「一番置きにいってた」マツコ・デラックスがテレ東・名物プロデューサーに苦言のワケ

日刊サイゾー

2018/6/13 21:00


 一度は栄華を極めた一発屋タレントが「あの人は今」的な番組に出演。全盛時の収入を告白するや、司会者やパネラー陣が「すごーい!」とリアクション。よくある光景だが、正味の話、「すごーい!」と驚いているタレントたちのほうが、それ以上の収入をコンスタントに稼いでそうなのは明らか。

番組を成立させる意味合いもあるだろうが、自分の立ち位置を落とし、庶民派として振る舞う中で享受できるメリットは少なくない。嫉妬の対象にならないし、主役に弓を引く座席を獲得できるし、判官びいきを受けることさえ許される。そして、何より異端の立ち位置を確保できる。狙われるより狙う側のほうが、絶対に強い。パブリックイメージは弱者だけども、実態はひそかに強者。この二段構造がクセものなのだ。

マツコ・デラックスの感性を育んでいたテレ東


『無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~』(テレビ東京系)の第5弾が6月10日に放送された。事前に企画内容を伝えず、無理矢理4つの企画をマツコ・デラックスにやってもらうという「無理矢理、マツコ。」プロジェクト。これを振り返り、反省しようというのが今回の趣旨だ。

実はマツコ、同局への出演は12年ぶりだそう。とはいえ、敬遠していたわけではない。局のスタッフも覚えていなかった『レール7』なる番組を“思い出深いテレ東”として回顧し、“ロケに強いテレ東”の原点として『いい旅・夢気分』を称賛するのだから。

「あと、キャスティングの妙ね。私が一番好きなのは小川眞由美さんと李麗仙さんっていうね。『どういうつもりで作ってるんだろ、スタッフは?』っていう。(2人は)全然、楽しそうじゃないのよ。淡々とやるわけよ。殺伐としてるわけですよ。そういう裏見をする癖みたいなのを私につけてくれたのは、やっぱりテレ東なんじゃないかな」(マツコ)

まさに、地上波キー局の異端。企画内容とキャスティングは他局へのカウンター的な色合いが強く、好事家から判官びいきされる個性にまでなっている。

テレ東のアナウンサー・狩野恵里は、2016年に発表した著書『半熟アナ』(KADOKAWA)で、自社について以下のように語っている。

「他局の方から言わせると、なんでこれが数字取るの!? というような番組が多くあります」

「予算も人数もいつもギリギリ」

局に所属するアナウンサーでさえ、そんな認識なのだ。そういえばマツコ、番組内で“テレ東の女性アナウンサー像”に対する持論を語っている。

「テレ東の女子アナの採用って、一番上手よね。割り切ってるもんね。『ここはキャバクラだ』って思って採ってるから。他局は中途半端に賢い奴採ろうとか思ってさあ。それこそ、大橋(未歩)さんくらいから変わった。急にキャピキャピしだして、今となっては民放で一番女子アナ採るのがうまい局よ。典型的に水商売の顔してる子が多い。『女子アナに知性なんていらないんだ!』『顔だけ良ければいい!』っていうね。いいのよ、それで。テレ東の女子アナが一番かわいい」(マツコ)

異端どころか、いまや民放トップの陣容を誇るアナウンサー勢。これ、決してマツコだけの考えではないはずだ。実話誌でもインターネット上でも、テレ東女子アナへの評価は一様に高い。

■もう、テレ東は判官びいきされるテレビ局ではない


 女子アナだけではない。特に、そのニッチな企画力は、好事家だけでなく一般層にも浸透中。今では、視聴率で他局を凌駕することも珍しくなくなった。だからこそ、時代の寵児・マツコとテレ東の企画力の掛け合わせは魅力的だったのだ。結果、どうなった? そのへん、本人がしっかり振り返っている。

マツコが高評価を与えたのは、老若男女にマツコを20分100円で貸し出す『レンタルマツコ!マツコ、20分100円でレンタルはじめたってよ』と、「もしもマツコが死んでしまったら……」と架空の設定のもとマツコを偲ぶ『マツコ、昨日死んだってよ。』の2本だ。

「私が日頃見ていて面白そうだなって思うテレビ東京の王道をやってくださいました。自分がテレ東に出てるんだなぁっていう実感を得られる番組」(マツコ)

一方で、マツコを落胆させた企画も存在する。それは、出題者を務めるマツコが解答者の味方をして賞金100万円をあげようとする番組『マツコがマネーをあげたいクイズ』だ。

「一番、置きにいってたね。次のクールから特番ソフトにしようとしてんなっていうね。やっててイヤ~な感じがしました」(マツコ)

実はこの企画のプロデューサーを務めたのは、テレ東の看板バラエティ『ゴッドタン』や『キングちゃん』等を制作し、同局の尖ったイメージを担う鬼才・佐久間宣行である。この日のスタジオには話題の佐久間Pも姿を見せており、苦言を呈すマツコと佐久間Pは対面。2人は言い合いを展開した。

佐久間「次のクールに特番ソフトでやれるような番組って、別に悪くないじゃないですか」

マツコ「でもさ、私がアンタと仕事しようと思った時に、そんな番組を作ってほしくてこんなテスト番組やりますか? だったら、もうちょっとまともな人とやりますよ!」

佐久間「そこ、ボタンの掛け違いです!」

マツコ「ボタンの掛け違いって言ってる奴、一番嫌い!」

テレ東への思いが強かったからこそ、吐き出される思いの丈は熱い。

「これね、本当、一番の失望! 佐久間宣行が私にこんなクイズ番組をやらせたっていうね。始まる前に佐久間さんがやるって聞いた時から、一番楽しみにしていたかもしれない。ああいう、ウンコ投げつけるような番組(『ゴッドタン』のこと)作ってるわけじゃない? あんなひどい番組を作ってる人だから『私、ウンコ投げられちゃうんじゃないか?』って、そういう期待がありつつやってるから。あんな鬼畜プロデューサーが、なんとなくペロペロって書いた企画みたいな、そんなのなんで私にやらせるの?」(マツコ)

以前より抱いていたテレ東への印象と期待値があらわになる苦言だ。そして、今回の経験は、マツコが抱くテレ東の印象を上書きしてしまった。

「メジャーになるっていうことは、どんどん丸くなるってこと。私だってテレビ出始めた頃より丸くなっちゃったからさ。権力にねじ伏せられたオカマを、もう一度ドキドキさせてくれるのはテレ東なんじゃないかっていう淡い期待があったわけですよ」

「私、テレ東のことを、どこかで判官びいきしていたんだと思うの。弱者であるがゆえに応援しようという色眼鏡で見ていたわけですよ。でもね、今回仕事をやってみて、やっとわかりました。もう、立派なテレビ局ですよ。変わらないです、ほかの局と」

変わらないどころか、今、若者から最も支持を集めている局はテレ東という印象さえ、筆者にはある。尖った企画力を誇り、他局が拝借することも多い。独自の方向性は、もはや数字につながっている。加えて、女子アナがかわいい。制作費が少ないのも、なんだか『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』みたいでカッコいい。その上、異端のイメージから判官びいきまでされている。実態は弱者ではないとしても、だ。

今回のマツコ・デラックスとのコラボは、市井に対し、少し種明かしをしてしまった感がある。

(文=寺西ジャジューカ)

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