YOSHIKI×影山ヒロノブ&きただにひろしの奇跡のセッションが照らしたアニソンとジャパメタの未来

日刊SPA!

2018/6/2 15:52



<文/山野車輪 連載第31回>

◆「YOSHIKI CHANNEL」に影山ヒロノブ&きただにひろしが降臨!

X JAPANのリーダーYOSHIKIがお届けするニコニコチャンネルの番組「YOSHIKI CHANNEL」5月18日の放送に、アニソンヴォーカルユニット=JAM Projectの影山ヒロノブ氏ときただにひろし氏が生出演し、大きな話題となった。

YOSHIKIはヴィジュアル系(V系)、影山ときただにはアニソンと、全く異なるジャンルで、それぞれ新たな市場、そして新たな時代を切り拓いてきた実績を持つ。この3人の初対談は、ファンの間では驚きをもって迎えられたが、筆者は出会うべくして出会ったという認識だ。

V系とアニソンという一見、遠いと思われるジャンルの3人だが、連載第28回で述べたように、X JAPANとJAM Projectの音楽性はどちらもジャパメタ、つまりヘヴィメタルがベースとなっているのである。

加えて、YOSHIKIも影山&きただにも、日本を飛び出し、海外でも活躍するトップアーティストである。近年までは、日本のアーティストが海外で活動するには非常に高い壁があった。それは言葉の壁であったり、欧米とアジアの文化的および地理的な壁であったり、なかなか世界に打って出ることが難しいとされていた。彼らはおそらく、他の日本のアーティストと見ている世界が違うのだろう。

番組では、そんな彼らから実に多くの名言が飛び出した。今回はその模様について記しておきたい。

YOSHIKI CHANNELをすでに見た人には、あらためてあの日の感慨に浸ってもらい、そして、まだ観ていない人にはぜひ、番組の内容に触れてほしいと思う。

◆YOSHIKIのピアノで影山ときただにがアニソンを歌う奇跡のセッション!

番組のハイライトはもちろん、YOSHIKIと影山、きただにによる奇跡のセッションである。まずは、YOSHIKIのピアノ伴奏で影山が『ドラゴンボールZ』の1stオープニング・テーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を高らかに歌い上げるという、国内だけでなく海外のファンも泣いて喜ぶ1曲。

続くきただにとのセッションでは『ONE PIECE』の1st OPテーマ「ウィーアー!」が演奏され、モニターは「涙」「泣」のコメントで埋め尽くされた。サビの「ウィーアー!」では、「X 」の弾幕(We Are X)で大盛り上がり。

そして最後にX JAPANの8thシングル「Say Anything」を、影山&きただにがデュエットし、優しくも力強く歌い切って締めくくった。

◆YOSHIKIも舌を巻いたアニソンのレベルの高さと「90秒マジック」

セッションを終えると、あのYOSHIKIが、「今日はアニソンの曲の偉大さと、2人のヴォーカル、声の偉大さに感銘を受けました。ホントにアニソンの展開って、スゴイ。ホントに勉強になりました。いつも聴いてはいたんですけど、実際に弾いてみると、転調の嵐ですもんね。だから短時間で人の心をガッと掴むのかなって」と舌を巻いていた。

というのも、TVアニメで流れるアニソンには、90秒(厳密には、楽曲の前後に0.5秒ずつの無音部分があるので89秒)という独自のフォーマットがある。その尺のなかで、アタマサビが流れ、イントロでタイトルロゴが登場し、AメロそしてBメロへとテンションを上げていき、サビで盛り上がるという様式で作られている(絶対ではないが)。非常に忙しいのだ。さらに、盛り上げるため、Dメロ(大サビ)をつけたり、マイナーからメジャーへ転調するテクニックが使用されることもある。

アニソン特有のアニソンっぽさとは一体何なのか? それは、このようなガチガチのルールと手法のなかで凝縮された楽曲こそが、アニソンなのである。自由度は低いが、短い尺のなかに盛り上げるための手法が詰まっているからこそ、アニソンは広く、多くのリスナーに訴えかけるのだ。

YOSHIKIは、「僕ら90秒じゃヴォーカルも始まらない。ドラムも始まらない」と見事なオチをつけ、笑いを誘った。ついでに言うと、Xの代表曲「紅」は間奏が90秒近くあって、カラオケで歌うと、その間、持てあましてしまうので非常に困る(笑)。

◆「アニメの歌もロックの歌も、境目ってない」

YOSHIKIは、「アニメの歌もロックの歌も、境目ってないと思うんですけど」と述べた。番組で紹介されたJAM Projectのライヴ映像は、「これ、本当にアニソンのライヴ?」と思えるくらいで、ヘヴィメタル・バンド顔負けのステージパフォーマンスだった。

火柱の立つステージで、JAMのヴォーカリストたちがシャウトし、観客が熱狂する姿を見て、YOSHIKIも、「完全に(筆者注:アニソンとロック&メタルの間の)国境がないんだなーって思います」と述べていた。初めてJAMのライブ映像を見た視聴者も多かっただろう、「メタルだ!」と称賛するコメントが画面を覆った。

実際、JAMのほかにも多くのジャパメタおよびV系バンドがアニソンを手掛けているし、また深夜アニメとV系の勃興時期はどちらも90年代半ば頃であり、さらにアニメとメタルは音楽性以外にも、ゴスロリファッションなどの近しい要素が見られる。

◆アニソンとV系に熱中する海外のファン

連載第28回で、影山とYOSHIKIはどちらもアニメ『聖闘士星矢』の主題歌に関わっているという共通点があることを指摘したが、その『聖闘士星矢』がスペイン語圏で人気があるとの話題も出た。

アニメとV系およびメタル系は、オタクと音楽それぞれの専門メディアで取り上げられ、なかなか交わらない。それは昭和時代から続くタコツボ化したコミュニティや専門メディアなどに縛られていたからだろう。

しかし海外では、非常に近しいものと受け取られているようだ。その要因として、筆者はTVアニメ『聖闘士星矢』のOPテーマ「ペガサス幻想」の影響が大きいのではないかと考えている。同楽曲は完璧なアニソンメタルで、手掛けたのはLAZYの後輩バンドのMAKE-UPだ(連載第10回参照)。

『聖闘士星矢』がなぜスペイン語圏で人気があるのかであるが、80年代スペインのメタル・シーンは、結構メロディが強い。1985年に結成されたスパニッシュメタル・バンド=Júpiter(GOLIATHが改名したバンド)は、MAKE-UPと同系統のサウンドだ。

そしてブラジルでは、『聖闘士星矢』は、なんと『ドラゴンボールZ』以上の人気を誇る。連載第15回で紹介したように、ANGRAの2代目ヴォーカリストのエドゥ・ファラスキが「ペガサス幻想」を歌っていることが、メタラーに知られている。

◆オタクに対する認識の変化

オタクに対する認識の変化についての3人のやりとりも、実に興味深かった。海外で活躍するアーティストおよび海外リスナーが、オタクを好意的に捉えているのである。

影山「昔はアニソン好きって言うと、『あー、オタクだろー!』って言われた時代もあるんだけど、ここ20年くらいすごく、若い人たちが、自分が元気を得るためのアイテムになったような感じで、すごく市民権を得てきたというのはすごく感じます」

YOSHIKI「オタクがカッコいい時代になっていますよね」

影山「海外の人たちだと、アメリカに、オタク・コンベンションを略してオタコンとか、そういうイベントとかに何十万人という若い人が来て、みんな『オタクイェーイ!』とドカーンと盛り上がっているんですね。多分イメージ的には、『オタク』っていうのは、マニアのかっこいい称号っていうか」

進行役「“突き詰めてる”ってカッコいいことだと、世界が変わってきましたよね」

YOSHIKI「多分彼ら(筆者注:オタク)なしに、X JAPANは成り立たないと思います」

進行役「音楽性にしても、ヴィジュアル系とアニソン、少しハードなロックなものもあったり、ちょっと共通するような部分もありますよね」

YOSHIKI「そうですね、かなり近い気もしますね」

きただに「そうですね」

影山は、「ここ20年くらい」という感覚を述べているが、実際にオタクが市民権を獲得しはじめたのが1990年代後半頃だ。1995年にTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が放送され、同番組は一般層を巻き込むヒットとなる。同年は、プラモデル「マスターグレード(MG)ガンダム」発売により出戻りモデラーの大人が激増し、さらに翌1996年、「アニメタル」が社会的な盛り上がりを見せた。この時期、オタクと一般層の垣根が一気に低くなったのである。

◆影山ヒロノブの名言の数々

トークのなかで、影山から、「苦しいときに、周りの人に助けてもらえた」という話が出て、筆者も非常に共感した。影山は多数の名言を連発した。いくつか拾ってみたい。

「長く続けるのって、当然、実力とかもある程度大切なんだろうけど、苦しいときに、周りの人に助けてもらえるような場面があって、今もやっていられるのかなってすごく思います」

「僕、40歳のときにJAMを結成したんですよ。アニメソングが市民権を得る流れのなかで、JAMもすごく大きくなって、海外に行きたかった夢も、例えばLOUDNESSはやってたけど、自分は届かなかったと思っていた武道館のステージも、JAMをやったことによって連れていってもらった。人生ってどこでどうなるのか。面白いなと思います」

「海外の人、とくにアニソンのファンの人は、ヴィジュアルのロックはすごく好きですね。ぼくのフランスの友だちとか、今日のこの番組(YOSHIKI CHANNEL)の情報聞いて、みんな『マジかー!』みたいな」

「自分たちのいるアニメソングが、こんなにすごくたくさんの人たちに受け入れてもらえるようになるってのは、ここ20年ぐらいの出来事なので、そこの中にいて(筆者注:音楽業界の変化を)すごく感じます。普通にJポップのアーティストの方たちも、アニソンのタイアップというと、すごく真剣に今はやってくれるようになって。アニソンやアニメ文化にとって良い時代になったなとすごく思いますね」

◆YOSHIKIがJAM Projectでピアノを弾く日は近い

90分の間に、3人のレジェンドによる多くの名言と奇跡のセッションが行なわれ、非常に濃密な番組内容だった。新時代を切り開いている人たちの言葉は新鮮で、また深いものがあった。大まかには、キャリアの長い影山のアニソンに対する重厚な発言があり、きただにがそれを盛り立て、YOSHIKIが笑いを交えながら、視聴者に噛み砕いて伝えるという流れだった。ホスト役としてのYOSHIKIのトーク技術も高く、安心して観ていられた。

筆者は番組を見ながら、本連載でメインテーマとして掲げ、述べてきた内容を裏付けてくれるかのような発言が、3人の口から発せられる度に、画面の前でガッツポーズを繰り返したのであった(笑)。

日本のポップカルチャーの海外進出にあたっては、オタクカルチャーと音楽がクルマの両輪となって、相乗効果で盛り上げていくことが望ましい。それを可能とするのが、海外と近いところで呼吸しながら、異なるポップカルチャーを結びつけているアニソンとジャパメタだろう。

セッション後のトークで、YOSHIKIは、「JAM Projectに呼んでいただければ、ピアノ弾きますよ。今度はちゃんと練習しとこう」と述べた。忘れ去られることがないように、ここに記しておきたい。ファンはその時を待っている!

【山野車輪】

(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

あなたにおすすめ

すべての人にインターネット
関連サービス