「西郷どん」15話「打つ手なしや~」「万事休す」「万策尽きた~」さて、どうする

エキレビ!

大河ドラマ「西郷どん」(原作:林真理子 脚本:中園ミホ/毎週日曜 NHK 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)

第15回「殿の死」4月22日放送  演出:野田雄介


殿の死その1
ふたりの殿の死を描いた15話。島津斉彬(渡辺謙)の壮絶な死も描かれ、視聴率も13%台に戻った。
この回は、大河ドラマ初の試みとして、平日の深夜、ネット上でバズった番組をアンコール放送する番組「NET BUZZ」(木曜よる11時55分)での再放送もされた。
ネット受信料徴収という目標があるからか、朝ドラといい大河といい、最近のNHK のネット民への照準の当て方の執念には凄まじいものがある。

それはさておき、ついに一橋慶喜(松田翔太 先日、結婚を発表)が将軍になる決意をし、島津斉彬は列強と戦うために軍事力の強化を推し進めた(この軍事演習のシーンの撮影にものすごく力が入っているのを感じた)。
ところが、ふいに家定(又吉直樹)が亡くなり、なぜか、その場にいた井伊直弼(佐野史郎)が大老に就任、がぜん、紀州派の勢力が強くなってしまう。

家定が亡くなる前、柿の絵を描いて、秋になったら篤姫(北川景子)と柿を食べようとほのぼのしていたから、よけいに、亡くなるところは悲しい。しかも、看取ったのは、篤姫でなく、井伊直弼(佐野史郎)。
遺書を書くときに、都合よく書かせようとする場面は、「真田丸」(16年)の秀吉が亡くなる場面を思い出した。
これを御代(篤姫・北川景子)に食べさせてくれ、と柿の絵を渡しただけなのに、勝手に捏造する井伊直弼。

そのまま、大老に就任し、大きな赤鬼の仮面を持ってのっしのっしと歩いている。“井伊の赤鬼”(甲冑が赤いから)の公的イメージがなんだか悪いふうに描かれているように見えて、井伊家家臣の血筋としてはちょっと残念な気持ちに。

わかりやすい表現多数
この、赤鬼面のような、ベタファー(ベタな暗喩)がいくつも見られた「西郷どん」。
たとえば、勅が書き換えられたと、ちょうど現代の書き換え問題を思わせるようなことになって、
「打つ手なしや~」と近衛忠煕(国広富之)が嘆いて、「万事休す」と橋本左内(風間俊介)も肩を落とすなか、西郷吉之助が薩摩に戻るとき、白い椿がぼっとぼっと庭に落ちている。
次期将軍が、徳川慶福に決まったことを知って、やさぐれる島津斉彬のカットのあとに、集成館の溶鉱炉のマグマが燃えているカットが入る。これも、心のうちの現れであろう。

遡って、タイトルバックに入るところでは、画面がパリーンッと割れた。
この週の「半分、青い。」(23日放送19話)でも画面が粉々に砕けるカットがあったが、大河と朝ドラで示し合わせたのだろうか。やはりSNS狙い?

泥まみれの鈴木亮平がすばらしい
一橋慶喜を次期将軍にする野望潰えて、「打つ手なしや~」「万事休す」と来て、薩摩に戻ってきた吉之助は大久保正助(瑛太)「万策尽きた~」とすがりつく。
表現や言葉遣いがシンプルな「西郷どん」だが、江戸から薩摩に必死で戻ってきた鈴木亮平の日に焼け、埃にまみれ、無精髭を生やした表情は、誰だかわからないくらいで、その誰だかわからないくらいに顔を変えてまでリアリアズムを表現しようとする鈴木亮平は、すばらしいと思う。太ったり痩せたり、役に合わせて肉体改造することが着目されるが、この俳優は決してケレン味でそれをやっているのではなく、心から役になろうとしている、同じ事務所の松山ケンイチの流れを汲む俳優だなと感じる。

吉之助は目下、正助に「女性の格好をして女性の生活を体験」したり「恐れ知らずに、島津斉彬に手紙」を出したり、いつもひとと違うことをしてきたじゃないかと励まされる程度で(え、そのふたつだけ! という感じがした。正助は江戸の働きを見てないとはいえ)、鈴木のやや控えめな演技は、そんなまだまだ青い吉之助にぴったり。だが、島津斉彬に「今日からおまえはわしになれ」とバトンを託されたことでもあるし、これからじょじょに頭角を表してくるだろう。

殿の死その2
まだ希望を捨てずに、軍事演習を行っている途中に倒れてしまう島津斉彬。70年代のアメリカン・ニューシネマなどにありそうな、ふいに死んでしまう演出にしびれる。「太陽にほえろ」の刑事の殉職とかもそういうところがかっこよかったですよね。
月照(尾上菊之助)の「みなさんも命は大事にお使いなさい」という言葉が染みる。
チェスト! 気張れ!
(木俣冬)

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