『ドカベン』シリーズついに完結。気になる2つの「その後」

エキレビ!

2018/6/30 09:45

野球マンガの金字塔『ドカベン』シリーズが、今週発売の「週刊少年チャンピオン」で、ついにフィナーレを迎えた。


『ドカベン』(1972~1981)、『大甲子園』(1983~1987)、『プロ野球編』(1995~2004)、『スーパースターズ編』(2004~2012)、そして、最終章『ドリームトーナメント編』(2012~2018)。途中、9年ほどの中断期間があるとはいえ、足掛け46年の長旅。まさに、水島新司のライフワークだったわけだ。

その最終試合、ドリームトーナメント決勝戦、微笑三太郎率いる京都ウォーリアーズ対、土井垣将率いる東京スーパースターズ。延長12回裏、投げるマウンドには中西球道。打席には、山田太郎。

打の最高傑作・山田太郎vs投の最高傑作・中西球道
先週号の最後のフリは、山田太郎が「大記録4試合連続サヨナラホームランなるか」ということだった。

1回戦は新潟ドルフィンズの岡本慶司郎(Kジロー)相手にサヨナラ本塁打。
2回戦では阪神タイガースの火浦健相手にサヨナラ弾。
準決勝では広島カープの水原勇気からまさかのサヨナラランニングホームラン。
そして迎えた決勝、京都ウォーリアーズの中西球道と5度目の対戦。

振り返れば、シリーズ最高傑作『大甲子園』の実質的な決勝戦、準決勝でも引き分け再試合に渡る熱戦を演じた山田太郎対中西球道。

水島漫画における打の最高傑作が山田太郎ならば、投の最高傑作が中西球道。奇しくも2人、現実の高校球児に「ドカベン」と称された香川伸行(浪商)、「球道くん」とニックネームがつけられた中西清起(高知商)を生んだほどの名キャラクター。最後の対決がこの2人であったことは、作品にとってまさに有終の美、といえるものになったと思う。

結果まではここに書かない。
むしろ注目すべきは、その結果に至るまでのプロセスだ。
打ちあぐねる山田にアドバイスを送ったのは、盟友、岩鬼正美。

過去のインタビュー記事で、《「だれがいちばん好きだ」と聞かれれば「岩鬼」と答えますね》《岩鬼に足をむけてねられない》(『水島新司マンガの魅力』より)と水島自身が語ったほど愛着のあるキャラクターであり、水島漫画の象徴的存在でもあるこの男なくして、ドカベンを終わらせることはできなかった。

アドバイスの概要は、要約すれば、プロ野球の最新トレンド「フライボール革命」だ。数々の「球界水島予言」を描き、リアル野球とフィクションの境目をなくしてきた水島野球マンガ。最後にもしっかり球界トレンドを描いてきたところに、水島新司の野球愛、リアル野球への追究心が透けて見えた。

『あぶさん』『ドカベン』『野球狂の詩』、みんなと別れたくないな
試合終了でそのまま大団円に向かうかと思いきや、そこから山田と岩鬼によるエピローグへ。シリーズ冒頭、1972年に描いた中学生編、山田と岩鬼の出会いのシーンへプレイバックする。

初期『ドカベン』のコミックスを見ればわかるが、当初この作品は「野球コミックス」ではなく、「学園コミックス」と銘打たれていたことは、ファンであればおなじみの事実。シリーズ最後に、改めて中学時代を思い出す岩鬼と山田の2人、というフィナーレは、一見「えぇ、そんなラストなの!?」と意外に思えたが、よくよく考えれば当然の帰結だったのかもしれない。

さて、読み終えてみて、気になることが2つ。

当初、この『ドリームトーナメント編』は、優勝チームに《メジャーNo.1チームと真のワールドシリーズを戦う権利が授与される》として始まったが、最終回ではそのことについて全く触れられなかった。もとからその「先」については描く予定はなかったのだろうか。

そしてもうひとつは、「水島キャラクター総出演」をうたいながら、ついぞあの男、山田と並ぶもうひとりの看板打者、「あぶさん」こと景浦安武が登場しなかったことだ。

5年前の2013年、連載1000回を目前にしながら、唐突のようにも感じた『あぶさん』最終回。それは、『ドカベン ドリームトーナメント編』で景浦を登場させるための布石、ともっぱらの噂だった。もちろん、それは読者側の勝手な期待に過ぎなかったのだが、本当に出てこないとは……。このまま、山田と景浦は対峙しない、ということでいいのだろうか。

水島新司と伊集院光との対談が収められた『球漫』には、水島新司のこんな言葉が綴られている。

《でもねえ、『あぶさん』『ドカベン』『野球狂の詩』、みんなと別れたくないな。本当にずっと一緒にいたいんだよ。私は恐らく今、執筆中の3本で絶筆までいくような気がするんですよ》

かつて、外野フライを打たせるシーンで筆が乗りすぎ、「このスイングは外野フライじゃないな」と思わずホームランにしてしまい、その後の試合展開が構想から変わってしまった、というのはよく知られた水島マンガあるある。作者だって展開が読めない波乱万丈感が満載だったからこそ、水島マンガは愛され続けてきたのだ。


「ありがとう、ドカベン」「ありがとう、山田太郎」とこれだけのフィナレーレ感を演出した今回の“最終回”。でも、またどこかで山田太郎や岩鬼、そして景浦が出てきても、何も驚くことではないはず。むしろ、どこかでそんな展開を期待してしまう。まあでも、ひとまずは、“完結”の余韻に浸りたい。
(オグマナオト)

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