広瀬香美の前事務所、独禁法違反で立入り調査の可能性も…芸能活動制限の権限なし


 事務所移籍を発表した歌手の広瀬香美(52)に対して、所属事務所であった「オフィスサーティー」が、「広瀬香美」の芸名使用の禁止を求めた。同社は以下のように発表している。

「『広瀬香美』は弊社代表取締役である平野ヨーイチ氏が命名した芸名であり、『広瀬香美』の芸名の使用権限は、弊社及び平野ヨーイチ氏に帰属しており、弊社所属のアーティストとしての活動以外には、『広瀬香美』の芸名を使用できません」

「『広瀬香美』の名を使用した芸能活動の一切の禁止を求めるとともに、断固たる法的措置をとる所存でおります」

この1件で誰もが思い出すのは、のんに改名した能年玲奈だろう。所属事務所であったレプロエンタテインメントが名前の使用権を持つ契約であったために、本名であるにもかかわらず芸能活動の場では「能年玲奈」が名乗れなくなった。のんは、2016年にはアニメ映画『この世界の片隅に』の主人公の声を演じて多くの賞を獲得し、今年はファーストアルバム『スーパーヒーローズ』を発表したが、テレビでその姿を見ることはほとんど皆無だ。

広瀬香美も同様に、その名を使うことができなくなり、芸能界の表舞台から去ることになるのだろうか。芸能関係の法律問題に詳しい、レイ法律事務所の河西邦剛弁護士に聞いた。

「芸能事務所とタレントとの契約書には、『芸名についての権利は芸能事務所が持つこととする』という規定がある場合が大半です。ただ、これを盾にとって広瀬香美に芸名の使用禁止をできるかというと、独占禁止法の問題があります。今年の2月に公正取引委員会が報告書を発表して、芸能事務所がタレントの移籍制限をすることは独占禁止法違反になる場合があると明言しているんです。ですから、いくら芸名の使用権を芸能事務所が持つとされていたとしても、その契約書の規定が無効と判断される可能性があります。

オフィスサーティーは法的措置をとると言っていますが、裁判において芸名の使用禁止が認められる可能性はかなり低いでしょう。芸名の使用禁止によって移籍を制限するということは、優越的地位濫用行為に該当する可能性があり、課徴金支払の対象となったり、公正取引委員会の立入り調査を受ける可能性さえあります」

広瀬香美は、これまで通り芸能活動ができるのだろうか。

「事務所の移籍で代表曲の『ロマンスの神様』が歌えなくなるのでは? と心配されている方々も多いようです。『ロマンスの神様』の作詞作曲は広瀬香美自身で、詞と曲の著作権は音楽出版社である日音に譲渡され、さらにJASRAC(日本音楽著作権協会)に信託されています。CDについては原盤権を持っているのはレコード会社です。芸能事務所は広瀬さんの曲について『歌うな』と言う、なんらの権限も有していません」

●業界の慣例と法律

芸能事務所の移籍問題では、2016年のSMAP解散で、草なぎ剛稲垣吾郎香取慎吾ジャニーズ事務所を離脱したことが思い起こされる。3人が主演のオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』が、2週間限定公開で観客動員数28万人を突破して話題になった。CM出演も果たしているが、テレビ番組の出演に関しては地方局やインターネット放送にとどまっている。

「もし仮に、ジャニーズ事務所がテレビ局に『離脱した3人を使うな』というようなことを言っていたとしたら、独占禁止法に違反する可能性がありますが、そういうことは考えにくいでしょう。ジャニーズ事務所の気分を害して他の所属タレントを使わせてくれなくなると困る、とテレビ局のほうが気を回していると見るのが自然です。広瀬香美の場合も、事務所とのトラブルに巻き込まれることを懸念して、オファーを自粛することはあり得るでしょう。これは業界の慣例なので、現状の法律で規制するのは困難です」

芸能人のメディアへの露出が、本人の実力以外のところで左右されるのでは、健全な文化とはいえない。この状況に、広瀬香美の事務所移籍騒動が一石を投じることになるのだろうか。
(文=深笛義也/ライター)

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