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心の病気に強くなるために知っておきたいこと

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心の病気の原因は脳内環境が病的になってしまった事。そのため心の病気をより深く理解するためには、心の病気の神経科学的側面にも是非、強くなっておきたいものです。
大脳辺縁系、前頭葉、海馬……。普段の日常生活では、あまり使われないような言葉だと思いますが、心の病気を神経科学的側面から理解するためには、大変重要な脳の部位です。

ここでは、話が少々専門的になりますが、心の病気をより深く理解するために役立つ脳の基礎知識を詳しく解説いたします。

心の病気の背景には大脳辺縁系に不調がある事も

大脳辺縁系は、大脳の表面に広がる厚さ数ミリの層である大脳皮質の内側にあります。大脳辺縁系は海馬、脳弓、扁桃体など、脳内の複数の部位から構成されていますが、これら大脳皮質、扁桃体、海馬などがイメージされやすいように、まずは大脳の構造をごく簡単に説明します。

大脳は主に神経細胞と、神経細胞間を連絡する一種のワイヤーである神経線維から構成されています。神経細胞が脳内で存在している部位は実は狭い範囲に限られていて、なかでも大脳皮質が脳内で神経細胞が最も密集している部位。

例えれば、タマネギの一番外側に神経細胞が分布していて、その内側では神経細胞間を連絡するワイヤーが大部分を占めるようなイメージで、その一番外側の大脳皮質で知覚や思考、さらには随意運動といった脳の高次機能が行われています。

次に、大脳辺縁系を構成する扁桃体と海馬ですが、それぞれの名前の由来は、それらの形状から来ています。まず、扁桃体の扁桃とはアーモンドの和名です。扁桃体の形状はアーモンドに似ています。また、海馬は、海の生物であるタツノオトシゴに、その断面が似ている事から、その名が付けられました。

大脳辺縁系では大脳皮質などからの神経路が複雑に交錯しており、大脳辺縁系の機能の詳細には不明な点も少なくありませんが、海馬が人間の記憶に深く関わっている事はよく知られています。

例えば交通事故などの頭部外傷で、海馬が 損傷されてしまうと、その損傷の程度によっては、過去の記憶の一部を喪失してしまうような深刻な記憶障害が現われる可能性もあります。

大脳辺縁系の機能は多様ですが、人間の情動や衝動の制御にも深く関わっており、もしも大脳辺縁系のこうした機能に何らかの問題が生じてしまうと、うつ病や統合失調症など、心の病気のリスクも高まりやすくなります。

実際、統合失調症の中には大脳辺縁系の神経学的機能に何らかの問題が生じていると考えられるケースもあり、例えばMRIなどの画像検査によって、大脳辺縁系を構成している海馬や扁桃体などのボリュームが減少しているといった所見が見つかるケースもあります。

前頭葉を損傷すると人が変わったように見えてしまう事も

前頭葉は、これまで蓄積してきた知識を元に、総合的な判断が行われる部位。人の前頭葉は他の哺乳類と比較して、顕著に発達しており、前頭葉こそ、人を人らしくしている脳の部位だと見る事も出来ます。

前頭葉は大脳辺縁系との連絡を通じて、人間の情動や衝動の制御にも深く関わっていますが、実は、こうした前頭葉の機能は運悪く頭部外傷などによって前頭葉を損傷してしまった患者さんの症例を通じて、古くから知られていました。

なかでも有名な症例として、19世紀の英国で、鉄道の作業現場で爆発事故が起こり、若い男性の前頭部に鉄の棒が深く刺さってしまうということがありました。

この男性は運良く一命を取り留めたものの、左右の前頭葉の損傷は甚大で、この男性は事故以来、自分の衝動をコントロールし難くなってしまい、例えば、神を冒涜するような言葉を簡単に口にするなど、以前の彼では考えられないような行動が目立ち、周囲の人の目には、この男性は以前の彼とは全く違って見えたそうです。

また、心の病気の治療薬の大きな柱、抗精神病薬は統合失調症などの治療薬ですが、その主な薬理作用は脳内で神経伝達物質の一つ、ドーパミンの働きをブロックする事。

脳内でドーパミン作動性の神経線維は前頭葉に大部分がある事から、抗精神病薬によって得られる治療効果は、抗精神病薬が主に前頭葉に作用する事で得られている可能性が指摘されています。

成人後も脳内の神経細胞は新生しています!

脳内の神経細胞は従来、生まれた後は二度と新しいものは作られないと、考えられていましたが、実は、成人後も神経細胞が新生している事が近年になって判明しています。脳内で神経細胞が新生するという事は、脳には損傷を受けた神経細胞を自力で修復するメカニズムが備わっている可能性もあり、このメカニズムが解明されれば、心の病気の新しい治療法が見出される可能性もあります。

脳内の神経系の発達に関しては、人の心理社会的発達との関連性も指摘されています。例えば、著名な発達心理学者であった米国人のエリク・エリクソンによれば、人の心理社会的発達はライフサイクルの節目節目で発達課題をこなしていく事。

それはあたかもゴールに向かって、階段を一段一段順に上っていくような成長で、エリクソンによって「漸成的発達(ぜんせいてきはったつ)」と呼ばれるようになりました。この発達課題をこなすという事は、脳内の神経系に、その時期、まさに望まれている発達を促す側面もあるのです。

また、小学校に上がる以前の、いわゆる幼児教育の効果に対しては、脳内で神経細胞間のネットワークを強化するからだという説もあります。例えば、クラシック音楽のレッスンを集中的に受けていた幼児のグループは、そうでないグループと比較して相対的に、その後の学校教育で理数系の学力が良かった……といった話を耳にされた方は少なくないのではないでしょうか?

話が少々専門的になりましたが、メンタルヘルス的内容を普段と、ちょっと異なる視点で見れるよう、お役に立てたら良かったと思います。

例えば、朝目覚めた時、「よし、今日も一日、人生のこの時期にしなければならない発達課題に励み、脳内の神経細胞間のネットワークを強化していこう!」なんて考えが、もしも頭に浮かんできたら、なかなか、おもしろいかも知れませんが、とにかく、この厳しい時代ですので、メンタルヘルスの基礎知識には是非、強くなっていきましょう!
(文:中嶋 泰憲)

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