が会ったシーン。吉池は、ももではなく真由美(西原亜希)と結婚したことを不本意に思っている。「彼女(真由美のこと)を愛してないんだ」と告白、時々はももと会える関係でいたいと本音を明かした。
「キーンコーンカーンコーン。チャイムが鳴った。放課後のチャイム。あなたも私もおうちに帰るの。バイバイをして、私はこれで転校をして、もう二度と会わない!」

妹のなな(芳根京子)に会ったももは、吉池とのやり取りを伝えた。都合のいい関係を提案する吉池の態度に、ななは憤った。そんな妹へ、姉は正直な気持ちを吐露した。
「わかってるよ。わかってるけど、揺らいじゃった。ジェンガ。あと1個乗せられたらガッシャーン」

新興流派の華道家・宇都宮龍一(千葉雄大)は、ななとの会話中に突然卒倒。慌てたももは、宇都宮に駆け寄った。
「大丈夫ですか!? 誰かー、誰かー!」

いくらなんでも、2018年に「おセンチ」は無いだろう。「ジェンガ」の喩えも無い。いつ流行ったゲームか。人が倒れて「誰かー!」も無い。まず、携帯電話で救急車を呼ぶべき。AEDも探せよ。いきなり、「キーンコーンカーンコーン」って何だ。言葉が古いんじゃなく、会話の流れがドラマ的に古い。
これらの描写を観た視聴者は、演者に呆れないでほしい。そうじゃなく、脚本家に責任がある。石原さとみや芳根京子が不憫に思えてくる。

揚げ足を取りたいんじゃない。こういうのが続くと醒める。気になって入り込めない。門戸を狭めてると思う。90年代を代表する野島伸司だからだろうか。

詰め将棋のように石原さとみに対峙する峯田
風間から目が離せない。

何に対してかわからないが、とりあえず怒っているのはわかる中学生。周囲に当たり散らし、親にまで手を上げる危険な状態だ。なのに、風間は彼の扉を開きかけている。麦茶を飲みながら、携帯で呑気にメッセージを送る風間。
「君は先に敵に出会いすぎただけ。これからは味方ばかり」
中学生は、やはりキレてる。メッセージを見ながら「何言ってんだ、バカ! バ~カ!」と。

直後、「日本一周」ののぼりを立てた自転車を囲むガラの悪そうな3人組を発見する。彼が最も苦手とするタイプのはず。思わず中学生が後ずさりすると、リーダー格の男がにじり寄ってきた。そして、ジュースのペットボトルを投げつける。
「おもしれえな、坊主。頑張れよ!」
敵だと思ってた彼らは味方だった。大丈夫。風間の言う通りだったのだ。中学生は男からもらったジュースを飲み、拒み続けた日本一周に向け自転車を漕ぎ始めた。

もものことをキャバ嬢と勘違いした風間らは「店へ行く」と約束。キャバクラの面接に合格したももは、キャバ嬢として彼らの来店を待ち構えた。風間の友人は、風間とももの仲が進展することを訪問の目的としている。「付き合っちゃえよ!」と囃し立てられる2人。

もも 付き合う? 付き合っちゃう、ぷーさん?
風間 ……俺、「好き」って言いましたっけ?

即、表情が一変するもも。“女子が言われるとドキッと来る一言”を試したのだとおちゃらけた風間だったが、不意のツンデレは明らかに効果があった。後から「イラッと来たわ」と、ももは取り繕っていたけれども。

夏祭りで、風間と太鼓を叩きながら涙を浮かべるもも。亡き母・節子(十朱幸代)は、風間にこんなことを言っていた。
「あんたが何もしてないのに、彼女が不意に目の前で泣いたらさ……。いいかい? 他の男をまだ想ってんのさ。そりゃあ、切ないのさ」
知識とシチュエーションが繋がった。ここで取るべき行動は一つだけだ。

風間 あれから、1人で考えました。「忘れさせて」って言いましたよね? 元の彼氏のこと。割と……簡単です。
もも えっ?
風間 だから……割と簡単ですよ。
もも ……あれ、なんだ? 信じようかなって気になる。

ずっと風間を見ていると、説得力を感じてしまう。人生で一度も彼女無しの39歳なのに。2人は付き合うことになった。ただ、「ハイスペックな美女のももと不器用な風間」ではなく「ピュアで開けっぴろげなももと思慮深い風間」と思ったほうが近い気がする。
ももの扉も中学生の扉も、見事に明けてみせた風間。まるで、詰め将棋のように緻密に。

このドラマにとっちらかった印象があるのは、伏線を張りまくってるのに一向に回収へ向かわないから。一話完結のドラマが人気を博す昨今、チャレンジングな姿勢は買いたい。でも、そろそろ回収作業を少しずつでも進めてほしい。もう、切りがない。
伏線を頼りに、結構、筆者なりに風間について予想を立てたつもりだ。
(寺西ジャジューカ)

『高嶺の花』
脚本:野島伸司
音楽:エルヴィス・プレスリー「ラブ・ミー・テンダー」
チーフ・プロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松原浩、鈴木亜希乃、渡邉浩仁
演出:大塚恭司、狩山俊輔、岩崎マリエ
※各話、放送後にHuluにて配信中

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