「できないのに承認欲求の強い部下にうんざり…」上司が見直すべきことは?【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!


曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社新書)など著書多数。

CASE23:「成果を上げられないのに、主張するばかりで承認欲求の強い新人メンバーにうんざりします」(30歳男性・インターネット関連会社勤務)

<相談内容>
今年の1月から、入社1年以内の新人ばかりを集めた営業チームのマネジメントを任されています。メンバー6人のうち、4人は期待通りに働いてくれて、きちんと目標数字を達成しています。ただ残り2人に頭を悩ませています。

きちんと仕事をしている4人と比べると、2人は期待値の半分ぐらいしか成果を上げていません。何度指導しても、業務効率が悪く無駄なことばかりに時間を使っているように感じます。にもかかわらず「自分は頑張っている」と主張だけは一人前です。

厳しく指導した時期もありましたが、叱ったとたんにやる気を失うので、大したことのない成果でも頑張りを褒めるようにしています。しかし、実績が低く目標達成もしていないメンバーを褒め続けると、本当に実績を上げているメンバーの信頼を損ないそうで不安です。うまい立ち回り方を教えてください。(営業マネージャー)

デキない理由を、部下のせいにしていないか?

大したことのない成果なのに、褒めているのですか。相談内容を見ると、できない部下2人よりも、あなたのマネージャーとしての姿勢に問題があるような気がします。

「厳しく指導するとやる気を失う」とのことですが、「厳しい指導」の反対語は「頑張りを褒める」でも、「ネガティブなフィードバックをしない」でもありません。

INSEAD(欧州経営大学院)教授のエリン・メイヤーは、著書『異文化理解力』の中で、「日本人のコミュニケーションは極めてハイコンテクト(言葉よりも、その場の雰囲気や背景など言外を重視すること)で、直接的なネガティブ・フィードバックを最も嫌う」と指摘しています。「部下を厳しく指導したらやる気を失った」ということは、みんなの前で叱責する、失敗を厳しく責めるなど、日本人が嫌う直接的なフィードバックをしてしまったのではないでしょうか?

相手はまだ仕事のできない新人です。みんなの前で叱れば自信を失い、やる気をなくすというのは予想できたこと。叱るべきことがあれば別室に連れ出す、いい点は褒めつつ悪い点を指摘する、現状の改善方法を事例を交えてアドバイスするなど、間接的にマイナスを指摘し指導する方法はほかにいくらでもあったはずです。

それなのに、何の工夫もせぬまま、一番簡単な「褒める」という方法に留まっているのが気になります。おそらく、「ちょっと怒ったぐらいでヘソを曲げるのならば、褒めときゃいいんでしょ?!」と投げやりな気持ちになっているのでしょうが、これでは彼らが成長するはずはありません。

「自由にやらせる」は、必ずしも有効とは言えない

相談者は30歳でマネージャーに就任したとのこと。勤務先の規模はわかりませんが、おそらく営業としてバリバリ活躍し、その成果が認められ若くして抜擢された「デキる人」なのでしょう。

そういう「デキる営業」上がりのマネージャーが陥りがちなのが、部下に「インセンティブ・マネジメント」を強いること。インセンティブ・マネジメントとは、「目標達成のインセンティブを提示し、あとは自由に行動させる」というやり方です。

自由に行動して成果を上げてきた人がマネージャーになると、「部下に自由にやらせてあげるのはいいことだ」と思い込んでいるケースが多いのです。もちろん、営業としての基本ができている人が相手ならば、このやり方でも通用するでしょうが、あなたの悩みの種になっているのは「まだ成果を上げられていない新人営業」です。基本ができていない人に、同じやり方を強いてはいけません。

できない人には、徹底した「行動マネジメント」が必要です。

人は自由にされれば自由に行動できるかというと、決してそんなことはなく、多くの場合は足が止まってしまうもの。ましてや、できない人が自由を与えられたら…何をやっていいのかわからぬまま、その場に立ち止まってしまうか、やみくもに、非効率に行動してしまうだけです。
あなたの部下2人は、まさにこの状態に陥っているのでしょう。つまりはあなたのマネジメントに問題があるのに、「業務効率が悪く無駄なことばかりに時間を使っている」とマイナス評価するのはどうなのでしょう。

自分の営業の「型」を部下に徹底的にたたき込み、行動管理する

今、あなたがやるべきことは、「何時までに何件の顧客に訪問して、何を話すのか」まで徹底的に落とし込んだ営業の「型」を作り、その型どおりの行動を取るよう2人に指導し、行動管理することです。すなわち、営業のやり方、仕事の進め方を1から10まで徹底的にたたき込むというやり方です。

この連載でも何度も取り上げている言葉に、「守破離」というものがあります。師匠から教えられた型を「守」り、それを自分のものにする過程で少しずつ改善を加えて師匠の型を「破」り、自分のスタイルが確立できたら師匠の型から「離」れて自由になる。この段階を踏んでこそ、一人前になれるという考え方です。

2人の部下には、型を徹底させることで、まずはこの「守」を身につけさせましょう。「守」ができて初めて、今まであなたがやってきた「褒める」「叱る」という、「破」につながるマネジメントが効いてくるのです。

人が成長するのには順序があります。相手が新人で、まだ一度も成果が出せていないならば、それは本人のせいではなく、マネージャーであるあなたのやり方が間違っているということ。

自分が心地いいと感じ、やりやすいと思っている「自由の自己責任によるインセンティブ・マネジメント」はいったん捨てて、彼らを徹底的に「型」にはめてください。そうすれば早晩、他のデキる4人と同じステージに上がることができ、チームの足並みがそろうことでしょう。

これまで4カ月間、自由にさせていた反動は大きいと思います。「自己主張だけは一人前」とのことですから、初めは窮屈さを感じ、文句を言ってくるかもしれません。しかし、しばらくすれば「やるべきことが明確になり、行動しやすくなった」と気づくでしょう。自由に動くよりも断然効率的だと感じられれば、成功体験を得られる日も近いと思いますよ。

<アドバイスまとめ>

自分が成長できた方法が
部下にも有効とは限らない。
部下が「できない」とこぼす前に、
自分のやり方を見直すべき

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭


 

当記事はリクナビNEXTジャーナルの提供記事です。

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