フェイスブック、「データ販売会社」という「本当のビジネスモデル」露呈


 3月中旬以降、米国の株式市場で、ITハイテク関連企業の株価が軟調に推移している。最大の要因は、フェイスブックのユーザーデータが不正に第三者にわたっていたことが発覚したことだ。この問題が発覚するまで、多くの人が同社のビジネスモデルに対して無頓着かつ無防備だった。

今回、データの不正流出が明るみに出たことで、IT企業のデータ管理について社会の目が厳しくなることは避けられないだろう。そうした社会の変化に対応できない企業のビジネスモデルはワークしなくなることも懸念される。今後、米国を中心にビッグデータの扱い方などに関するルールや規範の策定が進むはずだ。それに従ってSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など自社のサービスのユーザーを増やしてデータを獲得し、それを販売することは難しくなるかもしれない。

そのほかにも、ハイテク企業の経営には、さまざまな変化が起きることが想定される。変化に対応できない企業は淘汰され、業界再編が進むこともあるだろう。今回の問題は、イノベーションをどう発揮していくかという根本的な問題にもつながる部分がある。IT業界を中心に、単一企業の独自の取り組みとしてイノベーションの発揮を目指すのではなく、よりオープンなかたちで革新や変革が目指されていくだろう。これまで好調だったIT企業は試練の時を迎える可能性が高い。

●本当のフェイスブックのビジネスモデル

従来、「フェイスブック=SNSの会社」という見方が一般的だった。確かに、フェイスブックの登場以降、Eメールに堅苦しさを覚え、フェイスブックのメッセージ機能を好む若者が増えるなど、同社は人々のコミュニケーションやネットワークの形成を大きく変えてきた。

しかし、2016年の米大統領選挙でトランプ陣営にコンサルティングを行ったケンブリッジ・アナリティカ社に同社のユーザーデータが不正にわたっていたことを見ると、この認識は適切ではない。議会証言にてザッカーバーグCEOが責任を認めたことは、ユーザーデータをはじめとするデータを同社が収集し、ビッグデータを販売することで収益を上げていたことを認めたとも解釈できる。フェイスブックはSNSをデータ収集のツールとして扱い、ビッグデータの販売を行うプラットフォーマー(ビジネスの基盤を提供する企業)と理解すべきだ。

また、今回のデータ不正流出が発覚するまで、私たちはネット企業がデータを収集し、販売することの社会的なインパクトに無関心だったと考えられる。フェイスブックは、データの活用がもたらす潜在的な影響に米国内外の社会が十分な注意を払ってこなかった状況につけ込み、SNS市場での先行者利得を確保し、その地位を築いたといえる。

米国と異なり、中国はSNSをはじめとするネット空間を政府が管理している。それは、ネット企業の影響力を理解しているからだ。2010年以降の中東・北アフリカ地域での民主化運動(アラブの春)では、人々がSNSを使って団結し、チュニジアをはじめとする独裁政権が崩壊した。そうした動きを中国は恐れている。米国の事情は異なるが、ロシアなどからのサイバー攻撃を防ぐために、データ管理に関する規制、法律の策定が急がれるのは避けて通れないだろう。

●揺らぐデジタル・マーケティングのビジネス

フェイスブックの売り上げの99%が、広告関連からもたらされている。同社はSNSの機能を拡張してユーザーを増やし、それを広告収入につなげてきた。ユーザーの満足度を高めると同時に、広告主からの支持を獲得し続けることが難しくなると、フェイスブックが成長を続けることは難しくなるだろう。

データの利用に関する規制などが策定されるに従い、個々人の好みに合ったネット広告を打ち出すことは、現在に比べると難しくなることが想定される。それは、フェイスブックの収益を悪化させる要因だ。加えて、米国では一部の政治家が、ネット企業の収益源となってきたデジタル・マーケティング(ネット上での、企業の商品やサービスのプロモーション)に対する慎重な考えを示し始めている。こうした考えがどのように規制などに反映されていくかはわからないが、従来に比べ、IT関連企業の経営リスクが意識されやすくなっていることは確かだ。

実際、ここ1カ月ほどハイテク銘柄が多く上場する米国のナスダック市場全体の平均的な騰落率や、株価の水準を示すナスダック総合指数は軟調に推移している。その背景には、今後の規制強化などによってフェイスブックだけでなく、ITハイテク企業全体の成長性が下押しされるとの懸念がある。フェイスブック以外にも、ツイッター、ネットフリックス、ユーチューブなど、コミュニケーションのサービスや動画などのコンテンツを充実させてユーザーを増やし、デジタル・マーケティングのプラットフォームとして成長してきたケースは多い。

重要なことは、環境の変化を受けて、それぞれの企業が新しいサービスなどを生み出し、人々からの支持を獲得し続けていくことができるか否かだ。それができない場合、フェイスブックは社会からの支持を失い、収益性が悪化する恐れがある。その状況が続くと、企業は市場原理に従って淘汰されるだろう。今後、そうしたケースが増える可能性がある。

●ハイテク業界は再編の時代へ

大局的に考えると、当面のITハイテク企業の勢力は、アマゾンのように自社のプラットフォームに社会の一部を吸収する企業と、それ以外の企業に二分化する可能性がある。端的にいえば、ハイテク業界は再編の時代を迎えるということだ。

それは、グーグル対ヤフーの競争に次ぐ、大きな変化といえる。グーグルは、ヤフーよりも機能が優れ、使いやすい検索サイトを生み出した。その後、SNSが登場し、デジタル・マーケティングの空間は一般のサイトからSNSなどへ移行した。事業環境の変化に対応するために、グーグルはアルファベット(持ち株会社)の傘下に検索、AI(人工知能)などの事業を集約した。つまり、事業ポートフォリオの分散で変化に対応しようとした。ただ、自動運転技術への不安など、アルファベットが今後の変化に対応できるかは見通しづらい。規制強化やユーザー(社会)の離反から、競争力が低下するリスクもある。

いい換えれば、自社でSNS、検索、AI関連などのテクノロジーを開発し成長を目指す発想では、環境の変化に対応するのは容易ではないということだろう。IT先端技術が生み出すテクノロジーは、未知のものが多い。その分、人気を獲得できれば、急成長は可能だ。社会がそれに習熟せず、どのような規制やルールが必要かわからなかったために、フェイスブックは成長を遂げることができたともいえる。リスクが顕在化し、あるべき規制が施行され従来の発想が通用しなくなると、ビジネスモデルの持続性は失われるだろう。

その状況に自力で対応するのは難しい。現時点でこの問題に対応する発想を持っているのはアマゾンだろう。同社は、買収のみならず、提携などのアライアンスを通して自社の事業領域を広げてきた。フェイスブックの問題発覚は、ITハイテク企業を中心にライバルや異業種の企業と連携し、従来以上にオープンなかたちでのイノベーションの発揮、および、ビジネスモデル構築が重視される転換点となる可能性がある。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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