「女の子は泣いていても悲しいとは限らない」とカリスマホストは言った|辛酸なめ子

女子SPA!

2018/6/14 08:46



【いまどきの男を知る会 ファイルNo.13 歌舞伎町のホスト】

「イケメンホストとは何か――存在の美学としてのホストの<これから>――」なる知的なタイトルのイベントが歌舞伎町ブックセンターで開催。明治大学講師の関修先生がカリスマホストを取材した新書『イケメンホストを読み解く6つのキーワード』を出版されたのを記念したもののようです。

進行は関先生と、歌舞伎町ブックセンターのオーナーで元カリスマホストの手塚マキさん。ゲストはカリスマホストで今は経営側に回っている葵未来さん、獅龍仁さんといったカリスマなメンバーです。ホストクラブだったらお話しするのに何十万円もかかりそうな方々とのトークが2000円で聞けるお得なこのイベントで、ホストの本音について探ってみました。

◆冷静と情熱。対照的なホスト2人

「授業で学んだことをホストに生かしていました。いかに自分をブランドする化が重要です」と冷静に話す葵さんは、大学院出身のインテリ系で、スーツをカッチリ着こなし、ダイヤのピアスとさり気なくつけたネックレスが素人でない感を醸し出しています。

「頭が悪いんで全部感情で答えるんで!」とワイルドに語る獅龍さんは、短髪でアディダスのジャージからタトゥーをチラつかせる威圧系イケメン。十代の頃からホストだったそうです。正反対のタイプですが、二人ともゆるぎない自信と経済力を漂わせる日本男児。カリスマホストには、素人のイケメンやジャニーズとも違う、闇と光が渦巻く独特のフェロモンがあります。

ホスト男子は社会の表も裏も知り尽くしているからか発言が深く、心に刺さります。中でもホストの存在の美学を感じさせた発言は……。

「中身ない奴はすぐ切られます」「自分が楽しい人間で深みのある人間じゃないとついてきてくれない。うわっつらの人間だったらうわっつらの関係で終わる」「全部に関して先頭を切っていかないと大物になれない。結局気合です」と、ホストの哲学を語った獅龍さん。

一方、「世界で一番おしゃれなのがホストだと思っています」と、断言したのは葵さん。ホストはトレンドリーダーだと自認していて、ダイヤのネックレスを「これはハリー・ウィンストンより人気のグラフというブランド。まだそんなに知られてません」とあとで見せてくれました。値段は……シャンパンコール三十回分くらいでしょうか。

獅龍さんは「ユニクロの黒パンに白T着てても自分は売れるんで」と自信を見せつつ、「昼の仕事をしていると買えないような車や時計を一括で買えるのがホストの魅力。でも俺は一番のファッションは肉体だと思ってます」と袖口からタトゥーをアピール。

二人とも金銭的余裕がオーラを増強させています。そこまでなれるのはほんの一握りだと思われますが……。

◆売れるホストは男に評価される男

関先生は「ホモ・ソーシャルな男社会」とおっしゃっていましたが、体育会系な縦社会で、人情とか仁義が息づく世界のようです。手塚さんも「ホストは猿山のようにボス猿がいて、男の絆を大切にする社会。男に評価される男が残っていきます」と同意します。

「自分は情に厚いだけの人間なんで」と言う獅龍さんは、「尊敬するのはグループ会社の社長です。何があっても守ってやると言われて、かっけーと思った」と、男の世界を大切にしています。やはり同性に信頼されるタイプがホスト界で生き抜けるようです。

対して葵さんは「自分の上にいる人は必ず抜いて頂点に立とうと思ってるんで」と言い放ちました。クールな見た目と時々出るオラついた発言のギャップがいいです。

◆イケメンのいるバーとホストクラブの差は?

ホストの敷居が低くなってきた今、どのように差別化するべきか? という議題も出されました。

獅龍さんは「お金を稼いでいるのがホストだと思うんです。最低でも3桁、500万円から。イメージでは女の人からお金を巻き上げて稼いでいる、というのがホストかもしれません。でも俺は傷つける嘘はついてこなかった。売れてえ、勝ちてえ、負けたくないという気持ちを応援してもらって、ここまでのぼりつめました」

と、生々しいお金の話も野望に絡めてさらっと語りました。

葵さんは、「ホストならではのスキルはシャンパンコール」だと語ります。いわば伝統芸能のようなもの。

「上品なお客様の時はコルクをはじく時もスッと抜きます。騒ぎたい気分のパリピのお客様の時はパーンと抜きます。泡がシューッてなってウェーイ! って言うんです。僕は店舗をオープンした時、シャンパンコール日本一のお店にしようと思い、毎日練習させました。毎月新しいシャンパンコールを考えたり、DJブースも設置しました。あと「枕」「色恋」とか夜っぽいワードは使わず、心地よく聞けるコールをやっています」

そこまで考えてくれて練習までしてるのなら、10万円とかかかっても良いような気がしてきます。ホストの方々の説得力ある語り口調に次第に洗脳されていきます。

ちなみに営業スタイルには「友営」と呼ばれる「友達営業」と「色恋営業」があるそうで、「友達営業を求めているお客さんには逆に色恋営業をしかけて、別の楽しさを知ってもらいます」と葵さん。魔性の男子は油断できません。

◆「女の子は泣いていても悲しいとは限らない」

質問コーナーでは、ホストで売れていないと電話が止まったり健康保険が払えないという格差の話題も出ました。獅龍さんは次のように言います。

「言ってる意味すごくわかります。正直この業界にきれいごとはないです。踏まれていく人間が多い業界です。踏まれても立ち上がれない人間はそれまでだと思います。お金と引き換えに、気力、体力を削らないとならない業界です。仕事が終わって帰って早く寝て、何も考えずに出勤して、口先だけで病んだっていう人間は正直いなくなればいいと思います」

強い眼差しで語りました。地道な営業など人一倍の努力で勝ち残ってきた自負を感じさせます。まさに気合いです。

葵さんの話も印象的でした。

「お客さんに高級ソープ嬢がいました。体を売ってまでなんで、と言う人がいましたが、自分が納得してお金を使う分には問題ないと思う。第三者がかわいそうと言うのは失礼です。女の子は泣いているからといって悲しいとは限らない。女の子は不思議です。泣きながら3本目のシャンパンを入れている時の自分が一番かわいいとか思ってたりしますから……」

百戦錬磨のホストを持ってしても女心は不可解だそうです。その女性へのわからなさが畏敬の念になって、ていねいな接客につながるのかもしれません。

獅龍さんの最後の言葉は万能感にあふれていました。

「言いたいことは、自分が主人公なんで。自分がルフィーなんで」

「ONE PIECE」ちゃんと読んでないですが、十分伝わるものがありました。

歌舞伎町の帰り道、「ホストどうですか~」と声をかけられましたが、一流のホストを間近で見てしまったので、もう他のホストのキャッチなどは耳に入りませんでした。

<文&イラスト/辛酸なめ子>

【辛酸なめ子 プロフィール】

東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。

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