時代劇に革命到来!? 中島かずき脚本『ニンジャバットマン』と綾野剛主演『パンク侍』に驚愕!!

日刊サイゾー

2018/6/13 20:00


 これは時代劇革命の勃発と言っていいんじゃないだろうか。お約束の数々、様式美で成り立っている時代劇は長年にわたって日本人に親しまれてきたジャンルだが、近年は民放でのテレビ時代劇のレギュラー枠が消滅するなど、すっかり古くさいもの扱いされている。そんな風潮を覆し、パターン化された時代劇の常識を逆手に取った斬新すぎる劇場作品が次々と公開される。一本目はアメコミ界のスーパーヒーローであるバットマンが、戦国時代の日本へタイムリープし、戦国大名になりすましたジョーカーたちと激突する長編アニメ『ニンジャバットマン』。もう一本は、綾野剛、北川景子、染谷将太、永瀬正敏、浅野忠信ら豪華キャストを擁する実写時代劇『パンク侍、斬られて候』だ。どちらも、従来の時代劇のイメージを180度転回させる、怪作すれすれの快作となっている。

ティム・バートン監督の『バットマン リターンズ』(92)やクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(08)などの実写映画で知られるDCコミックの人気ヒーロー・バットマンだが、戦国時代の日本を舞台にした『ニンジャバットマン』は宿敵ジョーカーやその愛人ハーレイ・クインらとソードアクションを繰り広げる奇想天外のアニメーションだ。キャラクターデザインは『アフロサムライ』の岡崎能士、映像はテレビアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのオープニングを手掛けた水崎淳平監督。日本のトップクリエイターたちによるコラボレーションとなっている。

ビジュアルだけでなく、ストーリーも相当にぶっ飛んでいる。現在の犯罪都市ゴッサムシティからジョーカー、ペンギン、ポインズン・アイビー、トゥーフェイス、デスストロークら凶悪犯たちが一斉にタイムリープし、それぞれ尾張、甲斐、越後、近江、陸奥と各地に割拠する戦国大名に入れ替わって暴れ回っていた。このまま放っておくと日本だけでなく、世界の歴史まで変わりかねないと、バットマンは日本刀を手に戦うことに。城下町をバットモービルが疾走し、天守閣ではジョーカーとバットマンが火花を散らして斬り結ぶなど、かつて見たことのない刺激的なアクションシーンが繰り広げられる。

こんなクレージーなシナリオを書き上げたのは、脚本家の中島かずき。「劇団☆新感線」の座付き作家であり、脚本提供作『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14)は“泣ける映画”として話題を呼んだ。新感線の脚本を書き下ろす一方、平日は「双葉社」の社員編集者として勤め、『クレヨンしんちゃん』の原作者・臼井儀人の編集担当だった時期もあった(双葉社は2010年に退社)。『逆襲のロボとーちゃん』には不慮の事故で亡くなった原作者への熱い想いが込められていた。今回の『ニンジャバットマン』は、中島かずきが昔から愛読していたという山田風太郎(『魔界転生』!)や半村良(『戦国自衛隊』!)の伝奇活劇から受けたインスピレーションを存分に爆発させたものとなっている。新感線の舞台に立った役者たちがギラギラと輝くように、ジョーカーやハーレイ・クインらも実写映画以上に生き生きとした悪党ぶりを発揮している。全編が見せ場となっている、超ハイテンションムービーなのだ。

■世界崩壊の瞬間をオールスターキャストで描く


 綾野剛主演の実写映画『パンク侍、斬られて候』も、かつてなかった斬新すぎるアクション時代劇だ。芥川賞作家・町田康の同名小説を、綾野剛が出演した『シャニダールの花』(13)、『ソレダケ/that’s it』(15)の石井岳龍監督が映画化したもの。町田康が作家デビューする以前、ロックミュージシャン・町田町蔵として活動していた頃、石井岳龍(当時は石井聰亙)監督はロックオペラムービー『爆裂都市 BURST CITY』(82)に俳優として起用しており、2人はそれ以来パンク魂を共有しあう仲。パンクバンド「グループ魂」として音楽活動もしている宮藤官九郎が脚本を手掛け、町田康の独特な饒舌文体をそのまま活かした形で映像化に挑んだ。

テレビ時代劇(の再放送)をこよなく愛する町田康が2004年に発表した『パンク侍』は、題名どおりに超パンクなストーリーだ。流れ者の浪人・掛十之進(綾野剛)はカタブツの藩主(東出昌大)が治める黒和藩に士官しようと、新興宗教「腹ふり党」の危険性を訴える。掛の口からでまかせだったはずの「腹ふり党」だが、すでに解散状態にあった「腹ふり党」の元幹部・茶山半郎(浅野忠信)を引っ張り出したことから、茶山や謎の美女・ろん(北川景子)を中心にした「ネオ腹ふり党」は本当に人気を集め、大暴動へと発展していく。腹ふり衆たちが腹を振り振り、町を練り歩くうちに暴徒化していくシーンは異様な熱気が溢れている。

時代劇で新興宗教をネタにしていることからして珍しいし、さらに『パンク侍』がユニークなのは、メタフィクション的展開となっていく点だろう。この世の無意味さを唱える「ネオ腹ふり党」と、掛たち黒和藩側は全面対決することになるが、戦いは猿軍団やエスパーを巻き込んで過激化し、ついには世界が崩壊していくことになる。時代劇というジャンルムービーの形を借りて、石井監督は世間の常識から物語そのものまで全てをぶっ壊してみせる。ナンセンスギャグが散りばめられ、スラップスティックなクライマックスへと雪崩れ込んでいくあたりは、日本SF界の巨匠・筒井康隆の小説に通じるものを感じさせる爆裂時代劇だ。

時代劇は古くさくて、退屈……というイメージを根底から覆した『ニンジャバットマン』と『パンク侍、斬られて候』。日本の時代劇シーンに、新しい夜明けが訪れようとしている(かもね)。
(文=長野辰次)

『ニンジャバットマン』
監督/水崎淳平 脚本/中島かずき キャラクターデザイン/岡崎能士
声優/山寺宏一、高木渉、加隈亜衣、釘宮理恵、子安武人、田中敦子、諏訪部順一、チョー、森川智之、三宅健太、梶谷貴、河西健吾、小野大輔、石田彰、大塚芳忠
配給/ワーナー・ブラザース映画 6月15日(金)より全国ロードショー
Batman and all related characters and elements are trademarks of andC)DC Comics.C)Warner Bros. Japan LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman-ninja

『パンク侍、斬られて候』
原作/町田康 脚本/宮藤官九郎 監督/石井岳龍
出演/綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司
配給/東映 6月30日(土)より全国ロードショー
http://www.punksamurai.jp

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