『ダーティー・コンピューター』ジャネール・モネイ(Album Review)

Billboard JAPAN

2018/5/1 18:00



2013年リリースの2ndアルバム『ジ・エレクトリック・レディ』から約4年半振りとなる、まさに“ファン待望の”新作となったジャネール・モネイの3rdアルバム『ダーティー・コンピューター』。発売が遅れた理由として、女優業(映画『ムーンライト』や『ドリームス』など)や、彼女が敬愛していたプリンスの死(2016年4月)が挙げられている。というのも、初期の段階ではプリンス自身が制作に携わっていた為、訃報を受けてバランスを崩してしまったからだそう。彼の音楽をリスペクトし、デビュー当時から相談にのってもらっていたというから、当然だけど。

そのプリンスをまんま引き継いだような、80年代風のファンク~ディスコ・サウンドが満載の本作。制作陣にも、ファレル・ウィリアムスや、DJ/プロデューサーのナナ・クワベナ(ジョン・レジェンド、デザイナー等)といったプリンス・フォロワーから、テイラー・スウィフトなどトップシンガーを担当するマットマン&ロビン、前2作でも大活躍したネイト・ワンダーとチャック・ライトニングによるファンク・デュオ=ディープ・コットンなどが参加している。

プリンスの「キス」(1986年)に激似と話題の先行シングル「メイク・ミー・フィール」や、ファレル・ウィリアムスがそっくりマネる「アイ・ガット・ザ・ジャスティス」、ゴージャスなエレクトロ・ポップの「クレイジー、クラシック、ライフ」、当時のディスコ・フロアが蘇る「テイク・ア・バイト」など、“殿下節”直球のナンバーも、ただの描き写しではなく、ジャネール独自の煌びやかな音世界とオリジナリティがある。プリンスの大ヒット曲「レッツ・ゴー・クレイジー」(1984年)風の「アメリカンズ」や、レニー・クラヴィッツの娘で女優のゾーイ・クラヴィッツとのデュエット曲「スクリュード 」も、80'sサウンドが溶け合った快作。

一方、ジャネールが巧みなラップを披露したヒップホップ・トラック「ジャンゴ・ジェーン」や、強弱をつけたボーカルで曲の世界観を描くミディアム・チューン「アイ・ライク・ザット」、アコースティック・ギターの生音が映えるネオソウル「ドント・ジャッジ・ミー」~ゴスペル・コーラスをバックに従える「ソー・アフレイド」等、R&Bの色彩を色濃くした作品もバランス良く配置されている。ザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンが参加したア・カペラ風のタイトル曲も、イントロではあるが黒く深い。

最高のサウンド、最高のボーカルに加え、本作をコンセプトでもある“映像作品”としてのクオリティを語らずしては評価できない。前述の「メイク・ミー・フィール」も素晴らしいが、何といってもグライムスとのコラボレーション・ソング「ピンク」の仕上がりには恐れ入る。女性器を連想させる衣装や、アンダーヘアがハミ出したランジェリー姿、ヒップを突き出して求愛(?)するダンスなど、冗談のような内容もアートとして成立しているから凄い。黒人文化を強調した、喧騒渦巻くタフなストリート感覚の「ジャンゴ・ジェーン」、ブラック&ホワイトで統一された民族衣装や、孔雀の羽をイメージしたスカートを纏うカラフルな「アイ・ライク・ザット」もラストまで見入ってしまう。

これらの映像も含まれた、“エモーション・ピクチャー”の『DIRTY COMPUTER: AN EMOTION PICTURE BY JANELLE MONÁE』と合わせて聴くと、本作『ダーティー・コンピューター』の世界観がまた違って見えるだろう。ビヨンセの『レモネード』(2016年)とコンセプトは似ているが、決して亜流ではない、我流且つ一流の作品が楽しめる。ミュージック・ビデオ(映像作品)の方は、アンドリュー・ドノホ&チャック・ライトニングが監督を務め、ジャネール・モネイが全編をプロデュースしている。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ダーティー・コンピューター』
ジャネール・モネイ
2018/4/27 RELEASE

当記事はBillboard JAPANの提供記事です。

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