最終回目前! 『おっさんずラブ』ヒットの裏に、現代ニッポンのおっさんが抱える孤独と不安があった?

日刊サイゾー

2018/6/1 17:00


 『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が今週、最終回を迎える。

土曜の夜11時15分から放送されている本作は、天空不動産に務める春田創一(田中圭)が、ピュアすぎる乙女心を隠し持つ上司の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、ルームシェアをする後輩の牧凌太(林遣都)に告白されて思い悩む、男性同士の恋愛をコミカルかつシリアスに描いた恋愛ドラマだ。

物語は3人の恋愛関係を中心に、離婚を切り出された黒澤の妻・蝶子(大塚寧々)、春田が気になっている幼なじみの荒井ちず(内田理央)、そんなちずに興味を持つ新入社員の栗林歌麻呂(金子大地)、そして牧とかつて付き合っていた営業部主任の武川政宗(眞島秀和)を巻き込んだ複数の三角関係が展開。片思いによる三角関係を複数展開することで複雑な人間模様を見せていくのはトレンディドラマ以降の恋愛ドラマの手法で、むしろ懐かしいくらいである。

本作が放送されているテレビ朝日の土曜ナイトドラマ枠は昨年、16年ぶりに再スタートした枠で、オリジナル脚本の恋愛ドラマを放送してきた。

テレ朝のドラマというと『相棒』や『ドクターX~外科医・大門未知子~』といった刑事や医者が主人公のシリーズモノという印象が強いが、『やすらぎの郷』や『トットちゃん!』のような昼帯枠のドラマを新設したりと、近年は攻めの姿勢も見せつつある。

同時に、視聴者の需要を見極めようとする慎重さも備えており、『おっさんずラブ』も2016年の年末にSPドラマが放送され、そのリブート版として連続ドラマは作られた。

SPドラマの時は、ボーイズラブ(BL)を前面に打ち出した衝撃が強かったが、連続ドラマ化にあたっては、同性愛に対しては春田の戸惑いをコミカルに描いてはいるものの、距離感はニュートラルだ。”人を好きになる”という気持ちと、どう向き合うべきか? に焦点を当てているのが、恋愛ドラマとして秀逸なところだ。

SPドラマの時から一部で話題だったが、連ドラ化によって人気が爆発。黒澤部長のインスタやPixivでイラストを募集するといったネット戦略も功を奏し、今期のダークホースとして一気に盛り上がりを見せた。

BL的側面が注目されがちだが、多様な性のあり方を肯定的に描くドラマは近年増えつつあり、真新しいものではない。むしろ本作の核となっていて、多くの視聴者を引きつけているのは、タイトルにある「おっさん」という要素ではないかと思う。

そもそも、本作における「おっさん」とは誰なのだろうか?

主人公の春田は33歳で、牧は25歳、栗林は23歳。10代から見れば全員おっさんかもしれないが、牧と栗林は社会人としては若手で、30代の春田にしてもまだ青年の範疇にいて、むしろ幼く描かれている。

そう考えるとやっぱり、おっさんといえるのは40代からで、44歳の武川と55歳の黒澤部長だろう。

特に重要な存在が黒澤部長だ。物語の発端が彼の春田への告白だと考えると、タイトルのおっさんとは黒澤のことではないかと思う。

春田に「気持ちに応えることができない」と言われた時、黒澤は「ダメなのは上司だから? それとも男だから?」と尋ねるが、春田は「純粋な上司と部下の関係に戻りたいんです」と答える。

この場面は、黒澤の恋愛感情が、上司から部下へのパワーハラスメントとなっていたことを思い知らされる。

黒澤が向ける春田への恋愛感情には、同性愛の要素だけでなく、パワーハラスメントの問題が内在するのだが、今の日本を見ていると、視聴者の関心が向かっているのは年配の男性の振る舞いが結果的にパワハラとなってしまうという、おっさんが持つ暴力性ではないかと思う。

TOKIO山口達也が起こした未成年への暴行未遂事件や、日大アメフト部の悪質タックル事件など、おっさんのパワハラ問題が連日ワイドショーをにぎわせていて、その風当たりは年々強まっている。

彼らおっさんはサイレントマジョリティで、ありふれた存在だからこそ、多くは語られない。しかし、今の日本社会で起きている大概の問題は彼らに起因している。

パワハラもセクハラも、行使する側に問題があるのは明らかだ。しかし、ニュースやドラマは被害にあった側に光を当てるあまり、加害者たるおっさんたちを無知で愚かなモンスターとして処理している。しかし彼らのパワハラの背後には、彼ら自身も言語化できていない深刻な悩みや問題があるのではないだろうか。

だからこそ、黒澤部長が注目されているのだろう。彼が春田に向ける恋愛感情の内実についてあまり語られていないが、長年連れ添った妻と離婚してでも春田と付き合うとする黒澤の常軌を逸した行動は、深く説明されないからこそ、背後におっさんが抱える孤独と不安があるのではないかと想像させる。

最終話は、春田が誰を選ぶのかという方向に向かうのだろうが、黒澤の中にあるおっさんの不安や哀しみの片鱗が、少しでも見えたらいいなと思う。

(文=成馬零一)

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