三月のパンタシア 切ない恋物語を歌と動画で綴る2ndワンマンライブ『~星の川、月の船~』

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三月のパンタシア セカンドワンマンライブ「~星の川、月の船~」2018.6.23(SAT)渋谷O-EAST


6月23日(土)、渋谷O-EASTで三月のパンタシアのセカンドワンマンライブが行われた。三月のパンタシア(以下、サンパシ)はヴォーカリストの「みあ」を中心に、彼女の歌声に魅せられたミュージシャンやイラストレーターをはじめとしてクリエイター達が集まった音楽ユニットだ。三月のパンタシアが生み出す叙情性が高く繊細な楽曲・歌詞を、ひとつの物語として組み上げるような作品作りが若いファンに響いている。

三月のパンタシアはアーティスト写真もイメージイラストということで、1stライブ以降ファンになった、知ったという人にとってはどんなライブになるのかまったく予想ができない。

ただ、事前にライブと同じタイトルのイラストと声優・豊崎愛生によるモノローグで進むストーリー動画が第三章まで公開されていた。さらにライブ直前、みあがTwitterでライブが四部構成であることを明らかにしていたこと。この2つがヒントだった。


三月のパンタシア セカンドワンマンライブ「~星の川、月の船~」Prologe

当日は梅雨晴れが続く中、本格的な雨模様だったが、会場前はファンが長い列を作っていた。むしろ、雨こそふさわしいとばかりの熱気でごった返している。ファンの多くは20~30代前半といった印象で、女性ファンの姿も見られた。

中に入ると、ステージには「三月のパンタシア」ロゴが表示された大きなスクリーンがその背後は見えない。この時点でどんなライブが展開されるのか予想ができなかったが、1stLIVEから追いかけていたファンにはもうわかっていたかもしれない。

4部構成のライブ、みあはスクリーン越しに物語を歌う

ライブは予定より少し遅れで突然、暗転して始まった。事前配信されていた動画の序章がステージ上のスクリーンに映し出される。第一章「はじまりの歌」だ。

――古い映画が好きな女子高生のわたし。帰宅部で、人混みが苦手で、人見知りの少女が、名画座で同じクラスの男子と偶然会う。その日はつい返ってしまったわたしだったが、その後、彼が話しかけてくるようになる。そして、互いに古い映画の話をする相手を求めていたふたりの間で話は弾むようになる。

動画終わりとともにみあの歌声が響き出す。M1の曲はOVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』OPの「群青世界」。


スクリーンは上がっていない。彼女はどこに? と思ったら、スクリーンの向こう側だ。スクリーンは透過性があり、赤い照明に照らされたみあが見える。歌っている間もスクリーンには公開されている動画や、BGV、そして歌詞が映し出され、ステージ上の情報密度はかなり高い。

どうやら、四部構成というのは、事前公開されていた物語に沿って楽曲で紡いでいくことのようだ。とすると、まだ発表されていない第4章の動画も気になる。

第一章は恋が始まる予感、ということで、疾走感あふれる楽曲が続けざまに歌われる。1曲めは少しみあの声に緊張が現れていたように思えたが、それも曲が進むにつれて薄れていく。

M2はTVアニメ亜人ちゃんは語りたい』EDの「フェアリーテイル」。近くにいる君を好きになることで、何気ない日常がおとぎ話しの世界のように輝いてくる樣を歌う。

M3は雑誌『リスアニ!』の付録CDとして発表された「イタイ」。痛い、(そばに)居たいというもどかしさが絶妙だ。M4はどうしようもなく、相手を求めてしまう気持ちを表現した「青に水底」、M5は「七千三百とおもちゃのユメ」で、共にアルバム『あのときの歌が聞こえる』収録曲で、「話がしたいな、君と僕のこれから」という歌い出しのM5で曲調が落ち着く構成だ。

MCが一切ないままライブは続き、観客は身じろぎもせず、目前のスクリーンで紡がれている物語に見入っていた。みあの歌もまた、映画の一部であるかのようだ。しかしそれはミュージカルとは全く異なる。イメージ中心で歌詞も映し出される映像に命を吹き込む語り部のようなスタイルに見えた。その物語にひたる観客たちが手拍子すらしないのも当然といえる。それだけ歌声の生み出す世界観が耳と目を奪っているのだ。

みあの歌声と物語に観客はじっと見入る

そして第二章の動画が映し出される。わたしは、文化祭用に短編映画を撮影するから人手が足りないと彼に請われ、所属する映画部に「女優はしない」という約束で入部する。部活は映画を撮るよりも映画の話でダベったり、花火大会に行ったりと青春そのもの。そんな中で彼が好きなことに気付く。そして、部長が彼に訊いた「好きなやつとかいないの?」の答えに動揺する。そして、自分で自分に恋の呪いをかけて思いを封じてしまう。


三月のパンタシア セカンドワンマンライブ「~星の川、月の船~」第二章

そう、第二章は片想いで起こる勝手な思い込みから来る「わざと」のすれ違いや、虚しい思い、もどかしい思い、それでも止められない「好き」という気持ちだ。章タイトルは「重ならない空」。

第二章の1曲めはM6「ブラックボードイレイザー」。「群青世界」の収録曲で、緊張感のある楽曲だ。消せない思い、消したい思い、秘密の恋というキーワードが刺さる。M7はメジャーデビューシングル「はじまりの速度」収録の「花に夕景」。夕方の風景の中、会話もろくに出来ずに逃げ出してしまう僕、なんとなくうまくいっていない彷徨の心情がやけくその気持ちを表したようなアップテンポで歌われる。

M8は「ルビコン」収録の「リマインドカラー ~茜色の記憶~」。スローテンポで「名前のない気持ち」と、笑えない自分を歌うなんとも悲しい曲だ。続くM9も切ない曲調の「ないた赤鬼、わらう青空」。あなたとわたしの不釣合いを嘆く自虐的な歌で自分を貶めていく。そしてこの章をしめくくるのはTVアニメ『スロウスタート」主題歌でもあるM10「風の声を聴きながら」。軽快なピアノのイントロで、ちっぽけな秘密を持ったまま、淡々と日々を過ごす決心を歌う。


ミドルテンポの曲でも、重さを感じることはない。POP感を心地よく保っている。しかし歌われる気持ちは切ない。今、まさに恋をしている人なら分かりすぎるほど、明快にその心中を表しているはず。そして恋をしていなくても、過去の思いを喚起させられるはずだ。

そして第三章の動画がスクリーンに映写される。卒業式の日、わたしと彼は教室にいた。あれからあまり話さなくなったふたり。彼は、突然あの日の話を語りだす。そして「ちゃんと告白しないといけないと思う」と言う。わたしはその先を聞かずに教室を飛び出した。そして彼は映像の専門学校に進むため東京へ、わたしは大学へ進んだ。


三月のパンタシア セカンドワンマンライブ「~星の川、月の船~」第三章

実は、事前に発表されていた第三章の動画には続きがあったことが、この日のステージでわかった。彼の言葉を受けてわたしがどうしたのか――。それは、答えを聞くことを拒むことだった。章タイトルは「さよならの季節」だ。

そして歌われたのはM11「day break」。君とわたしとの関係を月と太陽にたとえ、追いかけても変わらない距離を歌う。「忘れないでね」の歌詞が悲しい。M12はさらにたたみかけるような「キミといた夏」。「はじまりの速度」収録曲で、落ち着いた曲調で歌われるのは、浴衣姿での待ち合わせや、夏の夜空。「来年も一緒にいられたら--」の歌詞が切ない。

M13「シークレットハート」では、そこから少し時間が進んだのか、恋をした日々を「あの頃」と思い出し、しかし、その実、まだ引きずっていることを告白する。そして「風の歌を聴きながら」収録のM14「#最高の片想い」。「#」はもちろんハッシュタグだ。あの頃、ハッシュタグをつけて呟いていた大好きな曲。伝えられなかった気持ち。「#さよならMyFrend」の歌詞がスクリーンに映された時、説明できない感情に涙してしまった。

悲しい展開の第三章から締めくくりの第四章へ

第四章はこの日はじめて上映されたエピローグだ。2年の月日を経て、わたしは母校の部室を訪れる。そこで未完成だった映画のフィルムを観て、あの頃を思い出す。そして、そのあとで、彼がテスト用に撮っていたフィルムも見つける。そこにはさまざまな風景が映っていたが、そのどのシーンにもわたしがいた。彼はわたしをカメラでずっと見ていたのだ。彼が好きだった相手というのは……。

ここでみあはスクリーンの前に出てM15「はじまりの速度」を歌い始める。これまで観客として物語を観ていたファンも、オーディエンスモードに転換、手拍子や声を上げる。スクリーン越しではないファンに、みあのテンションも上がったのか、彼女の歌声はさらに伸びやかになる。

そして、過去の苦い思い出すら糧にしていくアップテンポなM16「ルビコン」を歌い終わると、初めてみあのMCが挟まれた。

「ここまで紡いできた物語、いかがでしたか?」とみあが問いかけると、観客から大きな拍手と歓声が返ってきた。

続けて「言わなくても伝わる思いもあるけれど、言わないと伝わらないらない気持ちもあるんだと思います。この2人は同じ景色を見て同じ空を見て、同じように笑いあえていたはずなんだけど、あと数センチの勇気が踏み出せなくていつもすれ違ってばかりだった--そんなふたりの空想物語を届けました。私は、目の前にいてくれる大切なあなたに、ちゃんと伝えようと思います。本当にいつもありがとう」


みあはそう言うと、とても深いお辞儀を長い時間、観客に捧げた。拍手と歓声で答える「大切なあなた」=観客と直接向き合って、お互いの気持ちをしっかりと確かめる。ここまで語り部として歌に徹していたみあの熱演が報われた瞬間でもある。

「こうして聴いてくださるみなさんがいてくれて、いつも自分は前に進むために走り出す力をもらっています。本当にありがとうございます」と話すみあ。さらに、この物語の最後を受けて「この物語の最後の涙は、どんな涙だったのか。それは、あなたに空想してもらうことで、この物語は完成します」と語り、最後の曲「星の涙」を歌い上げる。第四章のタイトルはこの曲と同じで、エピローグとなる楽曲だ。

みあのMCどおり、わたしが真実を2年後に知って流した涙の意味を考えるのに、これ以上の曲はないだろう。「交わることのない平行世界で」の歌詞が、物語の中の、すれ違ったままのふたりを表しているかのようだ。

歌い終えてみあがステージを去ると、観客から熱狂的な「サーンパシ!」コールが巻き起こる。

そして再びステージに姿を表したみあは、「お話しましょうかね」と少しリラックスした口調で語りかける。そして、今日のライブが楽しみでだけど緊張もあったと明かす。しかし、実際にライブをやってみると、やはり楽しかったようだ。さらに、「いつもこんなに聴いてくれて、会いに来てくれる皆さんが大好きです」と改めて感謝の気持ちを伝えた。

ここで、ライブを支えたメンバーであるギターのグシミヤギヒデユキとキーボードの金井央希が紹介され、観客からも名前がコールされる。ここでみあは「もう少し歌ってもいいですか?」と語りかける。そうして歌われたのは「恋を落とす」。これは喪失と再生のWEBドラマ「恋を落とす」の主題歌で、映像には現在期間限定で公開中のMVが使われている。切なさ爆発といってもいい曲でサンパシファンにはたまらないはず。

そして、本当にラストの曲となったのは「コラージュ」。両A面シングル「風の歌を聴きながら」収録曲でアニメ「衛宮さんちの今日のごはん」EDだ。アニメ同様、ほんわかした何気ない日常の風景と思いを切り取った曲だ。切ない物語が続いたライブをそっと暖かい明かりで照らし出すような締めくくりとなった。

取材・文:梅田勝司

当記事はSPICEの提供記事です。

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