「西郷どん」14話。視聴率が下がっているのは「大半、青い。」からかも

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大河ドラマ「西郷どん」(原作:林真理子 脚本:中園ミホ/毎週日曜 NHK 総合テレビ午後8時 BSプレミアム 午後6時)

第14回「慶喜の本気」4月15日放送  演出:岡田健


青春ドラマ過ぎる
西郷吉之助(西郷どん)は大久保正助(瑛太)を伴って熊本に向かい、ご重役や先生方に紹介したのち、正助は薩摩に戻り、吉之助は江戸に向かった。互いに頑張ろうと励まし合いながら。

13話から引き続いて青春ドラマのようにはじまった「西郷どん」14話は、視聴率11.9%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)だった。演出は「篤姫」もやっていた岡田健(「西郷どん」では7、8話につづいての登板)。

当初14%代をキープしていた視聴率がじょじょに下がっているのは、「立花登 青春手控え」かと思う「青さ」がネックになっているのではないだろうか。話が「大半、青い。」のだ。
迫りくる海外の脅威に対して、開国するか徳川家を守るか・・・とのっぴきならない深刻な事態であるにもかかわらず、一橋派VS南紀派の争いがかなり単純化されて描かれている。各々の思想や政策が具体性に欠け、主人公の吉之助が、「家族」「友情」「命は同じ」「命を賭ける」とかいう漠然としたムードに流されて行動しているので、食い足りない。いや、もちろん、「家族」「友情」「命」はとても大事なのだが、言葉だけがうわ滑っている印象なのだ。

例えば、14話では、橋本左内(風間俊介)が、いかに慶喜が優れた人物か人々に伝えるためにまとめた「一橋言行記」を、「命を賭けて」左内が書いたと吉之助は言う。
9話で、島津斉彬(渡辺謙)に「なんでもかんでも命を賭けるな 命は一つじゃ」と言われているにもかかわらず、「命を賭けて」をカジュアルに使っている印象を受けるのだ(いや、左内はほんとうに命を賭けて取材して書いたのかもしれないが)。
視聴率が下がった原因と囁かれる、ドラマを休んでの特番「『西郷どん』スペシャル~鈴木亮平×渡辺謙の120日~」(4月1日放送)で、「なんでもかんでも命を賭けるな 命は一つじゃ」は渡辺謙のアイデアだったことが語られたのは、この14話と9話の吉之助の「命を賭けて」に感じる矛盾への言い訳のようにも思えてくる。そして、渡辺謙は、「命を賭けて」が「倍返しだ!」的なドラマの決め台詞のように使われることが気になったのかなあという気がしてくる。
ただ、作家の書いた原稿を、他者がピンポイントで修正すると、前後に矛盾が生じる危険性があるので、注意が必要という好例だ。

「幾久しく友好を保ちたい」
安政4年、ハリスが、家定(又吉直樹)に謁見。日米修好通商条約締結を迫った。
家定は「幾久しく友好を保ちたい」と言って、ほっとさせるが、何度も何度も繰り返し、場の雰囲気がおかしくなる。
篤姫(北川景子)と事前に練習したもので、いわゆるなんとかのひとつ憶えのようなものだった。

篤姫にも「御台とも幾久しく友好を保ちたいものだ」と言う家定。
家定はドラマでの描き方として、うつけの振りしていたパターン(織田信長などもこのパターン多い)があるが、「西郷どん」では、うつけゆえに純粋で鋭いところは鋭いというふうに見える。うつけを演じる家定をケレン味たっぷりに楽しませてくれた「篤姫」の堺雅人に対して、「西郷どん」の又吉は、作家としてのある種の天才性が役に投影されているようだ。

「すべて大嘘だ」
水戸斉昭(伊武雅刀)の悪い噂を井伊直弼(佐野史郎)が流し、味方を増やそうと動き出しているので、吉之助たちは、一橋慶喜擁立に向けて、諸般の大名を説得することと、慶喜をその気にさせる任務を請け負う。

まず、橋本左内(風間俊介)が「一橋言行記」を(吉之助いわく「命を賭けて」)書き上げる。
だが慶喜は、「すべて大嘘だ」「親父(水戸斉昭)の作り話だ」と破ってしまう。
たとえば「利き腕の右手を守るため右手を下にしていた」という逸話は、寝相が悪かったから、親父が無理やりそうしただけだという慶喜。史実と思われていることは必ずしも正しくないという一例だ。

志のない者には将軍はつとまらないという慶喜。
異国の脅威を知っている者だからこそ将軍になれるという左内。
ここ(品川宿)では「ヒー様」と呼べと言う慶喜は、“一橋慶喜”とは違う人間になりたくて、“ヒー様”という遊び人の別人格を作って、“演じて”いるように描かれている。

一橋派VS南紀派
子どものできない男の家定、女遊びしまくりの慶喜という点においても、家定と慶喜の個性は明確に二分される。
斉彬が建白書を提出したことから、慶喜を推す一橋派と、徳川慶福を推す南紀派の争いが激化していく。
井伊直弼に呼び出された吉之助は、身の程をわきまえず直弼に講釈を垂れる。
「国を守るためにこの国を変える」と主張する吉之助。
「この変えてはならないものがある」「徳川を守る」と反論する井伊直弼。
井伊直弼は、吉之助の薩摩の家族を盾にして、力を貸せと脅す。
その卑怯なやり方に、怒る吉之助。
このときの鈴木亮平の表情が情感、豊か。単純な怒りでない、様々な気持ちを感じさせる。

ここでも命
ついに篤姫(北川景子)は、幾久しい友好のためにお願いしたい儀があると、次期公方を慶喜にしたらどうかと持ちかける。
この国の民は「無事息災」(死なない)と言われ、家定は慶喜を次期将軍にすると決める。
それでも頑なに拒否する慶喜と、破られた「一橋言行記」の写しをちゃっかり配っている左内。
攻防が繰り広げられるなか、慶喜に暗殺(彦根の回し者)の手が・・・。
吉之助は、暗殺者を殺す。
はじめて人を殺して「人間の血ちゅうとは熱かもんじゃな」と呆然となる吉之助。
武士なのに、この反応はおかしいという声がSNSで見受けられたが、こどもの頃の怪我で刀をもてなかったから、慣れてないのも無理はないとかばっておきたい。
自分が殺した相手にも、「命を賭けた主君」や「帰りを待っている親兄弟」がいると、自分と同じ、ひいては、慶喜とも同じだと感じて嘆く吉之助。
この反応のために、井伊直弼が薩摩の家族を盾にして脅したところで、激しく、でも、家族を思って反応する場面があったのだろう。
そんなこんなで、ついに慶喜が将軍になることを決意。
「おまえの言葉には命が籠もってない」と井伊直弼を叱りつける慶喜。ここでも「命」。ゴルゴ松本のギャグのようになりませんように。

尊皇攘夷思想は複雑だし、一橋派VS南紀派の正当性を極端にどちらか寄りにできない事情もわかるが、
佐野史郎も鈴木亮平も風間俊介も渡辺謙も伊武雅刀も知性ある俳優で、松田翔太も「ライアーゲーム」に主演していたし、各々の鋭利な頭脳プレーも見たかった。
まだ序章であり、これからじょじょに吉之助が成長し、複雑な像を形成していくのかもしれないが。
「大半、青い。」から「半分、青い。」へ、そして「全然、青くない。」になってほしい。
(木俣冬)

当記事はエキレビ!の提供記事です。

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