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ネオ・フォーク系のパイオニア、ゆずのヒットを探る「臼井孝のヒット曲探検隊 ~アーティスト別 ベストヒット20」

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CD、音楽配信、カラオケの3部門からヒットを読み解く『臼井孝のヒット曲探検隊』。この連載の概要については、第1回目の冒頭部分をご参照いただきたい。ただし、第5回の安室奈美恵からは2017年末までのデータを反映している。

■人気が急増し、 定期的な路上LIVEを終了させることに

ゆずは、1998年にメジャーデビューし、ブレイク当時はネオ・フォーク・デュオと呼ばれた。リーダーの北川悠仁(1977年生まれ)とサブリーダーの岩沢厚治(1976年生まれ)は、横浜市の同じ小学校・中学校に通う同級生で、1996年ごろにデュオを結成し、路上LIVEを開始させたという。

まもなく現在も所属するレコード会社、トイズ・ファクトリーの関係者の目に止まり、JUN SKY WALKER(S)を脱退し、その後同社からソロデビューしていた寺岡呼人のプロデュースにより1997年にインディーズにてミニ・アルバム『ゆずの素』を発売、さらに翌年2月21日にはミニ・アルバム『ゆずマン』にてメジャーデビューを果たした。同年夏に発売した1stシングル「夏色」以降、人気が急増し、この年に定期的な路上LIVEを終了するほどに。

1990年代の前半から半ばに向けて、小室哲哉プロデュースによるダンスミュージックや、ビーイングによるタイアップの要請に強烈にマッチングしたキャッチーなJ-POPが大きなブームとなりやがて一段落しようとしていた頃、それらとは異なるナチュラルな魅力を持つ彼らが1998年にブレイクしたのはいわば必然だったと言えよう。

ゆずは210代後半から20代ならではの恋愛や夢への葛藤をテーマにした歌詞や、アンプラグドな演奏や若さあふれるメロディー、そして何より路上で鍛えた説得力のあるボーカルやハーモニーで、それまでとは異なる音楽性が一気に注目された。その後19(ジューク)やコブクロ、さらにはソロでも森山直太朗がブレイクしていったのは、ゆずが最初にネオ・フォーク系のトビラを開いたことが大きいだろう。

1998年のブレイク以降、1999年にはシングル5枚を発売するなど、アイドル顔負けの怒涛のリリースで攻め(この頃の北川の声の涸れ方が可哀想になるほど如実)、2001年には二人だけで東京ドーム公演を成功させるまでに。ミニアルバムやLIVEアルバムも発売するなど、LIVEや手作り感を大事にするバンドであることもアピールしつつ、それらとは対照的に、地上波TVへの出演は殆どなかった。実際、この頃は、雑誌やFM、衛星波の音楽チャンネルなど、音楽ファンが好む媒体しか露出はなかったように思う。

■商業性と音楽性の絶妙なバランスで、 さらに幅広い層に人気が浸透

その後、2003年にNHK紅白歌合戦に初出場(この時は横浜の路上からの中継で出演)、翌2004年には「栄光の架橋」がNHK「アテネオリンピック」のテーマソングとなり連続での紅白出演、さらに2007年に「ミュージックステーション」に初出演を果たすなど、徐々に地上波TVとの距離が近くなり、より幅広い世代の一般リスナーへ浸透していく。筆者個人的には、ゆずよりもアイドル的に活動していたウエンツ瑛士と小池徹平によるWaTの存在が、ゆずにとっても「ゆず」の音楽畑出身をより認識させることになったし、またWaTにとっても男性デュオという手作り感をアピールするキッカケとなったと考えている。

また同じ頃、2004年の「桜木町」や「栄光の架橋」では松任谷正隆をアレンジャーに迎えたり、2007年のシングル「春風」では葉加瀬太郎がバイオリンで参加したりと、様々な音楽プロデューサーやミュージシャンとのコラボレーションも活発となる。そのラインナップは小田和正、松任谷由実、キマグレン、蔦谷好位置、前山田健一、GReeeeN、更には坂本九の「見上げてごらん夜の星を」をカバーするなど、実に幅広い。これは、彼らの音楽が元々それだけ親しみやすいということが大きいのではないだろうか。

そんな商業性と音楽性の絶妙なバランスで、2010年代になるとさらに幅広い層に人気が浸透。実際、その認知度×関心度の高さを表すタレントパワーランキングにてサザンオールスターズやMr.Childrenと並ぶハイスコアとなった。つまり、2010年代に国民的アーティストとなったと考えられる。

そうして2017年にはデビュー20周年を記念したベストアルバムや全国ドームツアーを実現、同年末にはNHK紅白田合戦にて大トリを担当するまでに成長。しかし、たとえLIVEがどれだけ大規模になっても、大型特番で多くの視聴者が注目していても、二人の手作り感のあるパフォーマンスを大事にしているように思える。これだけ時代やCDシングルの購入のされ方が変わろうとも、2ndシングル「少年」から2017年の4曲入りEP『4LOVE』まで45作連続でオリコンTOP10入りを果たしているのも、熱心なファンの支持がある証拠の一つと言えよう。

■3部門のバランスの良さで 「栄光の架橋」がダントツの総合1位

国民的アーティストへと成長したゆずの総合ヒットは何となるだろうか? 誰もが思いつくだろう「あの曲」と「その曲」以外にも、ヒットを量産してきた彼らだからこそ、是非ともTOP10やTOP20などより幅広く注目していただきたい。

総合1位は2004年の通算21作目となるシングル「栄光の架橋」。配信では2011年の配信開始より、毎年レコチョクの年間TOP100入りしておりダントツの1位、カラオケでも元々人気は高かったが、2011年以降、年間TOP100入りを続けている。また、CDは累計31.3万枚で、売上では「飛べない鳥」(2000年、38.2万枚)、「嗚呼、青春の日々」(2000年、34.1万枚)、「いつか」(1999年、32.3万枚)に次いで4番手だが、TOP100内の登場週数は28週と自己最長のロングヒット。しかも、TOP200まで広げれば、2017年末にNHK紅白歌合戦の大トリにて歌唱した後に再浮上したことを含め76週もチャートインしている。とにかく、3部門のバランスの良さでダントツの総合1位となった。

■聴いた人を前向きにさせる エネルギッシュかつ感動的な楽曲

本作がこれほどまでに支持を広げたのは、多機能な人気曲だからだと考えられる。元々は2004年のNHK『アテネオリンピック』公式テーマソングだった。その年だけでも、当初はゆずファン中心だったのが、放送が進むにつれロングヒット化し、特に体操競技の中継中に「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架橋だ!」と評したあたりから、一気に一般層に広がりだした。ここから数年は、スポーツ系のエールソングとしてTV番組に使われていた。

さらに、その後は苦難を乗り越えて結婚にまでたどり着いた二人のテーマソングとして結婚式ソングとしても定着、2011年の秋ごろ、ゆずの二人が相次いで結婚した際も各番組で流れ、各チャートで再浮上するようになった。また、同じ2011年には東日本大震災が起こり、各チャリティー番組で歌われるようになったことも、2011年以降の同楽曲の再ヒットに拍車をかけたと言えるだろう。つまり、今では、エールソング、ラブソング、チャリティーソングとしても人気なのだ。

無論、これだけ多くの解釈ができるというのは、単なるタイアップ効果ではなく、聴いた人を前向きにさせるエネルギッシュな楽曲だからに他ならない。静かに始まりつつ、後半、感動的にフィナーレを迎えるという松任谷正隆によるドラマティックなアレンジの効果も、北川と岩沢がゴールに向かうべく歌い上げていく表現によるところも大きいだろう。

■総合2位は夏の定番曲、 1stシングル「夏色」!

総合2位は1998年の1stシングル「夏色」。こちらはCDは最高17位ながらTOP100内27週と「栄光の架橋」に次ぐロングヒットで、累計27万枚の8位、カラオケも毎年のように夏になると上位入りするほどの人気曲となり、ゆずの中でも2番手の人気で、総合でも2位となった。

ちなみに『ミュージックステーション』などで若い世代を中心に実施されるアンケートでも、毎年TOP5内の人気となっている。発売から約20年が経過しており、明らかに発売当時を知らないリスナーにも浸透していることが分かる。「駐車場の猫」や「長い長い下り坂」、「自転車」など、若い世代にも身近な夏景色が多数登場することや、高音ボーカルが駆け抜けていくような曲想も人気の要因だろう。

本作は、当時はノンタイアップ曲で、各FM局や音楽専門チャンネルでの熱い支持を経てじわじわと人気が広がっていたが、今ではTV番組内の尺の短いLIVEでも必ず歌われるほどの定番曲となっている。いったん演奏が終了してから、観客から「もう1回!」コールが起こり、その後、北川が観客を罵倒するという所までお約束になっている、なんてアーティストや楽曲はおそらく日本に100曲も存在しないのではないだろうか。それほどまでのド定番で、現在は京浜急行の上大岡駅の接近メロディーに使われたり、また2017年にはロッテの氷菓『爽』のCMソングに起用されたりと、今なお人気が引き継がれている。

蛇足だが「夏色」と言えば、早見優「夏色のナンシー」、堀ちえみ「夏色のダイアリー」、菊池桃子「夏色片想い」、小川範子「夏色の天使」など、80年代女性アイドルの楽曲タイトルにも多用されるほど、夏の陽射しを受ける爽やかな女子をイメージする言葉だったが、偶然とはいえ、彼らがこの言葉を使ったことも、同作の青春や胸キュン色を助長しているのではないだろうか。

■総合3位は前向きなバラードとして 多くの共感を呼んだ「雨のち晴レルヤ」

総合3位は2013年の通算39作目となるシングル「雨のち晴レルヤ」。CDセールスは、累計7.4万枚だが、配信では25万件以上のダウンロードで2位、カラオケでも3位と安定して強い。

同作はNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」の主題歌で、時代の荒波にも負けず、前向きに生きる主人公・め以子の心情ともリンクした前向きなバラードとして多くの共感を呼んだ。なお、作曲は北川悠仁と篠笛奏者・佐藤和哉の連名となっており、これは同作が佐藤の「さくら色のワルツ」を原曲としているため。また、間奏にドヴォルザークの「新世界」が引用されているのも含め、近年のゆずの楽曲は、他のアーティストや楽曲の特性をしなやかに取り入れるのが実に上手い。こうした点も二人組ながら決して単調にはならない要因だろう。

このようにTOP3は、2000年代、1990年代、2010年代と3つの異なる年代でヒット曲が並んだ。これも、長年支持されている秘訣と言えよう。

■4作のNHK関連の タイアップ曲がランクイン

それにしても、総合1位の「栄光の架橋」、同3位の「雨のち晴レルヤ」がNHK関連のタイアップとなった。総合TOP20を見ても同12位の「逢いたい」(2009年、NHKドラマ「ゴーストフレンズ」主題歌)、同16位の「友~旅立ちの時~」(2010年、第80回NHK全国学校音楽コンクール」課題曲)と4作がランクインしており、これは他のアーティストと比べても決して少なくない。彼らの楽曲や二人のキャラクターのピースフルな部分や、幅広い世代に支持されている人気が、同局の特性に合致していることが大きいのかもしれない。

総合TOP10を見ると、6位に「OLA!!」(2015年、映画「クレヨンしんちゃん オラの引越し物語」主題歌)、7位と8位に「REASON」「表裏一体」(共に2013年のTV&映画「HUNTER×HUNTER」主題歌)とアニメ関連のタイアップ曲が3曲入っているのも興味深い。いずれも2010年代の作品で、配信やカラオケで人気となっており、この新たなヒットにより、彼らよりも一回りから二回り若い世代のファンも取り込むことに繋がったのだろう。なお、これら3曲はいずれもヒャダインこと前山田健一が楽曲制作に関わっていることも、単なる偶然ではないだろう。

■配信限定でリリースすることで、 より幅広い音楽にチャレンジ

また、総合5位に「イロトリドリ」(2013年、「ユーキャン」CMソング)、同10位に「タッタ」(2017年、フジテレビ「めちゃ2イケてるッ!」テーマソング)など、配信先行のシングルがランクイン。どちらもややコミカルな要素が強く、通常のシングルとは色合いが異なるがゆえに、CDシングルではなく配信という形でリリースされたのだろうか。他にも、2011年の超ポップな「LOVE&PEACH」や、2016年のカバー(一部、オリジナルの作詞あり)「見上げてごらん夜の星を~ぼくらのうた」など、柔軟に配信限定でリリースすることで、より幅広い音楽にチャレンジしたのかもしれない。

とにかく、20年経過しても、その存在感をはじめ、リリース形態、メディア露出などが決して束縛されていないナチュラルな立ち位置を保っているのがお見事。他のアーティストでトップクラスをキープしているのは、彼らと同じ1998年にメジャーデビューしたaikoだろうか(確かに、aikoもCDシングルのTOP10入りが00年以降続いており、LIVEも、キャラクターやトークも人気、ゆずとの掛け持ちファンも多そう)。

メジャーデビューからまる20年を迎えた彼らも、今やともに40代。今後、さらに年齢を重ね、例えば哀愁を帯びた男性中高年や第二の人生を歩む女性など、より深いテーマを取り込んでいくのだろうか、それとも2010年代に開拓したアニメ分野を突き進んでいくのだろうか。どんなコラボレーションでも「ゆず」色に染められる彼らだからこそ、とっても楽しみだ。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)
1968年京都府出身。地元大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析やau MUSIC Storeでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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