“関ジャニ∞・渋谷すばる退所”に絶望するエイターへ――臨床心理士が「心の回復法」を助言


 4月15日、関ジャニ∞の渋谷すばるが、グループからの脱退、そしてジャニーズ事務所からの退所を発表。同日都内ホテルで行われた会見で、渋谷は「この度、ジャニーズ事務所を辞めさせていただく決断を致しました」と報告し、「この先は、今までの環境ではなく、全て自分自身の責任下で今後の人生を音楽で全うすべく、海外で音楽を学び、今後さらに自分の音楽というものを深く追求していきたい」と退所理由を告白した。

これまで渋谷を、また関ジャニ∞を応援し続けてきたファンの間には、大激震が走り、ネット上には「ショックすぎる」「涙が止まらない」「すばるの夢はわかるけど、辞めないで」といった悲痛な声が飛び交うことに。発表から数日たった現在でも、ファンはショックから立ち直れず、「もう生きていけない」「この喪失感をどうすればいいのか」「仕事にも身が入らない」「つらすぎて立っているのもやっと」などと、その心中をネット上に吐き出している。

愛してやまないアイドルが、突然目の前からいなくなってしまう――これは、アイドルを応援する者にとって、いつ何時起こるかもしれない事態。もし、そういった状況に立たされてしまったファンたちは、自分の心の傷をどう回復させていけばいいのだろうか。神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授である臨床心理士の杉山崇氏に話を聞いた。

「突然、婚約破棄された」のと似たような心境


 まず杉山氏は、「アイドルというのは、夢や希望を与えてくれる、つまり暮らしに華を添えてくれる存在」と前置きをして、現在関ジャニ∞ファンが置かれている心理状況について、次のように解説をしてくれた。

「『人は、衣食住が足りているだけでは生きられない。何か酔いしれるものがなければ、つまらなさを感じてしまうもの』というのは、心理学だけでなく、社会学や人類学でもいわれていること。つまり、アイドルとは生きる喜びを与えてくれる存在であり、そのアイドルがいなくなってしまうのは、“生きる喜びのロス”なのではないでしょうか。昔からよく『子どもや孫が生きる喜びになる』といわれるだけに、関ジャニ∞のファンの方は、いま子どもや孫を失くしたのと同じような気持ちになっていると思います。ただ、子どもや孫は裏切ったり、自分の思い通りにならないこともありますが、アイドルは、決して裏切らないで、生きる喜びを与えてくれる存在。ゆえにファンにとって、アイドルはそれら以上に大事な存在になると考えると、突然の脱退・退所で受けたショックの大きさは計り知れません」

ジャニーズの場合は、アイドルと擬似恋愛をしているファンも少なくない。杉山氏の話に照らし合わせると、生きる喜びを与えてくれた彼氏が突然いなくなったのと同じ状況ともいえるだろう。

「ファンの方は、渋谷さん、関ジャニ∞とともに、自分の人生を歩むつもりで、長年応援していると思うんです。だから、自分の人生の一部を失ったも同然ですよね。たとえるなら、突然、婚約破棄をされた感じなのでは」

では、ファンたちは、その傷ついた心をどう癒やすべきなのだろうか。渋谷を、そして関ジャニ∞のこれからを、前向きな気持ちで応援したいと思いつつ、深い悲しみから脱せないという人も大勢いるが……。

「心理学では、『悲しむだけ悲しむ』のをオススメする場合が多いですね。心理学用語で『モーニング・ワーク』、日本語では『喪の仕事』と呼ばれているのですが、『悲しむだけ悲しむ』ことにより、その対象がいなくなった人生を受け入れる、言ってしまえば“儀式”みたいなものです。この儀式から逃げ続けていると、ずっとじわじわとした悲しみが続いてしまいます。いまはつらくて、コンサートDVDやテレビ番組を見られない、CDも聞けないという方もいるかもしれませんが、いっぱい見たり聞いたりして、悲しむことをした方がいいと思います」

渋谷は、7月15日にグループを脱退するため、夏の全国ツアーには不参加となる。ファンの中には、「すばるのいないコンサートを見るべきか否か」と悩んでいる者も少なくない。

「こういう表現がいいかどうかはわからないのですが……“大切な人との死別”と重ねて考えてみると、このコンサートは、“死後から四十九日までの間”と似たようなもの。一般的に、亡くなった方は、49日間この世に漂っているといわれ、遺された人は『いまここにはいないけれど、まだこの世のどこかにはいる』と感じると思うのですが、同様にファンの方も『ステージには立っていないけれど、まだジャニーズ事務所にはいる』と感じるのではないでしょうか。ちゃんと悲しむために、“いる/いないの中間”を受け止める……そういった意味で、ファンの方はツアーに参加した方がいいと思います」

実際の退所は、それから数カ月先の12月31日だが、「私は、渋谷さんがファンにモーニング・ワークを行う時間を与えてくれたのではないか、と思うんです。単純に契約上の都合によるものかもしれませんけれど、ファンへの愛情を感じました」という。

渋谷の脱退・退所劇で、よく比較されているのがSMAPの解散だ。解散を最終決定したのはメンバーだとしても、そこに至るまでには、事務所関係者が深く関与しており、いまも多くのファンが「SMAPは事務所に解散“させられた”」と憤っている。一方で渋谷は、自らの夢を追うために脱退・退所の道を選んだ。事務所とメンバーもこれを了承し、会見を開いてファンにもちゃんと報告していることから、ファンは事務所に憤ることすらできないのだ。

「確かに、怒りという感情は悲しみをごまかします。何かに対して怒っているときは、悲しみを忘れられるんです。SMAP解散のときは、怒りという感情に流れたファンの方も多かったと思いますが、確かに渋谷さんのケースでは、怒りの対象を見つけにくい。ただ、受け入れがたい現実を乗り越えていくプロセスには、怒りでごまかすより、切なさを噛み締めつつ、その中に希望を見つけていくのが、立ち直りは早い。渋谷さんが、“怒りの対象を見つけにくくする”ような対応を取ったのも、私はファンの方への愛情ではないかと思います」

ちなみに、“人生の一部”と思う人が去った際の心の傷は、どれくらいの期間で回復するのだろうか。杉山氏いわく「人それぞれ、また愛情の深さによっても違ってきますが、私の経験値と鬱病の研究によると、2年くらいかかると思った方がいい」とのこと。ただ、先述のように、渋谷の脱退まであと3カ月、退所まで8カ月ある。関ジャニ∞としての渋谷、そしてジャニーズアイドルとしての渋谷をしっかり受け止めつつ、ファンがモーニング・ワークすることで、心が回復する期間は短くなるそうだ。

渋谷は、自分の言葉で“次のステップに行く”ことをファンに表明した。杉山氏はその点に触れつつ、「ファンの方は『私もすばると一緒に、6人になった関ジャニ∞と一緒に、次のステップに行く。一緒に成長する』と考えると、心の回復につながるかもしれません。渋谷さん、そしてメンバーが、ちゃんと自分たちの言葉で伝えてくれたというのは、ファンの方たちがちゃんと“愛されている”証拠です」と語る。

今年の12月31日、晴れやかな気持ちで渋谷をジャニーズから送り出せるよう、ファンもいま一度、自分の心と向き合ってみてもいいのかもしれない。

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