自衛隊のイラク日報が文学的だと話題 RPG世界で拾い集める日記のような面白さ

ガジェット通信

2018/4/17 18:00



防衛省は、2004年から2006年にかけてイラクに派遣されていた陸上自衛隊部隊が作成した活動報告書を公開した。現在、『朝日新聞デジタル』で読むことができるようになっている。

約1万5000ページもある日報の大部分は部隊の構成人員や装備の現況を示す表組みといった事務的な報告なのだが、その中に「バグダッド日誌」「バスラ日誌」と題されたページがあり、これが読み物として面白いと話題をよんでいる。一部を抜粋して紹介してみよう(※●●は黒塗りされた個所)。




常日頃、英軍の人達がテレビを見て、一喜一憂しているクリケットについて、英軍の人に聞いたりインターネットで調べたりした内容を紹介したい。クリケットはイギリスで発祥した野球に似たスポーツで、サッカーに継いで2番目に競技人口が多いスポーツである。





夕方のこと、日本コンテナに米軍兵士(女性)が尋ねてきた。流暢な日本語で「日本語が書いてあるので来ました」とうれしそうに話す。日系人か日本勤務のある米兵かと思い「日本語が上手ですね」というと「当然です。日本人ですから」との答え。これにはこちらの方が驚いた。彼女は、愛知県出身の純粋な日本人だが、様々な事情で今は米国籍を有する米軍人として、1カ月ほど前にイラクに来たという。残り11カ月バグダット勤務をするそうだ。彼女も招待して、「紅白歌合戦」を見ながら、「年越しそば」を食べて新年を迎えた。日本にいる時には当然のことのように過ごす時間だが、ここではやはり感慨深いものがある。我々が数十年親しんだ一般的な「大晦日の過ごし方」は、「日本民族」として国籍や場所に関わりなく「心が落ち着く」時間であった。彼女のバグダッドでの無事を祈りたい。





給食等を請け負っている業者が変わって以来、食堂の評判が悪化、「前の方が良かった」と皆口をそろえます。その原因は、コスト削減だけでなく調理人がスリランカ人からネパール人に変わったため? しかし、必要ならストレートに意見を主張する社会のせいか、クレームへの対応・改善は良好です。それを見ていると自分の業務も、こうありたいものだと感心することもあります。調理の腕は一向に良くなりませんが……●●。





日本隊のコンテナがあるキャンプ・ヴィクトリーに隣接するキャンプ・リバティーのPXに日本のカップ麺(カップ・ラーメンのラベルも日本語)が販売されているのを●●が発見してきた。種類は日本でもおなじみのチキン・ラーメンやどん兵衛など5~6種類あり、値段も1.5~2ドルぐらいで日本で購入するのとさほど変わらない。アメリカ製のあまり美味しくないカップ麺は30~50セントで販売しているのに比べると割高感はあるが、米兵の間でも人気で飛ぶように売れていると●●が興奮気味に報告する。たかがカップ麺ぐらいのことで騒ぐ必要はないのだが、今まで生じていた緊張感は、単にバグダッド連絡班が食いしん坊で、やや食べ物に固執してしまう特性から生じていたものと思われる。これで我々バグダッド連絡班内の日本食に対する緊張感が一気に解消し「鉄の団結」も盤石である。





先日、業務支援隊長がバグダッドを訪問してくださった時に持ってきて頂いた素麺つゆ(200ccの缶ジュースタイプx12)を使わせてもらい冷や素麺を楽しんだ。素麺は4次隊が残してくれていた最高級の「揖保の糸」、食堂から沢山の氷を調達して、冷たい喉ごしの素麺を心ゆくまで味わった。食べた量はというと、5人で24人前の素麺を一気に平らげ、食後は身動きがとれないほどであった。久しぶりに「日本」を感じることの出来た楽しい一時であり、すっかり暑気払いをすることができた。明日からはまたハンバーグを頬張りながらお国のために頑張りたい。





昨日夕食で同席した韓国少佐が期せずしてWBCの話をしてきた。内心穏やかではないのであろうが、日本の優勝を祝福し、「本当に日本は強い。韓国は日本に10年は遅れている」と言ってくれる。我々も「運が良かったこと」「予選では韓国に2連敗していること」を強調する。お互いに謙遜のしあいである。この「謙譲の美徳」は、アジア独特のものではないかと感じている。自己主張の強い欧米人からすれば何を卑下しあっているのかと思うだろう。キャンプ・ヴィクトリーでは日本にとって韓国は「アジアの良き友人でありライバル」である。コアリション・オペレーション部内でも朝一番にきて、一番最後に帰るのは日本と韓国である。現在の日韓の微妙な関係に影響されず、良き友人として日韓お互いに切磋琢磨している。


派遣業務とまったく関係ないクリケットについて長々と説明したり、ささやかな楽しみであろう食事事情を綴ってみたり、外国部隊との交流について個人的心情を交えて書き表したり……。選りすぐりの険しい軍人をイメージして読むと、あまりにも普通の日本人情緒溢れる内容で拍子抜けしてしまう。

これら戦闘地域からの意外な報告にはネット民も「『バイオハザード』の“かゆうま日記”みたい」「オープンワールド系のRPGで世界観を補完するためにばら撒かれた読み物みたい」などとほっこり。文学・随筆として楽しんだ人が多かったようだ。中には「本にまとめて出版してくれ」という人も。

報告書の中には「戦闘」の2文字が複数見られ、基地周辺はそれなりに物騒な状態だったことが伺えるが、だからこそ平和に慣れ親しんだ普通の日本人が非日常の中の日常を綴った日記として価値があると感じられるのかもしれない。あらためて平和の尊さを噛み締めながら読み進めたい。

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