ただのBGMじゃない!「映画サントラ」の知らない世界

ananweb

2018/7/13 11:00

映画を観ていると流れてくる音楽が印象に残って、サウンドトラックを購入して聴いてみたことがある人もいるのでは? 実は、作中で使用されている音楽は、監督のメッセージを伝えたり、作品をひもとくヒントが隠されているなど重要な役割を果たしているんです! その読み解き方や注目すべきポイントを、サントラにまつわる本を記した長谷川町蔵さんに聞きました。
「映画で流れる音楽は、以前は歌詞のないインストゥルメンタルが主流。雰囲気を盛り上げるために、音の面での演出として機能していました。でも、ここ20年、特にクエンティン・タランティーノ監督以降に増えたのが、歌詞でメッセージを伝えるなど、音楽を“第二の脚本”として使う手法です。たとえば『レディ・プレイヤー1』では、主人公がヒロインと会ったときに、テンプテーションズの『ジャスト・マイ・イマジネーション』が流れますが、これは片想いソングの代表格。観客はそれを聴くだけで“主人公はヒロインに恋しているな”ということが、セリフがなくてもわかっちゃうんですね。この手法が増えた背景のひとつには、映画で描かれる世界が多様化したことがあります。昔は映画で描かれる世界は、現実と離れた純文学的なものが多かったけど、今は、映画と現実が地続きという設定が普通になり、既存のヒット曲も流れるようになりました。

また、同じ製作チームが手がけた『ラ・ラ・ランド』と『グレイテスト・ショーマン』は、共にブロードウェイに原作がないオリジナルミュージカル。それがヒットするのは、新しい流れといえます。ミュージカルの作家が世代交代をしたことでメロディがキャッチーで覚えやすい挿入歌を書く人が増え、観客にアピールする力を取り戻してきたんだと思います。

ちなみに、監督が選ぶ音楽は、脚本を書くときにパッと思い浮んだ、体に染み付いたものを選ぶ人が多いもの。リアルに耳にしていた世代の音楽もあれば、自分の世代とは離れたものをオマージュとして使う場合もあります。だから、“なんでこの曲なんだろう”と調べると、映画の本質が見えてくるかも。気に入った映画がある人は、調べると面白いと思います。

『ベイビー・ドライバー』

「エドガー・ライト監督が、曲のテンポに合わせてカット割りしたといわれる作品で、’80~’90年代初頭の曲の引用が多い。作中ずっと流れるほど、究極的に曲を使っています」

『ベスト・オブ・ボンド』

「映画『007』の歴代テーマソングを収録したアルバム。“歌は世につれ、世はボンドにつれ…”じゃないですが、各時代のカッコよかった音楽が、今作を通じて見えます」

『レザボア・ドッグス オリジナル・サウンドトラック』

「曲でメッセージを伝える手法を確立したクエンティン・タランティーノ監督。今作のオープニングで『リトル・グリーン・バッグ』が流れたときの衝撃は、忘れません」

長谷川町蔵さん 文筆家。映画やアメリカンカルチャーに精通。近著に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)。

※『anan』2018 年7月18日号より。取材、文・重信 綾

(by anan編集部)

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