面白い企画が生まれるチームづくりとは? おもちゃクリエイター高橋晋平×組織開発ファシリテーター長尾彰


新たな商品やサービスを生むために欠かせない企画会議。アイデアが思うように出ない、「これだ!」という企画が生まれない、と感じることは少なくないでしょう。

今回はそんな課題を抱えた方に向けて、おもちゃクリエイター高橋晋平さんと組織開発ファシリテーターの長尾彰さんに「面白い企画が生まれるチームづくり」をテーマに対談いただきました。

高橋さんはバンダイで『∞(むげん)プチプチ』や『∞エダマメ』など、数々の玩具企画・開発に携わり、2018年2月一生仕事で困らない 企画のメモ技』を出版。長尾さんは同年3月に宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。』を出版しています。

お互いの著書を読んだことをきっかけに、今回の対談が実現。高橋さんからは著書のテーマである「企画」の視点、長尾さんからは「チームづくり」の視点からお話をうかがいました。

高橋晋平(たかはし・しんぺい)|Twitter

株式会社ウサギ代表取締役。秋田県北秋田市出身。2004年に株式会社バンダイに入社し、第1回日本おもちゃ大賞を受賞した大ヒット玩具「∞プチプチ」など、アイデア玩具の企画開発・マーケティングに約10年間携わる。2013年にはTEDxTokyoに登壇し、アイデア発想に関するスピーチがTED.comを通して世界中に発信された。2014年より現職。各種企業の玩具雑貨・ゲーム開発に関するブレーンや、企画チーム作りに携わるなど幅広く活動。最新作として、5種類の手で戦う新ジャンケンゲーム『グーチョキパーダラピン』を2018年5月5日に発売予定。

長尾彰(ながお・あきら)

組織開発ファシリテーター。日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科(心理臨床カウンセリングコース)卒業後、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。文部科学省の熟議政策に、初の民間ファシリテーターとして登用され、復興庁政策調査官としても任用されるなど幅広い分野で活動している。株式会社ナガオ考務店代表取締役、一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム理事長、NPO法人エデュケーショナル・フューチャーセンター代表理事、レースラフティング女子日本代表チームのファシリテーターを兼任する。

心理的安全性を確保する「愚者風リーダー」の存在

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高橋晋平さん
Photo: 小山和之

—— 長尾さんと高橋さんは、会社員時代の先輩・後輩関係と伺いしました。

高橋:長尾さんは僕のバンダイ時代の新人研修担当だったんです。社会人のスタートである研修でお世話になりましたから、僕からすると一生超えられないような存在なんです。

長尾:ただ、当時の僕は独立しようと考えていたので、すぐに退職してしまったんですけれどね。

高橋:在職期間でいうと数カ月程度しか被っていないんですよね。ただ、退職された後もSNSを通じて何をされているかは知っていました。僕は入社後約10年勤めましたが、退職する際に研修関連の事業で独立することに興味があったんです。そこで長尾さんのことを思い出し、相談に乗っていただいて。それ以来のお付き合いですね。

—— そのようなご関係があったのですね。今回お二人は、それぞれ著書を出版されたということで、高橋さんからは「企画」、長尾さんからは「チームづくり」の観点でお話を伺っていきたいと思います。まずは、企画づくりに欠かせない「会議」について、高橋さんはどのようなことを大切にされていますか。

高橋:会議の中では、どうしようもないアイデア、ボツになるようなアイデアを言えるかどうかを大事にしています。僕はバンダイ時代、なかなか企画が通らない人間だったんです。ボツになってしまうようなネタばかり出す。しかし、多くのボツネタを出し続けていたら、たまたま当たるネタが出始めた。そのやり方が、結果的にヒット商品を生み出したんです。

大企業では、“至らないこと”を言うと評価が下がるかもしれないと考えがちです。その不安が、面白い企画が生まれるのを邪魔していると思っています。僕が幸いだったのは、マネージャーなのに、真っ先に誰よりもくだらないネタを本気で語るような上司に出会えたこと。会議を仕切る人が「ボツネタを出していい」という空気を作れると良いのではないかと、思っています。

今回長尾さんの本を拝読した時も、キーワードは「愚者風リーダーがチームを動かす」かなと思いました。
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Photo: 小山和之

—— 長尾さんの著書の中では、宇宙兄弟の兄・南波六太のことを「愚者風の賢者」と表現されていますね。「愚者風賢者」とはどういう存在なのでしょうか?

長尾:著書の中で、僕は4タイプの人間を紹介しているんです。「賢者風賢者」「賢者風愚者」「愚者風賢者」「愚者風愚者」。愚者風賢者とはたとえば、タレントだとTOKIOの城島茂さん。率先垂範、みんなのお手本で、強く正しく、ということではなく、近づきやすく、大らかさを見せられる賢さを持ったような人のことです。*

愚者風賢者のリーダーは、チームに安心感や癒しをもたらし、会議の場で何を言っても大丈夫だという空気を作れる。心理的安全性を確保するのが、リーダーやファシリテーターの役割だと考えています。

心理的安全性とは、対人関係の安全性、環境や場に対する安全性。 簡単にいうと「この場では何を言っても大丈夫なんだな」という関係性がメンバー全員にある状態です。もちろん、 企画の中身や話し合われる内容についての安全性も大切です。僕も高橋さんも日々、いかに心理的安全性を作り出すかというところに意識が向いているのかなと思います。

—— 高橋さんの上司の方も、まさに「愚者風賢者」のような方だったのでしょうか。

高橋:まさに、そういう存在でしたね。それから、僕はボツネタに対してのリアクションも大切だと考えています。「いいツッコミ」ができるか、ということ。気を遣って「いいねいいね」と言うのも違うし、逆に「ボツネタを言ったからこいつはダメだ」と評価してしまうのもいけない。評価をすると競争が生まれますから。面白い企画を作ることにおいては、競い合わない状況にする適切なツッコミが大切だと思いますね。

競争や嫉妬ではなく、自らの内側に意識を向ける

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Photo: 小山和之

—— 競い合わないというのは?

高橋:僕はもともと他人にとても嫉妬をしてしまうタイプなので、このことについては長い間考えてきました。

長尾:嫉妬とは外発的なもので、勝とうとした時に生まれますよね。

高橋:そうなんです。遡ると高校生時代、僕はテストの点で自尊心を保っているような子どもで、誰かに点数で負けるととても悔しく、嫉妬の気持ちばかり抱いていました。ただ、会議の中で嫉妬が発生すると、無駄な競争を引き起こしてしまう。面白いものを作る場ではなく、評価のための場になってしまいます。

長尾:一方、自分がやりたいことや欲しいものという形で意識を内向きにすると、競争ではなくなります。自分が何をやりたいのか、対話の力を借りてアイデアを形にしていくことが大切ですね。

高橋:今回著書の中では、「欲しいと思うものごと」だけをメモすることを基本としているんです。執筆をする中で整理できたのですが、僕はずっと、やりたいことがそれほどない人間だったんですよ。「意識を内向きにする」ことができていなかった。だからある時、自分にはどんな欲があるんだろうと欲求探しの旅をして、ネタ帳を作り始めました。その中で自分がやりたいことを見つけた途端、他の人のことが関係なくなったんです。

——「欲求」に向き合うことが、企画を生み出すための大切な要素なのですね。ですが、それぞれが作ってきた企画を持ち込んで互いに”壁打ち”をするような会議は、競争や嫉妬心が生まれやすいのではないでしょうか? その場合、どのように工夫すると良いのでしょうか。
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長尾彰さん
Photo: 小山和之

長尾:壁打ちの会議の場合は、リーダーが誰のボールかわからないように、アイデアを無記名で出してもらう方が良いですね。

誰が出したかで、壁側はそれがどんなボールかを判断することがあります。上司に好かれていたら、面白くないアイデアでも通ったりすることがあるし、嫌われていたら良いアイデアでも好き嫌いで捨てられたりする可能性がある。

高橋:企画は、一人のやりたいことで完成するべきだと思うんです。みんなの意見をおしなべて作ったものほど、つまらないものはない。壁打ちによって、いろいろなアイデアをもらったけど「やっぱりこれが一番良いと整理されました」というアイデアであれば、それはとても強いアイデアでしょう。

長尾:「壁打ち」という言葉がそれを物語っていると思うんです。相手が壁だと思っている。でもそうではなくて、壁は実際にはなくて、壁を作り出しているのは自分なんだ、ということに気付けたり、壁に打ち込むのではなくて「キャッチボール」をしているんだという感覚が持てれば、企画の質が変化していくと思うんですよね。

—— 会議の内容に加えて、会議のもち方自体についても意識されていることはあるのでしょうか。

高橋:そうですね。ブレインストーミング(ブレスト)を開くなら、テーマは拡大解釈できてみんなが面白いことを言えるものがいい。「何億円を売りあげる、IoTを使った企画」という設定の仕方は避けた方がいいです。先に目標が据えられてしまっているため、アイデアを出すことにためらいが生じてしまう。

長尾:僕は環境からアプローチするのが好きですね。会議の「しつらえ」がとても大事だと思っていて。会議室でやるブレストって、息苦しさを感じたりすることありません? 会議室ってリラックスするように作られていないから。それだったら、会社の近くのカフェに行ってもいいし、外に出て交差点でやるとか、立ちながらでもいいかもしれない。

座る場所もソファとパイプ椅子ではまったく異なります。身体で受け取る感覚で何を考えるかが決まりますから。美味しいものを企画したいなら美味しいものに囲まれればいいし、気持ちいいものを作りたいなら気持ちいいものに囲まれながらブレストできると良いですね。

愚かさを共有し、それぞれが強みを持ち込みたくなるチーム

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Photo: 小山和之

—— アイデアが生まれやすい場とは、どのようなものがあるのでしょうか。

長尾:共感が生まれやすい場で会議を行うと、雰囲気が温まり、アイデアが生まれやすい。個人的には、銭湯のような場所でやるミーティングも楽しいと思いますね。

高橋:その発想はなかったです(笑)。僕は、飲み会の時は良いアイデアが出ると思うんですよね。飲み会の場で出た愚痴から企画が生まれることもある。

長尾:最近は、会社にバーカウンターがあるようなオフィスもありますよね。ただ飲み会の場合に気をつけたいのは、ヒエラルキーを持ち込まないこと。「会社のバーカウンターでリラックスしなさい」というトップダウンのバーカウンター設置は、意味がないですよね。

高橋:僕は、まったく異なる会社に属する「月曜が大嫌いな人だけの飲み会」をやっていたんですが、そこでは会社では出ないようなアイデアも出てきますね。

長尾:飲み会のように、愚痴が出る場からアイデアが生まれるのは、愚かさを共有できるからだと思います。愚痴をこぼしこぼされることで、シンパシーを感じますよね。そこに本当の欲求が出てくる。

愚痴にも、良いものと悪いものがあって「本当はこれをやりたいんだけど、なかなかできなくて…」というものであれば、それは今までチームが見落としていた企画の種かもしれない。

会社という場では、個人のやりたい、やりたくないという欲求がなかなか言えないんですよね。言えないどころかわからなくなってしまっている場合もある。会社では「must」のことばかりだから、「want」で語れる機会が大切なのではないかなと。

—— チームには発言の多い人・少ない人、さまざまなメンバーがいると思います。会議等での発言バランスについて、気をつけると良いことはありますか。

長尾:会議のコミュニケーションでは、「話すこと」がすべてではありません。ある人は話すことが強い、ある人は書くことが得意など、人それぞれコミュニケーションのチャネルが異なります。「書く」「説明する」「絵や図で表す」などさまざまな表現方法を取り入れてあげられると良いかなと思います。

高橋:僕は喋るのが好きですが、黙っている時間もあっていいと思います。でも、”わからないから”黙っている状況は避けなければいけません。「わかりません」と言える雰囲気を作ることが大切です。発話量の観点で考えると、黙っている人や控えめな人さえも反応するようなものは、強いアイデアだと思います。

長尾:満場一致で「それだ!」となるような。

高橋:そうそう。すると、それぞれが強みを持ち込んで、ネタに乗っかろうとする。みんなが能動的に支えようとするものが強い企画なんです。

長尾:自然とお互いに助け合える関係性が生まれる状態と言うことですね。

高橋:その状態になれば、自分のポジションができ、意見がどんどん出てくるようになる。立場や役割を自覚することで、意見が言いやすくなる。その状態こそが良い企画と良いチームが揃ったときだと思いますね。

—— チームメンバーとのコミュニケーションで、普段から心がけられると良いことはありますか。

高橋:身の回りのものに対して「これは欲しいものだな」「これは欲しくないな」というような感覚を共有するコミュニケーションを、日々取っておくのも良いのかなと思います。僕は仲間と「欲しいものを探す町歩き」をやるんです。場所はどこでもいいのですが、歩きながら欲しい・欲しくないを語り合う。

その中で、「なぜ欲しいのか」「なぜ欲しくないのか」ということを考え共有しておくんです。そうするとアイデアのヒントが見つかる。情報を検索して「答え探し」をするのではなく、メンバーとのコミュニケーションの中で、「欲求探し」をすることが大切です。

—— なるほど、それはすぐに実践できそうなことですね。お二方、本日はありがとうございました。


「面白い企画」とは、メンバーの本来の欲求に対して共感が生まれ、それぞれが"ワクワクしている状態"において生まれます。

チームメンバーの心理的安全性を確保し、それぞれの欲求や役割に向き合える環境を作ること。一朝一夕でできるものではありませんが、多くの会議において大切な要素なのではないでしょうか。

*発言内容を一部修正いたしました(4/17 14:29)

Photo: 小山和之

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