【試乗 新型メルセデス・ベンツA-Class】4代目Aクラスに搭載されるAI「MBUX」は好みを熟知し育っていく!?

clicccar

2018/6/7 06:33


昨年、ダイムラーの乗用車部門の年間販売台数は約242万台、そのうち、メルセデスベンツは約229万台で、対前年比9.9%の伸びだったといいます。

実はメルセデス、去年に限らずここ数年は年1割ペースの台数増をみせているわけですが、その原動力となっているのはやはりFF系モデルの台頭でしょう。ちなみに昨年の販売台数は62万台余と、全体の1/4以上を占めるほど。CLA&GLAクラスといった新基軸も堅調のようで、ライフ末期となったA&Bクラスをうまく支えているようです。

個人的には先代Aクラスまでのサンドイッチ構造プラットフォームにエンジニア面での尊さを感じるのですが、中国などの新興市場でもコンパクトカーの需要が伸びつつあるある現況からいえば、生産性と発展性が高く様々な車体形状にも対応しやすいMFAプラットフォームへの転換は大成功だったといえるかもしれません。

というわけで、FFファミリーの中核にいるAクラスが6年ぶりのフルモデルチェンジを受けて4代目となりました。

サイズは全長&ホイールベースがやや伸びて、このクラス=Cセグメントのベンチマークであるゴルフに対してはひと回り大きくなった印象です。これにより居住性や積載性を改善したわけですが、同時に取り組んだのはピラー形状や配置の工夫による視界特性の改善でして、これによって先代に比べるとひと回りルーミーで車両感覚の把握しやすいクルマになっています。加えて全幅が1800mmに収められたのは立体駐車場を多用する日本のユーザーにとっては有り難いことといえそうです。

新型Aクラスのアーキテクチャーは先代のMFA型の改良版となるもので、アルミやハイテン鋼などの材料置換による軽量高剛性化を進めた結果、静的な捻れ剛性は先代比30%の向上をみています。サスペンション形式は従来の前ストラット&後マルチリンクをリファイン。それに加えて新たに設計されたトーションビームを採用しています。これはベーシックグレード向けに廉価と堅牢さを両立するのはもちろん、バッテリーなど搭載物の増える電動化を見据えて省スペース化をはかっておきたいという思惑があるはずです。

今回試乗したモデルはA200とA250、ともにガソリンモデルとなりますが、搭載エンジンは異なります。A250は従来からのメルセデス製2L・4気筒を更にリファイン、そしてパワーアップしたかたちで224psを発揮、同時に7速DCTとの組み合わせで141g/kmの低燃費を実現します。ゴルフでいえばGTIに相当するFF系Aクラスのパフォーマンスリーダーです。

そしてA200の側にはメルセデスが業務提携関係にあるルノー日産と共同開発した新設計の1.3L・4気筒を搭載。最高出力は163psと、先代の1.6L・4気筒より11ps上乗せされています。メルセデスの4気筒モデルとしては初となる気筒休止システムを採用し、ガソリンエンジンながらGPF=パティキュレートフィルターを搭載するなど、先々の環境基準にも対応するスペックを備えたこのユニットは、ドイツ国内にあるメルセデスのプラントで組み立てられます。

Sクラスと同等バージョンのADAS機能を搭載するなど、新型Aクラスのトピックは電装関係に至るまで枚挙に暇がありませんが、中でも特筆すべきトピックはMBUXの採用でしょう。これはいってみればグーグルやアマゾンが提供するAIスピーカーのサービスを車載化したようなもので、「ヘイメルセデス!」という掛け声と共に訊ねたいことや頼みたいことをいえば、クラウド経由でメルセデス独自生成のAIが応えてくれるというもの。ナビの目的地設定などはもちろん、たとえばちょっと暑いというだけでエアコンの設定温度を1度下げてくれたり、音楽かけてといえばライブラリーから時間や天候などの要素を判断しておすすめの音源を引っ張り出してくれたりするものです。

更にMBUXはWeb上のユーザーサービスであるメルセデスミーコネクトと紐付けられているので、使い込むほどにユーザーの思考や嗜好を熟知したAIを、メルセデスミーコネクトを介して別の車両でも使用することが可能です。

それについてメルセデスの言及はありませんが、クルマの買い替えの際に再びメルセデスを選べば、恐らく自分に馴染んで友達のような感覚を抱くようになったAIを移行できるという、ある種の囲い込み的な効果も彼らは考えているのではと思います。つまりMBUXは今後メルセデスの大半のモデルに搭載されることになる、そしてユーザー層が最も若くデジタルとの親和性が高い客筋のAクラスに初搭載したと。推測とはいえ、そこからはメルセデスのしたたかさも透けてみえます。ちなみに日本仕様はこのMBUXの日本語化に時間を要していることもあり、今年末~来年前半の導入が予定されている模様です。

走りにおいて特徴的なのは、快適性の向上でしょう。先代Aクラスはセグメントにおいても高レベルなダイナミクスを実現する一方で乗り心地が粗い、言い換えればスポーティ側に寄り過ぎている感がありました。モデルライフ中は段階的にそれを緩和してきたのですが、新型ではまず遮音を大きく見直し空力特性も徹底的に詰めた結果、静粛性が大幅に向上しています。これはベンチマークたるゴルフのみならず、自社銘柄でいえばCクラスをも上回ってしまうのではというほどの勢いです。

そして脚周りはいわゆる微小入力領域でのダンピングがしっとり効いており、中~大入力では車体姿勢をきっちりフラットに保とうとする、かなりメルセデスらしい味付けになっています。内装の仕立ても先代からは大幅にジャンプアップしており、もしFFだのFRだのというところに拘りのないユーザーであれば、わざわざCクラスを選ぶ必要はないかもと思わせる上質さを感じさせてくれるといえるでしょう。もっとも、今回の試乗車はグレード構成の関係上、すべて後輪がマルチリンクだったことは付け加えておきます。

エンジンの特性は1.3Lの側は刺激はなくも低回転からきっちりトルクを発しつつ、こっちの期待値に対しては額面通りに仕事をこなしてくれる、まぁメルセデスらしいっちゃあらしい仕上がりです。但し音・振動に関して敢えて優劣をつけるなら、うんとスポーティに躾けられた2Lの方がむしろ洗練されていました。これは初出かリファインかの洗練度の違いもさることながら、エンジン本体の可変機構や補機類などの作動音も影響しているかもしれません。

備わるスポーティネスはそのままに、下剋上も辞さずの構えで一気に進化を遂げた新型Aクラス。この後に続くFF系ファミリーは従来の4モデルに加え、更にバリエーションが増えるという噂もあります。それらの基準点としてみても充分納得できる仕上がりをみるに、もはやメルセデスのプロダクトにおいては駆動方式云々を問うことさえ古いことなのかもしれません。

◆主要諸元

【A200 7G-DCT】
エンジン:DOHC 直列4気筒 4バルブ・直噴ターボチャージャー
トランスミッション:電子制御7速DCT 駆動方式:FF
総排気量:1332cc ボア×ストローク:72.2×81.4(mm)  圧縮比:10.6:1
最高出力:120kw/163hp/5500rpm 最大トルク:250Nm/1620rpm
全長×全幅×全高(mm):4419×1796×1440 ホイールベース:2729mm
トレッド(F/R  mm):1567/1547 車両重量:1375kg
タイヤサイズ:205/60R16 ホイールサイズ:6.5J-16
サスペンション(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッド/ディスク
0-100km/h加速:8.0秒 最高速度:225km/h

【A250】
エンジン:DOHC 直列4気筒 4バルブ・直噴ターボチャージャー
トランスミッション:電子制御7速DCT 駆動方式:FF
総排気量:1991cc ボア×ストローク:83.0×92.0(mm)  圧縮比:10.5:1
最高出力:165kw/224hp/5500rpm 最大トルク:350Nm/1800rpm
全長×全幅×全高(mm):4419×1796×1445 ホイールベース:2729mm
トレッド(F/R mm):1567/1567 車両重量:1455kg
タイヤサイズ:205/55R17 ホイールサイズ:6.5J-17
サスペンション(F/R):ストラット/4リンク
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッド/ディスク
0-100km/h加速:6.2秒 最高速度:250km/h

(渡辺 敏史)

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