「価値観が揺らぐのも大事よね?」阿佐ヶ谷姉妹と“おじさん・おばさん”の距離感/インタビュー

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 姉妹じゃないのに姉妹を名乗っている二人として、「叶姉妹」と同じくらい有名なお笑いコンビ「阿佐ヶ谷姉妹」。9月に秋田県で開催される高橋優主催の音楽フェス<秋田CARAVAN MUSIC FES 2018>にもアーティストとして出演するなど、活躍ぶりは勢いを増している。

その江里子さん・美穂さんのエッセイ本『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)が発売中だ。阿佐ヶ谷姉妹が東京・阿佐ヶ谷で同居していることはよく知られているが、6年におよぶ共同生活中に起きたさまざまな事件をそれぞれの視点からエッセイとして記した。

そこにはシスターフッドの気配を感じることもあり、阿佐ヶ谷姉妹の暮らしはとても魅力的だ。実の姉妹ではなく、友人であり仕事のパートナーであるのに、どうしてこんなに近くにいられるのか――その心地よさの秘訣に迫った。
「パンツ貸してた時期もあったわねぇ」
――おふたりは、6畳一間で一緒に暮らしている様子を、たびたびテレビで公開されてます。そもそも、どういった経緯で同居が始まったんですか?

江里子 私が以前から阿佐ヶ谷に住んでいて、美穂さんも阿佐ヶ谷で一人暮らしを始めて、その頃はときどき電話したりご飯を食べに行ったりする程度だったんです。でもコンビを組んでから、私の部屋によく来るようになって、週5日転がり込まれていて。経済的にもお得ですし、週5一緒にいられるんだったら、週7も大丈夫なんじゃない? ということで一緒に暮らすようになりました。

美穂 私が阿佐ヶ谷に住む前からたまに遊びに行ってはいましたけど、すごく仲がよい友人というわけではなかったんですよ。

江里子 ほかのお友達と動物園に行ったり、映画に行ったりしてたものね。友人になったのは20代の前半だから、もう20年くらいになるんですけど、女芸人さんでたまにいらっしゃる「もともと仲良しで、ずっと一緒にいたいからコンビになった」というような結成ではなかったんです。「1回だけやってみる?」で始まりました。

美穂 それから、打ち合わせや練習でおねえさんの部屋に通うようになって、ずっと居着いてました。

江里子 ちょうどウチが、美穂さんのアパートと駅の中間地点だったんです。休憩するのにちょうどよかったんでしょうね。鳥が止まり木に止まるような……。美穂さんは寝るのが好きな人だから、ついゴロンと横になってそのまま帰らない日が週5日、みたいな。パンツ貸してた時期もあったわねぇ。

――すごいですね。私は二人姉妹の妹なんですけど、姉のパンツは履きたくないです(笑)。

美穂 借りてたわね。今は借りないけど。そのときは良かったけど、今は嫌ですね。

江里子 やめてよ、なんでよ。私が言うならいいけど。

美穂 なんで平気だったのかしら。

――そして6年の同居を経て、昨年末からは同じアパートの隣の部屋に江里子さんが移られたんですよね。エッセイ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』の中で美穂さんが、「いつか将来、親や友達とアパートを借り切って住みたい」と書かれてました。今すでに二部屋占拠してるわけで、夢に一歩近づいたわけですね。

美穂 似た者同士の友達も多いものですから、みんなで寄り集まって住めたらと思っているんですけど、一歩近づいたかしら、どうかしら?

江里子 それを聞かれているのよ、今。

美穂 本当は「阿佐ヶ谷ハイム」みたいなものを建てられたらいいんですけど、金銭面がまだ全然なものですから。

江里子 美穂さん、倹約して結構貯めてるじゃない。貯金額、私の倍くらいあるでしょう。

――江里子さんはあまり倹約しないんですか?

江里子 人間的にはセコくて、スーパー行っても必ず値引きのコーナーとかシールに目を配ってるんですけどねぇ……。食べることが好きだったり、100円ショップも好きで、そういうところでちまちま散財しているのが、美穂さんとの貯金額の差になってる気はします。

美穂 おねえさんは手土産を人にあげるのも好きなんですよ。おねえさんの親御さんもそうだから、遺伝なんでしょうね。

江里子 美穂さんは、よっぽどじゃないとあげないわよね。私はそういうのもお付き合いの一環だと思ってますし、ある程度の年齢いったら「たしなみ」だと思っている部分があるし、「おばさんだったら、“おもたせ”が必要でしょ?」って思っちゃうんですよ。だから、阿佐ヶ谷姉妹の渉外担当を担ってるんでしょうね。

――『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』を拝読したときにも思ったのですが、ここまでのお話をうかがって、すごく「姉妹」っぽいな、とあらためて思いました。もちろんおふたりが実の姉妹でないのは存じ上げているのですが、私自身が妹ということもあって、二人姉妹の関係性としてめちゃくちゃ共感するんです。今の手土産の話でも、外の社会との付き合いは姉に任せておけばいいや、と思ってるところがありますよね?

美穂 ありますね。じゃあやっぱり疑似姉妹というか、おねえさんだと思ってるんですかねぇ。本来の私は一人っ子なので、きょうだいの感じがわからないんですが。

江里子 私は弟がいて実際に姉なので、このスタンスに慣れてしまっているところはありますね。

――外のことは姉に押し付けておくのに、同時に「おねえさんはしっかりしてないから」と思ってるのもエッセイの端々に感じられて、自分の姉に対するスタンスと一緒です(笑)。

美穂 そう、おねえさんは外面はいいんですけど、なんかちょっと抜けてるんですよね。だんだん一緒にいて妹目線になったのかしら。

江里子 いいように言ってるわね……。

老後のことを考えると優しくなれる
――でも、血のつながりのない人間が二人共同生活を送るって、実は結構難しいことですよね。常に部屋に人がいることで「嫌だな」と思う瞬間はなかったんですか?

江里子 「同じ顔がいるな~」と思っていたときはないこともなかったですが、もともと弟と一緒に住んでいた時期もありましたし、上京してきたときも下宿でしたし、共同生活には慣れていたんです。それと、いい年した大人が言うのはなんですけど、私はちょっと寂しがりなところがあって、誰かがそばにいて一緒に何かしたり、それぞれ別々のことをしたりする感覚が嫌いじゃなかったのはあるかもしれません。

美穂 やっぱり、自分の家があって別宅のように通っていたときのほうが気は楽でしたね。好きなときに泊まって、ちょっと嫌になったら自分の家に帰って。

江里子 そりゃそうでしょうよ。「好きなときに」って……。

美穂 同居すると、仕事も一緒ですから、朝も江里子、夜も江里子で、「エリコ過多」になったところはありますね。でも「エアコンの設定温度が高い」とか「布巾が嫌い」とか、一緒に住んでいるからこそ気づくことがあって、それは楽しいです。

江里子 家に帰ってきて、仕事先でのちょっとしたエピソードをああでもないこうでもないって、ケラケラ笑いながら、しかも寝っ転がりながら話し合えるのは、二人暮らしならではの良さですね。その日あったことをすぐに共有して楽しめる。夜中に二人で、犬の鳴き真似とかカエルの鳴き真似をしてヘラヘラしたり。そういうしょうもないことで笑い合えるのは、同じ感覚で面白いと思える人ならではなので、そこはありがたいと思います。

――同居を続けてこられたコツはあるんでしょうか?

美穂 忍耐力……?

江里子 あら、我慢していらっしゃる。

美穂 この前、「分担をはっきり決めなかったのがよかったんじゃないか」って話になったのよね。

江里子 共同生活ではどうしても決めごとをつくらないとガチャガチャになってしまうんですけど、厳密に決めすぎてしまうと、守られなかったときに発生する相手へのもやもやした思いのほうが、意外と負荷がかかるような気がするんです。実際私たちも、ゴミ捨てとかお風呂に入る順番とか決めようとしてたんですけど、お互い守れないことが多々ありました。そのときに、どちらかが譲って折り合いをつけていかないと、壊れてしまうところがあるのかな、と。ガチガチにしないことが、なんとか長続きさせるコツなのかもしれません。

美穂 二人ともきっちりしてなかったのがいいのかな。ちゃんとしてる人だったら、すぐ二人暮らし解消になってたかもしれません。「おねえさんは掃除が苦手だけど、私もお風呂の順番守れないからしょうがないな」とか、譲り合いで保っていたような気がします。

――年齢を重ねて寛容になったという面もあるんでしょうか?

江里子 どうでしょう……でも、確かにちょっとあるかも。私が野垂れ死んだときに、骨も拾ってもらえないんじゃ寂しいな、と。いざってときに見捨てられるのは困るから、悪いことはしないでおこう、というのはあるかもしれません。

美穂 40代に入ると老後のことを考えますし、このまま独り身だろうなと思うと、似たような人がいてくれないと困るなって。そういう気持ちが働いて、優しくなれるところはあるかもしれません。
シティボーイズは3人横並びで座ってる
――一方で、40代の女性同士が同居していると、外野から何か言われませんか? 「いつまで二人で住んでるんだ」とか「結婚しないの?」とか。

江里子 言われます、言われます。

美穂 「二人で住んでるから結婚できないんだ」とか、よく言われますね。

――そういうときはどう対応するんですか?

江里子 「そうなんですよねぇ~」って。

――そんなこと言われたら腹立ちませんか?

江里子 まぁねぇ、たしかにねぇ(笑)。でも、自分たちで選択してこうなっているわけじゃないからあまり強いことが言えないところもあって。もっと「確固たる意志でこの生き方をしてるんです」って言えたらいいんですけどね。

美穂 流れ流れてこうなっちゃってるので(笑)。

江里子 もちろん、ご家族を持ってらっしゃる方や、逆にひとりでも独立されている方がうらやましいと思うところは多々あるんですけど、結果自分たちはこうなっていて、わりとこの関係が楽しいんです。

美穂 のんきだし、気楽に生きてるかもしれませんね。

江里子 この気楽さを声高に言ってもねぇ。

――最近は少し変わってきていますが、お笑いの世界では、「相方同士で仲がいいのはかっこ悪い」という考え方があったと思います。阿佐ヶ谷姉妹のお二人は、コンビを組んでから同居を始めて仲良くなって、真逆ですよね。

美穂 仲が悪い方はどうしてるんですかねぇ。でも、普段は全然しゃべらなくても、芸の上ではつながっているんだと思いますよ。

江里子 男性の場合は「かっこ悪い」という言葉の奥に「照れくさい」というような感覚がある気はしますね。男性社会は――と言ってしまうとよくないかもしれませんが――どうしても上下関係というか、優劣で自分の立ち位置を把握しようとするところがあるから、「俺たちは並列(仲良し)でも大丈夫です」みたいな関係が「かっこ悪い」と思うのかもしれません。
でも、今はコンビで仲がいい方たちのほうがみんなから受け入れられてたり、息が長かったりしますよね。私も、そういう方たちのほうが見ていて親近感がわきますし。シティボーイズさんが事務所の大先輩なんですが、今でも必ず打ち上げや会合の席では当たり前のように3人横並びで座ってらっしゃるんですよ。それで自然と掛け合いのように話をされていて、すごくうらやましいというか、憧れですね。そういう形でずっと続けてこられた方は強いのかなと思います。

美穂 確かに、お互い尊敬し合っていて仲がいいというあの形は、ひとつの理想ですね。

江里子 「仲悪かろうが、板の上でバチコン合えばええんや」って、それが実践できる方はそれはそれですごいなと思いますけど、私たちはシティボーイズさんのような形が好きですし、自分たちもそうなれたらいいなと思います。

「価値観が揺らぐのも大事よね?」
――阿佐ヶ谷姉妹のネタは、自分たちを「おばさん」として扱うものが多いですよね。女性芸人のなかでも、珍しいように思います。自分のことを「おばさん」と認識して受け止めたのはいつ頃からなんでしょうか?

美穂 30代後半くらいからだんだん受け入れはじめましたね。コンビを組んだ頃は30代前半だったので「まだおばさんじゃないでしょう」って思ってたんですけど、今となっては忘れっぽくなったり腰が痛かったり、「あ、ほんとにおばさんになってきたんだな」って感じられるので、地でいけてます。

――じゃあ最初は抵抗があったんですね。

美穂 ありましたよ。はたから見たらその頃から十分おばさんだったんでしょうけど、やっと今身についてきたというか、自然体でおばさんになりました。

江里子 じゃあ30代の頃はまだトガってたんだ。“おばさんトガり”してたのね。

――江里子さんはそういう時期はなかったんですか?

江里子 私はもう18歳のときから、近所の八百屋さんに「奥さん」って呼ばれるくらい見た目が老けてたんです。だから結成の段階から、そこの関しては抵抗がなくて、美穂さんよりは「おばさん」を受け入れていました。「30代だからおばさん」「40代だからおばさん」ということではなくて、「見え方がおばさんならおばさん」っていう受け取り方をしています。今も、50代くらいでおきれいにしている方が「同世代、がんばりましょうね!」って言ってくださった後に私たちの実年齢が40代だと知って「えっ……! すごいショック!」って言われるんですよ。おばさんの定義ってすごく難しいんですけど、私は幅広くひっくるめて「おばさん」だと受け止めています。今は美穂さんもおばさんを受け入れてくれてまろみが出てきて、ちょうどよくなったのかもしれません。

――「おばさん」を受け入れて楽になったことってありますか?

美穂 楽になった気はします。近所の方に挨拶されて、こっちも挨拶できるようになりました。

――若い頃は無視してたんですか?(笑)

江里子 あ、でもそれはそうなんですよ。同居を始めた頃、美穂さんはご近所の方にもあんまりにこやかじゃなくて、挨拶されても会釈くらいでやり過ごしていたのが、今はちゃんとご挨拶しますよね。

美穂 見知らぬ方ともおしゃべりしやすくなりましたね。

江里子 おばさんならではの、当たり障りのない会話が路上でできるようになったわよね。

美穂 自然にしゃべれるようになりましたね。40代になったからなのかしら。

――ところで最近、ニュースサイト「NewsPicks」が広告で「さよなら、おっさん」というコピーを打ち出して、物議を醸しました。「おっさん」を「新しいことを学ばない存在」と定義して、そうならないようにしよう、とうたったものなのですが、「そんなに“おっさん”は悪なのか」「“おっさん”を仮想敵にしすぎでは」と批判が出たんです。それについて「おばさん」はどう思うのか、ぜひお聞きしたいのですが……。

江里子 私たちはおばさんネタを多くやらせてもらってるんですけど、それを見た同世代の方から「自分で『おばさん』って言ってほしくないわ」と言われることもあるんです。「そう言っちゃうと、本当におばさんになっちゃうから」って。いろんな「おばさん」の使い方があって、私もよくわからなくなっちゃうときがあるんですけど、「私おばさんだから」「ババアだから」って言っちゃうと、それが言霊になって自分を老けさせる、っていう話はありますよね。それで若さを保ってご自身を保っていられるのはいいと思うんですけど、抗うことの大変さもあると思います。私達は受け入れたことで楽になっちゃったので、選択肢はいろいろありますけど、そういう生き方もあっていいかな、って。「おじさん」も、「おじさんだ、ゲヘヘ」って言ってる人がよく見えるときも悪く見えるときもあるから難しいですよね……あっ、美穂さん、今何話してるか全然わかってないわね。

美穂 でも私は、そんなにおじさんイヤじゃないですけどね。

江里子 それは美穂さんがおじさん好きだからでしょう。同世代の男性でも、若くあろうと頑張ってらっしゃる方は私たちを見て混乱するみたいですよ。「これが同い年……?」って、価値観が揺らぐらしいです。でも揺らぐのも大事よね?(笑) 考え方はひとつじゃないよ、っていうひとつの提起だと思ってもらえればいいですね。

(取材・構成=斎藤岬/写真=北川泉)

阿佐ヶ谷姉妹(あさがやしまい)
1972年生まれの渡辺江里子(姉)と73年生まれの木村美穂(妹)による、歌って踊れるピンクのドレスの妙齢二人組。劇団東京乾電池研究所にて知り合い、仲を深める。本当の姉妹ではないけれど、顔が似ているということでコンビを組むことに。2016年、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)の「第22回細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」優勝。現在、数々のバラエティ番組で活躍中。今秋、全国4都市で単独ライブ「ドアーを開けて」開催予定。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』

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