『崖っぷちホテル!』アイドル・岩田剛典の“愛らしさ”暴発中! 「三谷幸喜っぽさ」から脱却できるか

日刊サイゾー

2018/4/22 15:00


 岩田剛典の民放連ドラ初主演作『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も15日にスタート。第1話の視聴率は10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まずまずの好発進です。

さてこのドラマ、がっつり岩田ファンに向けてターゲットを絞ってきたように見えます。とにかく、岩田くんの“愛らしさアピール”がすごい。終始アヒル口でニコニコニコニコしながら「ワクワク♪」とか言ってダブルピースをクニクニさせる様など、とても『HiGH&LOW』シリーズで生コン飲んでた人とは思えません。「琥珀さんヨォオ……!」なんて叫び出しそうな気配が、まるでありません(といっても、こっちが本来のパブリックイメージでしょうけど)。

人物の配置も、基本的には「岩田くん vs その他大勢」という設計になっているので、『崖っぷちホテル!』のコンセプトは、岩田くんによる岩田くんのためのアイドルドラマと見て間違いなさそうです。何しろ、その狙いがミエミエにもかかわらず、岩田くんがずっと愛らしいんだもの。

そういうわけですので、この岩田くんの愛らしさが受け入れられれば最後まで楽しく完走できそうですし、逆に「うざい」「あざとい」「そもそもイケメンではない」「幼稚」「バカ」などと感じてしまうと、早々に離脱せざるを得ない感じです。

■「何が始まるか」は、すごくよく理解できる



物語は、岩田くん演じる青年・宇海直哉が、倒産寸前の老舗ホテルを訪れる場面から始まります。汚ったないコート姿でロビーのイスに座り込んで眠りこけていたかと思ったら、目覚めるやいなや1泊22万円もするスイートを所望するなど、なかなかに怪しい人物です。

部屋に大量のハガキを持ちこんだり、20誌にも及ぶマイナーな雑誌を買って来いと客室係に言いつけたり、革靴(かかとが潰れている)を廊下に出して「磨いといて」と無言のメッセージを発したり、あげくの果てに「水遊びするからプールの水を入れ替えろ」と命じたり、愛らしい笑顔で無理難題を次々に突きつける宇海。シナリオは、その端々に「なんか宇海は、ホテルのことをわかってるっぽい」というニュアンスを挟みつつ、「基本的には怪しいヤツ」というラインを、絶妙のバランス感覚で綱渡りさせてみせます。

そんな宇海の理不尽な要求を、一手に引き受けるのが新米支配人の桜井佐那(戸田恵梨香)です。なぜ佐那が一手に引き受けるかといえば、従業員は誰も言うことを聞いてくれないし、そもそもやる気が全然ないからです。

つまり、このホテルが倒産寸前である所以は、支配人に威厳がなくて、従業員にやる気がないからなのです。一連の怪しい行動で、宇海はそのすべてを見抜いていました。

ドラマ後半、ニコニコ宇海が、実は有名ホテルチェーン「バリストンホテル」の副支配人だったことが明らかになります。「少し思い入れがあるから」このホテルを訪れたという宇海は、「嫌がらせをされたような気分」「がっかりした」と言って、ホテルを去ろうとします。

しかし、そんな宇海を呼び止めたのが佐那でした。本気でこのホテルを立て直すことを決意した佐那は、的確な指摘をしてくれた宇海に「ここで私たちと、一緒に働いてください」などと無茶なことを言い出し、宇海がそれに「いいですよ、今すぐ電話してバリストンを辞めます」などと無茶な返答をしたところで、第1話はここまで。

このホテルの名前は「ホテル・グランデ・インヴルサ」。ポルトガル語で「大逆転」という意味だそうです。果たして宇海と佐那は「大逆転」できるのか……というお話が展開されますよ、という作品の目的地が、すごくよく理解できるスタートだったと思います。

■「三谷幸喜っぽさ」の中に立ち上がった個性



脚本は土田英生さん。今作は、演劇畑出身らしい「ホテル固定」の舞台設定で、原作なしの書き下ろしオリジナルになります。

とはいえ、一見した印象は「書き下ろしのオリジナル」っぽくないなーという感じ。どこかで見た設定、どこかで見たお話、どこかで……というか、言ってしまえば、風景は映画『THE 有頂天ホテル』(2006)を、筋立てはドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)を想起させます。また三谷幸喜です。この国でシチュエーションコメディを作ろうと思ったら、もう三谷幸喜の呪縛からは逃れられないのかもしれません。

土田さんだって、この『崖っぷちホテル!』を指して「三谷幸喜っぽい」という感想が出ることは想定内でしょう。むしろ、それをまったく恐れてないと感じました。「三谷幸喜っぽい」だけでは終わらない個性とクオリティを出せるという確信のもとに書いているはずですし、とりあえず第1話が終わったところでも、岩田くん演じる宇海の愛らしさと弾ける笑顔は、このドラマの個性・魅力として立ち上がっていたように感じます。

■手堅い伏線と「再建すべき」という思いに共感させる仕掛け



今後、宇海がさまざまな手を使って、やる気のない従業員たちの意識改革をしていくのだろうな、という予想が立ちます。

この従業員たちは、その多くが「今は腐ってるけど、やればできる子」として紹介されました。

シェフの江口(中村倫也)は確かな経験と技術を持っているものの、客の質が落ちてやる気がなくなり、競艇に没頭するばかり。

副支配人の時貞(渡辺いっけい)とバーマスターの梢(りょう)は、かつてのホテルの価値を理解しているけれど、先々代支配人(佐那の父)に心酔していたこともあって、佐那を認めることができない。

パティシエのハル(浜辺美波)は、やる気もあるしデザート作りの天才だけど、空気が読めない。

特にエピソードは紹介されませんでしたが、掃除をさぼってトイレットペーパーを持ち帰ってばかりの清掃員・尚美(西尾まり)も、公式サイトでは「元腕利き清掃員」と紹介されています。

つまり、宇海と佐那が彼らの意識を改革して、彼らが本来の働きを取り戻しさえすれば、ホテルは必ず再建できると、第1話にして約束されているわけです。1人ひとり、彼らにきっかけを与えて意識改革のエピソードを構築しつつ、宮川大輔、くっきー、チャド・マレーンの吉本芸人3人衆が面白おかしく立ち回る……なんだかこの『崖っぷちホテル!』には、失敗しなそうな雰囲気が漂っています。

こうして、「どうすればホテルが再建できるか」については手堅く伏線が張られました。もうひとつ「そもそも、なぜこのホテルを再建すべきか」にも、ドラマは説得力を与えています。

もとより主人公が「思い入れ」があって、ヒロインが「やりたい」と言っているだけでも物語は成立するわけですが、ドラマはこの「ホテル・グランデ・インヴルサ」が再建されるべきホテルであることについても、語ることを怠りません。「別に潰せばいいじゃん」と、視聴者に思わせません。

宇海が佐那にプールの水の入れ替えを命じたのは、水遊びをするためではありませんでした。この季節、この時間になると、ちょうど夕陽が水面に反射して、ホテル全体の天井を、ゆらめく黄金に染めるのでした。それはまるで、オーロラのような、5年に一度訪れる常連客に言わせれば「夢の国」のような光景。この映像で「これはすごいホテルだな」と視聴者が感じれば、おのずと宇海と佐那の行動に共感できるという仕掛けです。最初に意識改革された「やればできる子」は、従業員ではなくホテルそのものだったというわけです。

というわけで、実に用意周到にスタートしたように思われる『崖っぷちホテル!』。映画『約三十の嘘』(04)でも見られましたが、限られたスペースと人数の中でキャラクターの心を開かせ、その性根の良さを丁寧に引き出していくのは、土田さんのもっとも得意とする作劇だと思われます。このドラマは面白くなりそうというか、たぶんなると思う、なればいいかな、まあコケる覚悟はしておきますけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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