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実録犯罪やタブーが大好きな韓国映画の醍醐味! 男のフェロモン祭『タクシー運転手』『犯罪都市』

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 おもろい映画をつくることに貪欲な韓国映画界が大好物にしているジャンルがある。それは実録犯罪ものと社会的タブーを題材にしたサスペンス作品だ。国内マーケットが限られている韓国は、日本よりも映画の企画を通すことがずっと難しい。それゆえに普段は映画に興味を持たない層を劇場へと足を運ばせ、観客の心にグサッと突き刺さるインパクトのあるテーマ性が欠かせない。朝鮮半島の南北分断を扱った『シュリ』(99)や『シルミド』(03)、迷宮入りした連続殺人事件の謎に迫った『殺人の追憶』(03)など、政治タブーや実話ネタを栄養にして、韓国映画は大きく成長を遂げてきた。GWシーズンに公開される『タクシー運転手 約束は海を越えて』と『犯罪都市』は、どちらも実話ベースであり、タブー要素を含んだ韓国映画ならではの醍醐味が味わえる注目作となっている。

韓国の国民的人気俳優ソン・ガンホが主演した『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、韓国で1,200万人以上を動員した大ヒット作だ。この作品で描かれるのは、1980年5月に起きた「光州事件」。長年にわたって軍事独裁政権を築くことになる陸軍少将・全斗煥がクーデターによって韓国大統領の座を手に入れたことに反対して、光州市の大学生や市民は民主化を訴える抗議デモを行なった。全斗煥政権はこれを暴動と見なし、韓国軍が出動。9日間に及んだ騒乱で、200名を越える死者を出している。韓国の現代史におけるトラウマ的な大事件だった。光州市のある全羅道と全斗煥ほか歴代大統領の出身地である慶尚道との地域対立など複雑な歴史背景も絡んでいることからタブー視されがちな光州事件を、平凡なタクシー運転手の視点を通して、平易かつエモーショナルな娯楽作に仕立てている。

小学校に通うひとり娘とソウルで暮らしているマンソプ(ソン・ガンホ)は気のいいタクシー運転手だ。街でデモに参加している大学生を見かけると「国家に逆らうなんて、とんでもない奴らだ」と苦虫を噛み潰していた。そんなとき、マンソプはドイツ人の記者ピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せて、光州市まで往復するという仕事を請け負う。当時は戒厳令が敷かれ、通行時間が規制されていた。うまく往復できれば10万ウォンと聞き、家賃の支払いに困っていたマンソプは大喜びで飛びつく。このときのマンソプは、光州でどんな悲惨な光景を目撃するか夢想することができなかった。

光州へ向かう道路はすでに軍部によって検問が置かれていたが、そこはマンソプの口八丁手八丁ぶりでスルーすることに成功。約束どおり、ピーターを光州に無事に送り届けるも、街はゴーストタウン状態となっていた。街は機能しておらず、道を歩く人影も少ない。老女に頼まれたマンソプが病院に向かうと、血を流した学生たちが溢れ返っていた。まるで野戦病院のようだった。

それまで学生たちの政治運動をバカにしていたマンソプだが、街でカメラを回し始めたピーターに付いていくと、衝撃の場面に出くわす。デモに参加している学生だけでなく、丸腰の市民にまで軍隊は一斉射撃を加えていた。催涙弾と銃弾が飛び交い、逃げ惑う市民たちの中には私服警官が交じり、警棒で殴りつけている。抵抗する人間は、すべて北朝鮮側の工作員と見なされた。軍隊経験のあるマンソプには信じられない光景だった。国家の平和のために尽力していると信じて疑うことのなかった軍や政府が、一般市民たちを粛正する地獄絵図に、マンソプは言葉を失ってしまう。

ピーターからお金を受け取り、幼い娘が留守番をしている我が家に早く帰ることだけを考えていたマンソプの心の中で何かが大きく崩れていく。自分は娘との平和な家庭を守ることしか頭になかったが、この街では名もない学生や市民たちが社会の民主化を求めて、体を張って闘っている。光州で起きた悲劇は報道管制によって、市外には伝わっていない状態だった。ピーターを国外へ脱出させ、光州事件の真相を世界中へ伝えよう。カタコト英語でしかコミュニケーションできないピーターとの最初の約束を果たすため、マンソプは行きよりも遥かに軍の監視が厳しくなった帰路を強行突破することになる。

光州事件を地元市民の立場から描いた『光州5・18』(07)でも、主人公はタクシー運転手だった。実際に光州事件ではタクシー運転手やバスの運転手たちが活躍したことが伝えられている。軍隊による学生への弾圧ぶりがあまりにも陰惨だったため、見かねたタクシー運転手が怪我を負った学生を乗せようとすると、タクシー運転手やその場に居合わせた市民たちまで容赦ない暴行に遭い、そのため騒ぎが光州市全域へと広がっていった。駆けつけた他のタクシー運転手やバス運転手たちがタクシーやバスでバリケードを築き、完全武装した軍隊を相手に抵抗を続けた。同業者である光州のタクシー運転手テスル(ユ・ヘジン)の情の深さやジャーナリストとしての使命感に燃えるピーターたちに感化され、平凡な男マンソプが持ち前の愛嬌とプロのドライバーとしての技量を武器に国家権力を相手に闘う姿は鼻の奥をツーンとさせるものがある。

旬男マ・ドンソク主演の『犯罪都市』も極太系の実録サスペンス映画だ。こちらは北朝鮮と国境を接する中国東北部(旧満州)に暮らす少数民族“中国朝鮮族”というマイノリティーをモチーフにしたポリスアクションもの。韓国映画ファンの間では『哀しき獣』(10)で取り上げられて以降、要注目キーワードとなっていた“中国朝鮮族”だが、『犯罪都市』では組織犯罪に手を染める中国朝鮮族と凶悪事件を専門に扱う刑事たちとの死闘を描いている。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)でゾンビの群れを素手でなぎ倒したマッチョ俳優マ・ドンソクが、今回もその腕っぷしの強さをぞんぶんに発揮している。

日本では少数民族がらみの問題を映画化しようとすると圧力団体が動き始めるため、クレームが来ることを苦慮して配給会社や劇場側は腰が引けてしまう。その点、韓国映画界はビジネスとして充分に採算が取れると踏めれば、GOサインが出る。実際にソウルのチャイナタウンで起きた実録犯罪事件というリアリティーとマ・ドンソクのパンチの破壊力とが相乗効果で観客をノックアウトする。ナイフや斧を持った凶悪犯たちに平然と立ち向かうドンソクの厚い胸に、女性ならずとも一度は抱かれたいと思うのではないだろうか。

韓国映画では、警察は腐敗した権力構造の象徴として描かれることが多い。『犯罪都市』の主人公である衿川警察に勤めるマ・ソクト(マ・ドンソク)も違法尋問は平気でやるし、上司を欺くために口から出まかせも吐き、品行方正な公務員には程遠い暴力刑事だ。でもその一方、両親のいない少年のことを気に掛け、入院した部下のために見舞金を集めるなど、思いやりに溢れたひとりの生身の人間であることに気づかされる。

古くから列強国の思惑に左右され続け、今なお同じ民族が南北に分断されたまま暮らすことを余儀なくされていることから、韓国人の多くは国家体制や現状の社会に対して常に懐疑心を抱いている。国家や社会が信じられないのなら、信頼できる人間を自分たちで見つけるしかない。日本でもてはやされる痩身のイケメン俳優とは真逆なポジションにある、ソン・ガンホやマ・ドンソクといった男ぐさい骨太な俳優たちが韓国で深く愛されている理由が、両作を観るとすごくよく分かる。
(文=長野辰次)

『タクシー運転手 約束は海を越えて』
監督/チャン・フン 脚本/オム・ユナ
出演/ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
配給/クロックワークス 4月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
(c)2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.
http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

『犯罪都市』
監督・脚本/カン・ユンソン 武術監督/ホ・ミョンヘン
出演/マ・ドンソク、ユン・ゲサン、チョ・ジェユン、チェ・グィファ、チン・ソンギュ、パク・ジファン、ホ・ソンテ
配給/ファインフィルムズ 4月28日(土)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
(c)2017 KIWI MEDIA GROUP & VANTAGE E&M. ALL RIGHTS RESERVED 
http://www.finefilms.co.jp/outlaws/

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