トップシェフ松嶋啓介「食」を通した発想のヒント

TABILABO

2018/6/21 19:00


松嶋啓介ってご存知だろうか?

フランスのニースと原宿にレストランを持つ、オーナーシェフであり、今年の4月に『「食」から考える発想のヒント』という著書を出版したばかりだ。

しかし、この本には料理のレシピが載っていない。

これって、ビジネス書なの?


(C) iStock.com/f3rd14n

レシピ本じゃない料理家の本はたくさんあれど、それは自叙伝であったり食にまつわる研究書であったりするものだけど、この本は……、

料理や食をビジネスとつなげて書き上げている、経営理念につながるビジネス書である。

と、まえがきに書かれている。

もともと料理や食に対する執着や興味がほとんどなく、生活をしていく上でお腹がすいたから必然的になにかを作って食べる。という程度の食 “欲”しかない私にとって、この本を開いて、最初に「なんじゃこりゃ?」と思ったのが正直なところ。

というのも、『「食」から考える発想のヒント』という本書のタイトルから想像した内容は、“効率的な食の組み合わせ方”とか、”活力になる食”とか、”これを食べたら幸せになれる”とか、”料理をする男とは”……というような、食品に関わることや、栄養素をヒントにした幸せになる方法が書かれているのかも?ということだった。

しかし目次には「自分でリスクを負っていない人間は学ぼうとしない」とか、「個人事業者としての意識をもつ」、「プレゼンテーションとマーケティングの方法論」など、食とは一見関係のない言葉が並んでいる。

例えば、食卓からコミュニケーションのとり方を学んだり、給仕に託されたプロデュース能力、さらにはレシピにおけるロジックのありかたなど。日本の古き良き"食卓”や、ニースサラダ、さらにはフランスの郷土料理であるラタトゥイユを例にとって、松嶋風のビジネス論を語っているということなのだ。

料理家だからこそ気付かされたこと、さらには短期間で、しかもフランスという異国で成功してきた実績から、日本を離れていたからこそ感じることができる、感性をもってこの本を書き下ろしている。

本書は、料理家・松嶋啓介が、オーナーシェフとして歩いてきた軌跡と経験をもとに、彼独自の哲学がかかげられた“ビジネス書”なのだ。

福岡生まれニース在住の日本人が培った感性



松嶋啓介/Keisuke Matsushima

1977年福岡県生まれ。『KEISUKE MATSUSHIMA』オーナーシェフ。フランス芸術文化勲章、農事厚労省ショバリエ。
20歳で日本からフランスのニースに渡り、25歳でニースで日本人初のオーナーレストラン『Kei's Passion』をオープン。外国人シェフ最少年の28歳で、ミシュランガイドの星★を獲得。店名を『KEISUKE MATSUSHIMA』に改、2009年に東京・原宿に『restaurant-1』オープン。後に店名を統一する。現在はニースと原宿を行き来しながら、「食」を軸に様々なビジネスを展開する企業家でもある。

ご存知の方はご存知かもしれないが、松嶋啓介とは、ネスカフェのCMに出ていたり、ファッション雑誌に全く料理とは関係のない連載を持っていたり、サッカー選手やクリエーター、スポーツ選手等、各界の著名人と交流があったりなどなど……、人を惹きつける魅力にあふれた、牽引力が高い愛されキャラのようだ。一般的な料理人のイメージとはちょっと違って面白そうではないか。

なんとなくだが、松嶋さんには一度もお会いしたことがないが、松嶋啓介という人物は、バリバリの九州男児、だけど、ニースで成功するために得た、日本人とは違う発想力を武器に、世の中を変えようとしている人なのであろうな、と思えた。

得てして九州男児とは、前に出たがるイメージがある。それがいいか悪いかは別として、私が今まで出会った九州男児は、全員いい意味で自己顕示欲が強かった。それは、発信力が高いというか、影響力が強いというか、なにかしらのカリスマになれるような芯の強さをもっている人たちが多い。

一括りにするのは難しいし、そうじゃない人もいるのだとは思うが、この本と情報を重ね合わせて妄想すると、松嶋さんもそんな人なのではないだろうか? と思わせるエキスがプンプンと漂よっている。

でも、松嶋さんは、そんな一括りにカテゴライズされることに嫌悪感を覚えるであろう。きっとそんな人。

ヒントをもとに発想力を高め、
答えを導き出す


(C) iStock.com/Avosb

本書には、忙しさにかこつけて、カップラーメンやファストフードで腹を満たして満足していた自分が、年齢を重ねるとともに感じてきた“違和感”を明確に示唆していた。それがビジネスに繋がるかどうかというと、フリーランスである私にとっては、それを見直す事により、きっと仕事が増えるであろうと思わせる内容ではあった。

松嶋さんは、本書内でそれを「ヒント」とか「導き出す手助け」としているが、私にとっては、それは明確な「答え」だ。が、しかし、確かに"これをやれば成功する”といった、具体的な秘訣は書かれていない。

本書に書かれていることを、どう読んでどう捉えるか、その発想力によって答えは変わる。決して押し付けではない、異なる発想につながる「ヒント」が詰まっている。

そこが、松嶋啓介という料理人の考えた、
ビジネス書のあり方なのかもしれない。

新しい発想力は、何よりも自分の糧になる。今の自分になんとなく煮詰まっていたら、この本がなにかしらの「ヒント」をもたらしてくれることだろう。


『「食」から考える発想のヒント』著:松嶋 啓介(実業之日本社)

フランス料理店のオーナーシェフが、フランスと日本で店を経営するうえで気付いた、世界を股にかけて移動を繰り返し、中継地点に立って物事を客観的に眺め、問題点を整理する「ソリューションを図る方法論」について語られている。それは料理と同じで、あくまでも相手のため、お客さんのために考えたことから生まれた発想だ。これをもって、本書は「食」のあり方に留まらず、日本人を取り巻く様々な現実的な問題に対する「発想のヒント」が綴られている。

Top photo: (C) iStock.com/scyther5

Licensed material used with permission by 実業之日本社

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