地域の風吹くプロ野球 NPOと組む地域活動も

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 プロ野球界で「地域密着」が言われるようになったのはいつごろか。創立時の経営難をファンの募金で乗り切った広島のような「生まれながらの市民球団」は別にして、巨人戦のテレビ中継がドル箱だった時代は、地域密着、地域貢献を口にする球団は少なかった。

プロ野球界に「地域の風」が吹き始めたことの一つに、地域に根付いた欧州サッカークラブを手本に誕生したJリーグ(1993年開幕)の存在は無関係ではないだろう「地域の人々に夢と楽しみを提供」する方針を掲げたJリーグは大きな刺激になったはずだ。 バルセロナ(スペイン)やリヴァプール(イングランド)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、ナポリ(イタリア)など地名を冠した欧州名門サッカークラブの名はすぐ浮かぶ。これらのクラブはそれこそ地元市民にとってガウディの建築やビートルズの音楽、地ビール、ピッツァと遜色ない地元の誇るべき“宝”として存在しているだろう。

被爆後の広島再生の希望を担って誕生した広島カープもすでにこの宝の域に達しているはずだ。Jリーグの鹿島アントラーズや浦和レッズなども創立当初から地域との絆が強い。いずれのチームも「広島」「鹿島」「浦和」と地名で呼んでも違和感ない。「名は体を表す」で地名のみで呼ばれるチームの地域密着度は高いとみて間違いないだろう。

福岡ソフトバンクホークスや埼玉西武ライオンズ、北海道日本ハムファイターズ、千葉ロッテマリーンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズなども今後地域密着度が高まれば、オーナー企業名は後景に退き、地名のみでチームを呼ぶ時代が来るかもしれない。

オリックス・バファローズを除く5球団が球団名に地名・地域名を冠するパ・リーグは、広島を除いて本拠地が三大都市圏に集中するセ・リーグに比べ、地域活動に熱心だ。

北海道日本ハムは北海道内179市町村の応援大使に選手を任命する取り組みを展開している。北海道を先日訪れた際、駅などに、その地の応援大使に任命されたファイターズの選手の等身大パネルが置かれているのをしばしば見かけた。北の大地にしっかり根付いており、かつてファイターズが東京を本拠地(後楽園球場)にしていたころとはイメージが様変わりしている。

東京湾をまたぐ形で川崎から千葉に本拠地を移した千葉ロッテマリーンズもすっかりチームカラーを一新、千葉になじんだチームに生まれ変わった。

川崎ロッテ時代のエースが、まさかり投法・村田なら、印象深い千葉ロッテのエースはジョニー黒木。新旧エースの愛称の違いが、山奥でまさかりを振り抜く寡黙な昭和のきこりと、爽やかな浜風の中でたたずむマドロス(船員)の対比のように “カラー”の変化を象徴しているようで面白い。

千葉ロッテが最近始めた、NPOと組んだユニークな形態の地域活動も、プロ野球界の中ではわりあい珍しいかもしれない。

千葉ロッテは、本拠地ZOZOマリンスタジアム(千葉市美浜区美浜1)で2018年5月3日に行われた対福岡ソフトバンク戦の終了後、プロ野球の球団としては初めて、海の環境改善活動「LEADS TO THE OCEAN~海につづくプロジェクト」に参加。球団の呼び掛けに応じたロッテファン70人が、ZOZOマリンスタジアム周辺の浜辺などをおよそ30分間清掃した。

この活動は、日本財団が取り組む「海と日本プロジェクト」の一環で、日本財団やNPO法人「海さくら」らが、千葉ロッテのほか、Jリーグ、Bリーグのプロスポーツチームと一緒に「海にごみは行かせない!」を合言葉に、参加チームの各試合終了後に試合会場周辺で定期的に清掃を実施する試みだ。

環境をテーマにしたスポーツ側の新たな地域貢献活動の一つとして今後の広がりが注目される。

5月3日の清掃に参加した千葉ロッテファン歴10年の男性は「とても楽しかった」とこの日ロッテが敗れた悔しさはみせず、仲間のロッテファンらとともにごみ拾いに精を出した。「戦果」は、可燃ごみ9袋、不燃ごみ1袋、缶1袋、ペットボトル1袋、廃電池1袋。参加回数が一定数を超えると記念品などが参加者に贈られる特典もあるという。

千葉ロッテは本シーズン、この清掃活動を計16回実施する予定。このような地道な活動の積み重ねが地域に愛され、無くてはならない存在に千葉ロッテを育てていくだろう。この活動がファンの間にすっかり定着したら、本拠地ZOZOマリンスタジアムは、ネーミングライツの時々の名称変化に左右されず、その所在する美浜区美浜にもちなみ、“美浜”マリンスタジアムと、ファンの間で呼び慣わされているかもしれない。

当記事はOVOの提供記事です。

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