“据え膳”を食べない独自美学に酔う池松壮亮! 自己チュー男のこだわり『宮本から君へ』第2話

日刊サイゾー

2018/4/21 02:00


 経済効率が最優先される現代社会において、いちばん真逆な方向へ突き進んでいるのが宮本浩という男です。大学を卒業して、小さな文具メーカーの営業マンとして働き始めた宮本ですが、彼のやることなすこと無駄だらけです。漫画家の新井英樹が漫画家デビュー以前に文具メーカーに勤めていた体験をベースにした同名コミックのドラマ化『宮本から君へ』(テレビ東京系)は、そんな無駄だらけの男・宮本の青春の日々が描かれます。深夜0時52分からのオンエアにもかかわらず、主演俳優・池松壮亮の宮本になりきった暑苦しい演技に感化された視聴者は少なくないようで、第1話の視聴率は「ドラマ25」枠の初回としては過去最高となる2.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)という好記録でした。第2話はどうでしょうか?

(前回までのレビューはこちらから)

大手自動車メーカーに勤める甲田美沙子(華村あすか)たちとの合コンに臨んだ宮本浩(池松壮亮)でしたが、テーブルに置かれたフルーツポンチの鉢の中に“宮本”と名前の書かれたコンドーム(開封前)が落ちたところで第1話は終わりました。いまどきの婚活パーティーだったら「宮本さんったら、準備よすぎ!」と爆笑ネタになるのでしょうが、大学を出たばかりの宮本はギャグに転嫁させることができません。毎朝、美沙子と通勤電車の中で会話するのを楽しみにしていた宮本ですが、フルーツポンチ事件の後は気まずくて、出社時間をずらしていました。職場でも同僚たちから「宮本」ではなく「ポンチ!」と呼ばれるようになり、散々な毎日です。

美沙子のことで頭がいっぱいな宮本は、仕事でも大ポカをやってしまいます。京橋のお得意先である文具店に2カ月間顔を出していなかったことが部長の岡崎(古舘寛治)にバレてしまったのです。京橋の文具店へ詫びにいく宮本でしたが、店長(綾田俊樹)は説教を滔々と垂れるものの、目すら合わせてくれません。ここで何と宮本は「人と話すときは相手の目を見て話してはどうですか?」と説教返しをするのでした。自分の職務怠慢ぶりを棚に上げて、お得意先の態度を平気であげつらう宮本。シリーズ後半から爆発することになるクレージー営業マンの片鱗さを早くも感じさせます。

当然ながらこの一件も岡崎部長の耳に入り、今度は小田課長(星田英利)に付き添われて再び謝罪に行くことになります。多分、小田課長も別にこの会社が好きで入ったわけじゃないはずです。でも、人生経験が豊富な分、小田課長は世間知らずの新人・宮本に対してもすっごく寛容なのです。一緒に詫びに行くのにイヤな顔ひとつせず、「営業マンはみんな、俺のために命を投げ出してくれる」と自慢げに語る店長を懸命にヨイショしまくります。部下思いの小田課長の熱心さにほだされ、宮本もぎこちないながらに店長の太鼓持ちに徹するのでした。合コンの席と違って、宮本はホッとします。見習うべき先輩がここにいました。ちっぽけな会社に勤める小田課長が、とても頼もしく思えるエピソードでした。

謝罪の帰り道、煙草をふかしながら小田課長は、愛想笑いもできない愚直すぎる宮本を「わかってて、損するのは利口やないなぁ」と関西弁でやんわりと諭すのでした。仕事はつまんなくても、こういう情の深い上司や先輩がいたら、ついつい職場って居着いてしまうものですよね。チュパチャップス時代からずいぶん時間は掛かったけど、ほっしゃんって脇役俳優としていい味出すようになったなぁと、しみじみさせるシーンです。ところが、後輩の尻拭いで無駄な時間を費やしたほっしゃん、いや小田課長に対して、「(損な性格の自分たちを)かっこいいと思っているんですよー」と笑顔で返す宮本は、途方もない大バカ者です。

■いまいちな女の子が、無性に愛おしく思えた瞬間



前回の合コンでは、駅のホームで面識のない美沙子に声を掛けた宮本のことを「すごいと思う」とうっとりした表情で語っていた暗くて地味な女の子・裕奈(三浦透子)に、宮本は夜の渋谷駅でばったり遭遇します。同居しているお姉さんの彼氏が遊びに来る日なので、大して好きでもない映画を観て時間を潰していたそうです。どちらからともなく、夜の街へと流れていく2人。バーで慣れないカクテルを口にした裕奈は、いつになく上機嫌です。美人偏差値の高い美沙子は口説き落とすのに手間ひまが掛かりそうですが、宮本に気があることが痛いほどわかる裕奈は、鼻毛を抜くよりも簡単に落ちそうです。あくまでも理想の女性への一点勝負か、それともハードルの低い女の子で手を打つのか。夜のバーで宮本は自問自答し、気持ちよく酔っぱらうことができません。

バーを出たときは、すでに終電間際でした。急いで駅に向かえば終電に間に合うのに、裕奈は帰ろうとしません。酔いに任せて宮本と手をつなぎ、「私、今まででいちばん楽しい日です」とはしゃいでいます。宮本はとうとう裕奈を連れて、ラブホテルへと入ってしまいます。薄っぺらなバスローブに着替え、同じベッドに入る2人ですが、悶々とした時間だけがジリジリと流れていきます。眠れずにいる裕奈は宮本が頼んでもいないのに、小学校時代の思い出話を始めます。学級会で裕奈は何度か議題になったという、まったくエロさを感じさせない話題でした。クラスでイジメに遭っていた裕奈は、担任の教師から「彼女もみんなと同じ人間なのよ」と言われ、クラスメイトたちは泣きながら謝罪したそうです。

無駄に熱い男・宮本はベッドの中で呟きます。「それって、何か悔しいよね。そんなところで謝るのなら、最初っからいじめるなよって」と返す宮本に、裕奈は「優しすぎますよ、宮本さん」と微笑むのでした。エロさをまるで感じさせない女の子・裕奈が無性に愛おしく思えた瞬間でした。思わず、宮本は裕奈のことを抱き寄せてしまいます。

この後、宮本はてっきり裕奈と朝までエッチしたんだろうなぁと思っていたら、出社した宮本の言動を見る限りではエッチはしていないそうです。据え膳に手を出さずにラブホから会社に出社した自分のことを「立派! よく耐えた!!」と自画自賛する宮本でした。処女を奪ってほしかっただろう裕奈の心情はまったく無視され、「自分が惚れた女以外とはエッチしない」という中学の頃からの独自の哲学を貫いた宮本がニヤニヤしながら鼻血を流す姿がカメラに映し出されます。宮本は優しそうに見えて、超弩級な自己チュー野郎です。

ラブホで裕奈と朝までハグしあい、京橋の文具店への謝罪も済ませ、いつになく充実感で満たされる宮本でした。客観的に見れば、恋も仕事も何ひとつ成果を上げていないのですが、本人はそのことに気づいていません。でも、こういうポジティブ思考の人間って、往々にして幸運を呼び込んでしまうものです。今度は大物です。夜の街で、美沙子とばったり遭遇するのでした。

合コン以来となる久々の再会でしたが、夜の雑踏の中でも美沙子は3D映像のように宮本の目にグ~ンと飛び込んでくるのでした。しかも、同期入社の田島(柄本時生)から「ポンチ!」と宮本が呼ばれていることから、美沙子は「ポンチじゃ、かわいそう」と笑ってフォローしてくれるではありませんか。フルーツポンチ事件のことは水に流してくれるそうです。しかも、「電車の中で学校時代のことを話す宮本さんはすごく生き生きした表情をしていて、そういう宮本さんをいつも見ていたい」とまで語っています。美女が気まぐれに発する思わせぶりな台詞に、どれだけ数多くの男たちが舞い上がった挙げ句に轟沈したことでしょう。

田島が気を利かせて去ったその夜、宮本にはまだツキが残っていました。駅での別れ際、美沙子は通行人に押され、宮本の胸の中へと倒れ込んできたのです。宮本の鼻先に、美沙子のうなじ部分がありました。このときの宮本には美沙子が愛用している香水プアゾンが、彼女のフェロモン臭に感じられたに違いありません。もう迷うことなく、美沙子にロックオンです。

次回の宮本は美沙子に誘われて会社をサボり、海へと繰り出します。回り道ばかりしている宮本は、ついに「エッチするのは惚れた女だけ」という中学以来の大願成就を果たすのでしょうか? 無駄だらけの宮本ですが、どうやらそんな無駄な部分にこそ、その人の人間性が色濃くにじみ出るようです。経済効率に反して、損をして得をする男・宮本の独自哲学がさらに炸裂する第3話も見逃せません。
(文=長野辰次)

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