片山晋呉の「不適切行為」は非礼ではない。日本ゴルフ改革会議事務局長・上杉隆が語る

日刊SPA!

2018/7/13 15:51



「どうして(招待客が)帰られるのか、(そのときは)理由がわからなかった」

過去5回にわたって賞金王を獲得し、永久シード保持者でもあるプロゴルファー・片山晋呉氏(45)は、プロアマ戦における自身の「不適切な行為」を謝罪したうえで、そう当時の心境を吐露した――。

6月27日に日本ゴルフツアー機構(JGTO)が開いた会見は、日本ゴルフ界新旧揃い踏みの顔ぶれだった。

制裁金30万円と厳重注意処分を受けた片山氏をはじめ、青木功会長(75)や石川遼副会長兼ジャパンゴルフツアー選手会長(26)らが参加。青木氏は「スポンサーがあってこそ、我われは生活できるんです」と平身低頭で語り、石川選手会長も「至らない点があったことを非常に反省しております」と謝罪の言葉を繰り返した。

事の発端は5月30日、日本ツアー選手権森ビル杯の前日に催されたプロアマ戦でのこと。片山氏が同伴者のプレー中に、周囲の了解を得ず自らのパッティング練習を行ったとされ、この「ホスピタリティー(おもてなしの気持ち)」を欠く行為により、不愉快な思いをした当該同伴者が途中で帰ってしまったことに始まる。

日本の男子ツアーは1983年の年間46試合をピークに減少し続け、今季は国内23試合と半減。年間38試合を行い、6年連続で賞金総額が過去最高を更新中の女子ツアーとはあまりに対照的だが、そんな「男子ゴルフ離れ」に歯止めをかけようと、今季から選手会長に石川遼氏が抜擢され、ファンサービス向上を目指し「改革」を始めた矢先の出来事だった……。

7月5~10日に開催された「長嶋茂雄招待セガサミーカップ」(北海道・ザ・ノースカントリーGC)のプロアマ戦で、石川選手会長は「楽しくプレーするのが、プロアマの目的。今日はそういう点では僕の組は楽しかった」と笑顔で振り返ったが、果たして、伝統の男子プロゴルフ界を揺るがした今回の騒動は、どう読み解けばいいのか? 2014年に日本ゴルフ界の将来を危惧する有志により発足された「日本ゴルフ改革会議」(大宅映子議長)で事務局長を務める、ニューズ・オプエドのアンカーマン・上杉隆氏に話を聞いた。

――今回、片山氏が「不適切な行為」を行ったとされるプロアマ戦とはどういうものなのか?

上杉:プロアマに何度も出たことがある私からすれば、むしろ「非礼」なのは途中でラウンドを放り出したアマチュアのほうです。プロアマに参加するアマはいわば“上客”で、ゴルフを真に理解している人ばかり。日本のプロアマ戦はトーナメント前日に行われるので、プロがコースの最後のチェックに努めるのは当然と、大多数のアマは受け止めています。

プロアマ戦ではプロとアマがチームを組んで競い合い、アマにすれば同じ組の仲間であるプロに優勝してほしいと思うもの。アマチュアのほうから「遠慮なく練習してくださいね」と申し出るのがむしろ慣例なのです。

フィギュアスケートもエキシビジョンが大人気ですが、行われるのは試合の後。米国の「サンデー・プロアマ」も、プロへの配慮から水~土曜日の4日間で試合を行い、本番を終えた後の日曜日にプロアマを開催しています。つまり、日本のプロアマ戦のように翌日からの試合に備えて練習する必要もないので、今回のような問題は起こりようがないというわけです。

◆大事なのはコースに足を運んでくれる観客

――今回の騒動は、選手会長に石川氏が就いたことをきっかけに、ファンサービス向上の「改革」が叫ばれるなかで起きてしまった。

上杉:プロゴルファーのファンサービスとは、「接待ゴルフ」をすることでも、観戦記念のピンフラッグを売りさばくことでもなく、純粋にいいプレーで観客を魅了することに尽きる。今回の騒動は、「スポンサー離れ」が進むなかで起きたと報じられていますが、事実はまったく逆。むしろ、日本の男子プロゴルフ団体がスポンサーのほうばかり見ていたために、「ファン離れ」が加速し、ゴルフ人口が減ってしまった過程で起きたと考えるべき。

ゴルフ団体やプロ選手にとって一番大事なのは、あくまで「お金を払ってコースに来てくれる観客」です。例えば、米国の「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」は「PGAツアー公認」の扱いになっていますが、この大会では、プロがアマチュアと共にチームを組んでコースを回る。地元の子供たちからセレブまで多様なアマが参加するのですが、プロが気兼ねなくプレーに集中できるようマナーの周知も行き届いており、4日間の合計ストロークで優勝者と優勝チームを決める頃には、プロとアマがファミリーのような関係になるほどです。

一方、日本の男子プロゴルフに目を向けると、こういったファンの裾野を広げるための努力を怠ってきたばかりか、スポンサーのほうばかりに気を取られ、自らの利権を守ることにきゅうきゅうとしている。今回の騒動は起こるべくして起こったと言っていいでしょうね。

――では、真の「改革」はどのように進めていけばいいのか。

上杉:海外のツアーは、観客からの入場料やスポンサー収入のほかに、当然ですが、テレビやネットの放映権料を得ています。ところが日本のツアーは、逆にテレビ局にお金を支払って放送してもらっている……。これが、私たち日本ゴルフ改革会議が指摘し続けている「逆放映権問題」です。

サッカーや野球など、人気スポーツはテレビ局側から放映権料を受け取るが、プロゴルフの場合、1試合につき2億円をテレビ局に支払うこともある。しかも、ゴルフは視聴率が取れないことを理由に「録画」が流されているため、ネットが浸透した今、事前に結果が漏れ、ファンがリアルタイムの興奮を味わえなくなってしまった。

青木功、ジャンボ尾崎、中島常幸……といったスター選手が多かった“黄金期”はそれでも成り立ったが、この何十年来続く大きな問題を放置してきたことで、ゴルフ人口減少に繋がる悪循環を断ち切れなくなっている。石川選手会長は、ピンフラッグを売り出すなどの小手先の「改革」でお茶を濁すくらいなら、まずは日々の練習に勤しんで、自ら成績を残してほしい。プロの技術で観る者を魅了する以外、ファンの裾野は広がらないですから。

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片山氏一人に責任を押しつけていても、男子プロゴルフの人気再燃には繋がらないということだろう。<取材・文/日刊SPA!取材班>

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