ビーチバレーの魅力は美人アスリートを間近で堪能できるだけではない

日刊SPA!

2018/6/13 15:51



今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第62回~

フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

今回訪れましたのはビーチバレーです。バレーボールと言えば、日本は「東洋の魔女」などの栄光の歴史を持ち、お家芸として人気も高い競技です。東京五輪では有明アリーナという新会場を建て、バレーボールを盛り立てていく構え。見たいことは見たいけれど、きっと競争率も激しいんだろうなぁ……と、そこで浮上するのがビーチバレーです。

ビーチバレーについて、そういうものがあることは知っているけれど、見たことはないという人がほとんどでしょう。そして、よくよく考えると持っている知識が「浅尾美和」だけという人も多いことでしょう。水着目当てのオジサンでにぎわっている可能性もありますが、少なくともインドアの6人制バレーボールよりは空いているでしょう。いつもより「穴場」という響きもちょっとイヤらしくなりますが、ビーチバレーの穴場感をチェックしておかなくては。

訪れたのは、大田区にあります大森水辺スポーツ広場・ビーチバレー場。海に面した公園の一角に、観客席を備えたメインコートを含むビーチバレーコート4面を備えたビーチバレー専用の競技施設です。東京五輪での試合会場はこちらではなくお台場の潮風公園に設けられますが、ビーチバレーの賑わいを探るには申し分ない会場です。

目の前に広がる景色に早くもテンションが上がります。白く輝く砂。青いバンドで区切られたコート。選手たちが座るベンチは渚の白いデッキチェアーで、関係者が詰めるテントは青と白のリゾート仕様。ここは本当に大田区なのだろうか、ハワイとかじゃないのか。海外にでもやってきたような気持ちになります。

この日の試合は今夏インドネシア・ジャカルタにて開催されるアジア大会への派遣ペアを決めるという位置づけのもの。国内トップペアが一堂に会し、男女それぞれの上位2チームに与えられる出場権を争います。

男子ではビーチバレーで2度の五輪出場歴がある白鳥勝浩選手、インドアの日本代表主力選手として活躍した石島雄介選手や越川優選手など実績・知名度ともに高い選手たちが、それぞれにペアを組んで出場しています。

また、女子では週刊誌のグラビアで「恵体」ぶりが話題になった坂口佳穂さんのペアも出場。豪華な顔ぶれです。

https://twitter.com/KAHOSCOAT/status/977926257273786368

◆人気選手を圧倒的な近さで観戦

ところが、いざ訪れてみると大会の重みや顔ぶれの豪華さに比べて、とてものどかな雰囲気。観客から選手までの距離が非常に近く、表情まで見てとれます。さらに運営面でのセキュリティも写真撮影以外については非常に緩やかで、選手と観客が同じ道を通ってスタンドに入るようなところまで。

インドアでは大きな体育館のスタンドから遠く眺めたような選手が、すぐ自分の横を歩いていき、その辺の水道で身体についた汗と砂を流しています。穴場競技では一般的にセキュリティの概念というのが薄いものですが、ビーチバレーはそのなかでもかなりののどかさです。

あまりにのどかで、公園の売店でカレーを食べていたら、隣のテーブルで「さっきまで試合に出ていた選手たち」がコーチからめちゃめちゃ説教されている場面にも遭遇したほど。サッカー日本代表のハリルホジッチ前監督なら絶対に許さないであろう「チーム戦術の外部流出」が公園の売店で平然と行なわれていました。

かき氷を食い散らかす子どもと、カレーをむさぼる僕に挟まれて、国内トップ選手がめちゃめちゃ説教されているというのは、なかなかに新鮮な体験でした。対戦相手に聞かれるよりは、売店の客に聞かれるほうがマシである……そんな高度な判断もあったのかもしれません。

実際の試合でも、その近さ・のどかさというのはとても気持ちを盛り上げてくれます。まるでコンサートの最前列のような近さで見る選手のプレーはダイナミックで迫力満点。観客によるプレーの撮影は携帯電話のカメラのみOKというルールでしたが、スマホで撮っても豆粒にならない、圧倒的な距離感の近さです。

ビーチバレーでは特に女子選手の水着について厳しい規定があり、基本的には「露出度を高くする」方向で定められています。選手が好んで着ているかはわかりませんが、「パンツのサイドの深さは7センチ以下」などと学校の校則とは真逆の考え方で、短くするほう短くするほうへと誘導しているのです。

僕はもちろんそれを「エッチな目的ですね!」と解釈していたわけですが、改めて実戦でそれを見ると、エッチな目線を超えたリゾート感というものが広がってきます。南国リゾートのような雰囲気で競技をプロデュースしようとするなら、規程で縛りつけてでも大胆に肌を見せる水着がちょうどいい。

ビーチでスーツを着ていたら違和感があるように、リゾート感あふれる競技会場では、むしろ「露出度が高い水着」のほうがカッコイイし、似合っています。大相撲だってほとんど尻が出ていますが、まわしの下にパンツをはいたら急にカッコ悪くなるじゃないですか。まさにその感覚です。

その「ビーチリゾート感」を作るために、運営側もわざわざ白人のナビゲーターを用意しまして、スピーカーから洋楽を流しつつ、英語混じりのアナウンスで場内実況をするのです。常磐ハワイアンセンターばりに、リゾート感の演出にこだわった運営姿勢は、ここまで徹底するならエッチな意図も完全に包み隠せるな、という納得感があるものでした。

◆攻守の駆け引きが面白い!

この距離感はもうひとつ大きな楽しみを観戦にもたらしてくれます。それが選手たちの「声」。ビーチバレーは2名の選手によるペア単位でチームが組まれますが、コートの広さはインドアより縦横1メートルずつ小さいだけの片面「8メートル×8メートル」のサイズ。それだけにひとり当たりの受け持ち面積は当然広くなり、相互の連携もより重要になってきます。そこで活きてくるのが相互の声掛けです。ボールを追っている選手に、パートナーが的確に声を掛けて次のプレーを指示し、少ない人数で効果的なプレーを繰り出せるようにしているのです。

特に頻繁に声掛けが行なわれるのはスパイクを撃つ場面。トスを上げた選手は、スパイクを撃つ選手に対して「ブロックの有無」や「相手の位置取り」を声で伝えます。ブロックがないぞ、フリーで撃てるぞ、というときは「ノーバディ!(ブロックがいないぞ!)」。相手の守備の位置取りについては「クロス!(斜め方向が空いてるぞ!)」「ライン!(正面方向が空いてるぞ!)」などといった具合。ペアによってはコレを「右!」「左!」と日本語でやり取りするケースも。

この声によって攻撃側の狙いがわかるという観戦時の面白さが生まれつつ、さらに守備側との駆け引きを楽しむことができるという面白さも生まれます。攻撃側が「右!」と声を掛けて右に撃たせようと 指示を出したところを見計らって、守備側プレイヤーが位置取りを変更したりするを見て楽しむわけです。

攻撃側A:「右!(右に撃て!)」

攻撃側B:「了解!右に撃つぞ!」

守備側A:「相手は右に撃つぞ!」

守備側B:「わかった、そっちに移動する!」

攻撃側A:「相手が動いた!やっぱ右じゃなくて左!」

攻撃側B:「もう遅いわ!!」

といった具合のぐじゃぐじゃのやり取りが始まることも。

「右……じゃなくて左!」と途中で変更するパターンや、スパイクを撃つ選手が指示を無視するパターン、守備側の選手が一度フェイクを入れてから反転するパターン、ブロックに跳ぶと見せかけて跳ばずに守りを固めるパターン、強打と見せかけてブロックを山なりに越えるフェイントなどもあり、声と動きとで互いに揺さぶる攻防は見ている側も気が抜けません。

砂浜でのプレーであるうえに、ネットの高さはインドアと変わっていないことで、基本的に動きは遅く、ジャンプは低いのがビーチバレーの特徴。角度のあるスパイクをズドンと打ち込む場面は少なめです。しかし、そんな一見するとデメリットである要素が、観衆も「駆け引き」を楽しめるゆったりとしたプレースピードにつながっており、いい効果をもたらしています。

各チームふたりしかいないことで、攻撃専門・守備専門といったペア内での役割分担も難しく、それもまた駆け引きの面白さにつながっています。

たとえば石島雄介選手のペアとの試合では、インドアでもエースとして活躍した長身かつ強打が持ち味の石島さんをどうやって封じるかを相手チームは考えてきます。インドア的な考え方では、石島さんの強打を封じるには石島さんをサーブで狙い、スパイクへの準備時間を削るというのが基本線です。ところがビーチバレーでは、1チームふたりの構成ですので、サーブで狙った選手は1タッチ目のレシーブと3タッチ目のスパイクをやってくることが決まってしまいます。むしろ、2タッチ目のトスを受け持たせるように、強打の選手をあえてサーブで狙わないといった考え方も生まれるわけです。

そういった「相手に何をやらせて、何をやらせたくないか」の意図がハッキリとプレーで示されるのも、ビーチバレー観戦の面白さと言えるでしょう。駆け引きを堪能するという意味では、バレーボール以上に楽しみやすい競技です。

競技としては面白く、会場の雰囲気も最高なのですが、穴場感が強いのもいい感じです。この日の客入りは100人ちょっといったところ。身内と思しき人も多く、石島選手の奥さんでしょうか、試合中にずーっと「ゴッツ!ゴッツ!」と石島さんの愛称を叫んでいる人の姿も。試合を終えた選手には知り合いが群がり、家族慰労会のような感じにさえなっています。

サインの求めに応じる選手、記念撮影に応じる選手、ついには「今日着ていた支給品のウェアをこの少年にあげたいのですが」なんて相談を選手が運営関係者に持ちかける一幕まで。「絶対にメルカリで売るなよ」と言いながらウェアをプレゼントする光景は、とても微笑ましく、和やかなものでした。

この日は入場無料の大会だったこともあり、運営サイドもノンビリしたもので、パンフレットもグッズも用意がないとのこと。今ここで「選手生写真」が売ってあったらビーチリゾートの勢いで買ってしまいそうなところなのに、そういうのは一切ナシ。ただただみんなでビーチに集まって楽しく遊んだ……そんな雰囲気の大会となっていました。

これだけ環境と内容がともなっていて、この穴場感というのは意外でしたが、やはり「バレー」というとインドアの6人制が思い浮かぶように、何となく二の次にされているのかもしれません。しかし、インドアとはまったく異なる素晴らしい雰囲気があり、これからのシーズンにはピッタリの観戦体験です。「インスタ映え」もめちゃめちゃしそうです。

ぜひこのまま東京五輪までのどかに進んでいってほしいもの。日本勢だけでもこれだけのリゾート感が出るのですから、ブラジルとかキューバとかからの選手が集ったら、五輪ならではの「ワールドワイド」なリゾート感が出るでしょう。マジョリティにはインドアのバレーボールを見ていただいて、穴場としてビーチバレーを狙っていきたいものですね。

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