アメコミヒーローをロボに乗せるのは日本の伝統!? 映画『ニンジャバットマン』ガジェット裏話も!中島かずき×水﨑淳平インタビュー

ガジェット通信

2018/6/21 08:00



『天元突破グレンラガン』や『仮面ライダーフォーゼ』の中島かずきさんが脚本を手がけ、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズOPや『ポプテピピック』などで注目を集める水﨑淳平監督率いる神風動画が初の長編アニメーションに挑戦した戦国タイムスリップ・アクションエンターテイメント『ニンジャバットマン』が6月15日(金)に公開。



世界中で愛されるアメコミ『バットマン』のキャラクターが日本の戦国時代にタイムスリップするという、前代未聞のストーリーは情報解禁とともに話題に。

『バットマン』という作品に対し、「ダークな雰囲気もポップな雰囲気も出せる幅広いイメージ」を持っているという中島さんと水﨑さん。今作は『バットマン』シリーズの中でも、ぶっ飛んだエンターテインメント作品に仕上がっています。

ガジェット通信では、そんなお二人に作品の裏話からネタバレありの小ネタまで、たっぷりとお話を伺いました!

※ネタバレありですが、文字で読むだけでは何を言っているかわからないと思うので、ネタバレにならないかもしれません(笑)。

集められたスタッフを見て「察した」水﨑監督



――今作で意識したことは?

中島:
クリストファー・ノーラン的なシリアスなテイストももちろん良いんですけど、アメコミの幅というのはあって、アダム・ウェスト版のある種ファンキーな楽しさみたいなものが最近は少なくなっている気がしたので、ああいう明快な『バットマン』の活劇を作りたかった。特にジョーカーは今、少し哲学的なヴィランになっているところがあるんですが、そうじゃない陽気な愉快犯のジョーカーもいいんじゃないかなと思って。日本でやるなら、思い切り振り幅を広げて日本のやり方で楽しいことをやれたらいいかな、と僕は思いました。



――『バットマン』のキャラクター設定自体は変わらないのに、作品によってこれだけ振り幅があるのもすごいですよね。

中島:
水﨑さんとも言っていたんですけど、丁重に「日本のアニメの世界にようこそ」と、アメコミのキャラクターたちの本質は変えないけれど、周りの状況があまりにもおかしなことになっていたら、こういった振る舞いになるよね、というのをちゃんとやりたかった。

水﨑:呼ばれたスタッフの顔ぶれを見たときに、「あ、なるほど」と、察しました(笑)。一番得意なところに持ち込めばいいのかなと。

中島:そうそう。それはもう、(アニメプロデューサーの)里見哲朗さんの意志ですよね。過剰な脚本家と過剰な監督と過剰なキャラクターデザイナーが集められたら(笑)。

水﨑:そこで察した(笑)。僕の中で、アメリカ人って日本に来ると、一切日本語に対応していこうとしないで、英語でゴリ押ししてくるイメージがあるんですよ。その英語でゴリ押ししてくる感じを、前半にバットマンがバットモービルや自分のガジェットでゴリ押しして立ち向かって行く感じに重ね合わせたんです。



――そのバットマンが変わっていくところも描いていますよね。

水﨑:
そうですね。断じて英語に馴染まない日本人に対して挫折するアメリカ人みたいな(笑)。「コンニチハ」とか頑張って言ってみる感じ。あくまで僕の考えるアメリカ人像ですけどね!





――ヴィランたちが実在する戦国大名に扮していますが、キャラの振り分けは?

中島:
今回、ゴッサムのヴィランを日本の戦国大名に置き換えていますが、明智光秀だったらトゥーフェイス、上杉謙信は女性という説があるからポイズン・アイビー、隻眼のデスストロークは伊達政宗とか、そういう配置をする楽しみはありました。

――ヴィランたちはタイムスリップすると、すんなり武将や大名になっていますよね。

中島:
実は、戦国大名たちは入れ替わりでゴッサムに行っているので、アーカムアサイラムの牢屋の中に居るんです。戦国時代の配下たちは、時空震コンバータの影響で、お館さまはこの人だ、となんとなく思っているんです。だから、「え、ここに来たらこのポジションになってんの?じゃあ好きなようにやっちゃえ!」ってヴィランたちもやっています。

本編映像:『ニンジャバットマン』ゴッサムシティのヴィランが日本の戦国大名に![BATMAN NINJA]

https://youtu.be/ydC7M78vwpA

海外でもAmazing!と絶賛!? 一番やりたかった百姓パート



――神風動画にとっては初の長編アニメということで、今回はかなり挑戦だったんじゃないかなと思うのですが。

水﨑:
僕は、無理かもしれない、という想いが片隅にずっとありながらやっていました。これ、途中で降りるケースもあるのかもしれない、と思いながら、90分近くを作るのはちょっとした賭けでした。ただ、社会人なのでやっぱり保険はかけないといけない。それが、前半20分のガジェットを全部出すところで、そこがこのプロジェクトの分岐点です、と念押しの発言をしました。そこまで作れたらあとはギブアップせずに作れると思う、と。半分くらいでギブアップされたら、みなさんのダメージが一番でかいなと思ったので、全体の1/3くらいまでって保険をかけたんです。

そこまで出来るかどうかも自分ではハラハラして見ていたんですけど、すごくまとまって仕上がったので、じゃあ20分作れたら、残り65分もまぁ同じだろう、これを3回やればいいんだって。

――あのクオリティのものをあと3回やればいい、という考えがすごいですね(笑)。

水﨑:
15分とかも経験はあるので、20分は割りと手の届く距離かもしれない、と思ったんです。



――中島さんは出来上がっていくのを見ていていかがでしたか?

中島:
最初に見たのは、アフレコ用のコンテ撮影だったんですが、そのときの百姓のパートを見てビックリして、このコンテ素晴らしいなと思ったけど、よもやこのままやるつもりはあるまい、と思ったらそのままだったので、感動しましたね。オールCGと言っていたけど、こんなこともぶっ込んでくるんだ、と本当に想像のはるか上を行く面白さでした。あのシーンが実は僕が一番やりたかったシーンだったので。

――ああ、そうなんですね。

中島:
プロデューサーにあのシーンが長いから切れ!と言われたけれど、ここを切るなら僕は降りる!って言い張ってやっていたところを、やっぱり水﨑さんはわかってくれていて、すごく挑戦的なシーンにしていただいたので、一番しびれましたね。



水﨑:「土はいい」ってセリフが割りと打ち合わせの初期に出てきて、中島さんがずっと気にかけているシーンだということを目の当たりにしてきていたので、あのパートのためのお膳立てを前後でするくらい、大事にしなきゃいけないと思いました。いろいろなスタッフから、工数や作画の量で切れ切れと言われている中で、「ここは切っちゃダメ」と鉄壁の守りを続けました(笑)。

中島:確かに長いんですよね。でもやりたかったんですよ(笑)。不安でもあったんですけど、アメリカで上映したときに、あのパートが面白いと言ってくれる人も多くて、ホッとしましたね。

水﨑:評判良いですね。Amazing!って大体あのパートのこと言ってますもん。



――あの百姓パートは見た目のテイストもガラリと変わりますが、その構成は最初からあったアイデアだったんですか?

水﨑:
『トムとジェリー』とかって、日本で無理やり30分番組の枠に収めて放送していたときに、真ん中に『トムとジェリー』じゃない実験的な作品が入ってたんですよね。『真ん中作品』と呼ばれているのですが、スパイスが効いていて子どもながらに好きで。あれがあって『トムとジェリー』が面白くて、でも『トムとジェリー』があるから、その『真ん中作品』が面白いという、おにぎりの真ん中の梅干しみたいな。あと『まんが日本昔ばなし』も、2話構成で前半は割りと子ども向けアニメしているんですけど、後半は『もちもちの木』みたいなおどろおどろしい話も出てきて、でも子どもながらに意外とそっちの方が覚えていたりする。

だから、「これだ!」と。そういう異なるものが間に入ってきても、意外と日本人は見慣れている。このスタイルは大丈夫だという自信はありました。

――百姓パートの評判が良いというお話もでましたが、海外での反応は?

中島:
賛も否も、ふざけるな!って反応があって。平均点は5点なんだけど、10点か1点ばかりで5点はない。狙い通りです。

水﨑:アナハイムがお客さんにフルで見せた最初の場で心配だったんですけど、(お客さんから)生卵が飛んでこなかったのが意外でした。

中島:シュワルツネッガーが生卵をぶつけられたときに「ベーコン持ってこい」と言ったと聞いたので、僕らは生卵をぶつけられたら「ごはんを持ってこい」って言って、醤油をかけて目の前で食べてやろう、と。そうすれば、「こんなやつらが作ってるんだったらしょうがない」って諦められるだろうと話していたんですけどね。卵は飛んでこなかった。けっこう狙っている通りに笑って欲しいところで笑ってもらえて良かったです。

日本人がアメコミのヒーローをロボに乗せるのは伝統





――映像も浮世絵っぽい色合いだったりモチーフがふんだんに取り入れられていて、「これ絶対外国人好きだろうな~!」と感じたんですが、意識して作った部分はありますか?

水﨑:
普段、他のお仕事でアニメーションを作るときって、今回のような色合いは使わないですよね。ちょっと過剰に日本を前に押していった部分はあります。よくハリウッド映画に出てくる日本描写ってちょっと間違っているじゃないですか。あれは面白いと思っているんですけど、それをさらに拡大解釈して僕らが発信することで日本が誤解されていったら面白いな、というくらい、少し過剰に表現しました。あなたは日本をこう思っているでしょ?と自虐しているというか。

中島:君たちの誤解は間違っている、本当の日本人が日本人を誤解するとはこういうことだ、というのを示そうという気持ちでしたね。



水﨑:今は映画や作品を観て、SNSで意見を同時に交わしながら中継のように観るスタイルが世界的に標準化している中で、「いやいや、これは彼らがわざとやっている」と解説してくれる英語圏の人がいるだろうと見越してやってはいるので、おそらく情報が交換されていく内に、我々の真意も昔よりはある程度浮き彫りになる時代なんじゃないかなと思います。だから、あえて作品内でツッコミも入れず、お客さんにツッコんでもらって何回も観て、人の解説を聞いてまた観たくなって、というような、くり返し観ることを想定した部分はあります。

中島:やっぱり過剰に拡大解釈した方がアメコミなので楽しいし、その過剰さが我々の武器ではないか、と思いましたね。

水﨑:出たアイデアに対して否定的な意見をするのではなくて、みんなそれに乗っかっていく。誰も否定しないから、そろそろ乗っけすぎて崩れるからやめよう、みたいな(笑)。

――それをまとめるのは大変じゃなかったですか?

水﨑:
僕らより、DCを説得しに行ったワーナーの担当者が一番大変だったんじゃないかな。

中島:「とにかく城が合体したり、サルが合体して戦うんですよ」というのを英語で担当者が言っていて、「何を言っているのかわからないと思うけど、そういうことなんです」と伝えるのが一番大変だったらしいです(笑)。

水﨑:でも、人間や動物のイラストが集まって1つの顔になっている作品が昔のアート表現であるから(寄せ絵)、「サルが合体して」と言われてもなんとなくピンと来るのは、そういった歴史的なものがあるからですよね。あ、あれか!みたいな。

――そう……ですかね(笑)。でも、言葉で聞くと理解が追いつかないですが、映像で観るとそんなに違和感はないですもんね。

中島:
そう!? それは良かったです(笑)。

水﨑:あまり聞かない意見ですね、観ると納得するって(笑)。ちょっと負けた気がしますね。

中島:そうね、みんな観てもあんまりわかってない顔してるもんね。



――今回、アイデアを出し合っている中で一番盛り上がったものは?

中島:
里見プロデューサーが、日本人はアメコミのヒーローをロボに乗せるって海外の人達は思っているはずだから、まずロボットを出しましょう!って言ったんですよね。

里見プロデューサー:(東映の日本実写版)『スパイダーマン』の伝統に乗っかろうと言ったんです。

中島:おっしゃる通りでございますね、という話で、じゃあロボやりましょうとなったら、水﨑さんが目をキラキラ輝かせながら、「じゃあ五城合体ですね」と言い出して。その五城合体のロボにバットマンがどうやって勝つんだと言ったら、僕が「サルが合体するんです」と話して出来ました。そのシーンが一番盛り上がりましたね。

あとは、「ガジェットを出すなら前半で一気に全部出しちゃおう」と、どんどんマトリョーシカ的に出てくるのをやろうという感じで、誰かが1つアイデアを出すと次々に「だったらこうやろう」の連続でした。バイクがあれば、それがアーマードスーツになるのは、それは日本の伝統だからって(笑)。だったら、もう本家にデザインしてもらいましょうということで、荒牧伸志さんにお願いしました。



水﨑:
荒牧さんとは我々は元から繋がりがあったので、「バットポッドをデザインして欲しい」とだけ説明してからお打ち合わせに行って、「実はこのバットポッドを着たいんですよ……、あとは察してください」と言ってお願いしました(笑)。

中島:そういう日本のアニメ伝統の叡智を結集しました。



とんでもシーンでも、ちゃんとした理屈が考えられていた!



――ガジェットでこだわった部分を1つ教えてください。

水﨑:
操作系統でいうと、ガジェットを操作する時に、バットマンの周りにUIみたいな映像がふわっと表示されるんです。あれは記号としてやっているだけで、本当はホログラムが浮かんでいるわけじゃなくて、バットマンの目にはああやって見えているというもの。実際にあの場にふわっと浮かんでいるものじゃないんです。

スタッフから、あの光の影響を周りに出すかと問われた時に、「あの光は周りに影響しない。なぜかと言うと、あれはバットマンだけに見えている」と伝えました。ホログラムとして実際に浮かんで発光していると、バットマンの顔が照らされたりしなきゃいけないので、ちょっとした言い訳です(笑)。UI周りはなんだかんだで力を入れているところです。



――小ネタが満載だと思いますが、見逃してしまいそうな注目ポイントは?

中島:
僕が好きなのは、ゴリラ・グロッドが温泉で日本酒を飲んでいて、つまみに切ったバナナが用意されているところや、笛の吹き方が間違っているところ。

水﨑:ジョーカーに紙芝居を見せているシーンは、よく見るとちゃんとストーリーが書いてあって。里見さんが書いたんですよね?

里見プロデューサー:俺が書いた。バットマンの紙芝居を書いてくれと言われて、中島さんにと言われたけど申し訳なくて、発注できない~と思って自分で書きました(笑)。

水﨑:「バットマンは建前とキレイ事が大好きでゴッサムのみんなから嫌われています」とか書いてあったり(笑)。それを、ちゃんとジョーカーは水飴なめながら見てる。

中島:後半の茶室のような馬車のシーンも、バットマンは日本の文化をわかっているようでわかっていないから、へりを跨いで座っているんです(笑)。



――では、ずばり一番大変だったことはなんでしょう?

中島:
サルとコウモリの塊が、なぜ物理的な攻撃ができるのか。その理屈は一応考えていて、あのサルたちの甲冑の中には時空震シンクロシステムというものがあって、それは時空震コンバータが発動したときにそのエネルギーをこっちも共振して発動できるんです。だから、五城合体したときだけ、あのサルたちの甲冑がパワーを持ってエネルギーのフィールドが作れるので、パンチも打てるんです。ゴリラ・グロッドがちゃんとカウンターシステムを用意していたということなんですよ。

水﨑:たしかにそのあたりかもしれないですね。サルの中には棒を持っているやつがいて、それが骨となって一塊になれるんじゃないか、とか。黄色い鎧のサルたちの塊がグレーになる理由は?と聞かれて、サルたちの背中の鎧が日本の昔ながらの木のおもちゃの「ぱたぱた」(ぱたぱた板返し)あるじゃないですか、その仕組みになっているから、色が変わるとか。わざわざ「ぱたぱた」を買ってきて黄色とグレーに塗ってスタッフに見せましたもん(笑)。



水﨑:城が合体するときの構造もあの時代で物が浮遊したらおかしいから、アーカム城のゴリラの城はアンカーを打って松葉杖のように持ち上げてから、その松葉杖のレールの中を走っていって、弓矢でロープを打って手繰り寄せてくっついていく。あの時代、あの状況でギリギリ出来そうな努力はしています(笑)。

――いろいろと説明が考えられているんですね。たくさんのお話、ありがとうございました!

本編映像:『ニンジャバットマン』城起動シーン[BATMAN NINJA]

https://youtu.be/Lg-Ncc2hs3A

本編映像:『ニンジャバットマン』冒頭映像解禁[BATMAN NINJA]

https://youtu.be/CQycfYgSG3A


ニンジャバットマン(米題:BATMAN NINJA)

【STORY】

現代の犯罪都市ゴッサムシティの悪党たちがタイムスリップし、群雄割拠する戦国時代の日本。戦国大名となった悪党たちがこのまま自由に暴れ続ければ、日本だけでなく世界の歴史すらも変わってしまう!

絶望的な乱世で、現代テクノロジーからも切り離されてしまったヒーロー、バットマンは世紀の歴史改変を阻止することができるのか? 日本と世界の未来をかけた、時空を超えた壮大なバトルの行方は!?

眼を見張る映像×前代未聞のストーリーで日本が世界に放つ、戦国タイムスリップ・アクションエンターテイメント!

【キャスト】山寺宏一、高木渉、加隈亜衣、釘宮理恵、子安武人、田中敦子、諏訪部順一、チョー、森川智之、三宅健太、梶裕貴、河西健吾、小野大輔、石田彰、大塚芳忠

【スタッフ】監督:水﨑淳平 脚本:中島かずき キャラクターデザイン:岡崎能士 音楽:菅野祐悟 アニメーション制作:神風動画

【公式サイト】

http://wwws.warnerbros.co.jp/batman-ninja/


Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics. (C)Warner Bros. Japan LLC

―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』

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