「40歳定年」で得たもの・失ったもの


私は2007年にフィジーに移住し、在住11年目になります。昨年9月、ダブル成人となる40歳を迎えました。その3カ月後、10年半勤めた会社(在フィジー)を志願退職。現在、「40歳定年制」を実践中です。

40歳定年制とは?


「40歳定年制」は、東京大学大学院の柳川範之教授が提唱している考え方で、国家戦略会議の中でも提言されています。

「40歳でリタイアしよう」という意味だと誤解されることが多いのですが、そういう意味ではなく「75歳くらいまで生き生きと働くために、40歳くらいでいったん区切りをつけよう」という提案なんです。

人生100年時代、75歳まで働くとすれば40歳時点でも、まだ35年もの期間を働くことになります。一度、40歳くらいで立ち止まり、これからのライフキャリアについてじっくりと考える時間を確保しましょうということです。

40歳定年した「今」の暮らしは?


私は昨年12月に退職し、フィジーで奥さんと3歳の息子と3人暮らしをしています。

ちなみに日本人の場合、フィジーはビザなしで4カ月まで滞在可能。近隣諸国(オーストラリアやニュージーランド、トンガ、サモアなど)に一度出国し、フィジーに戻れば、またそこから4カ月滞在が可能になります。

現在は仕事をしていないので、週休7日。「毎日が日曜日」というやつです。ただ、それだとメリハリがなくて「自由」をうまく扱えないので、以下のように曜日別で大まかなテーマだけは設けています。

月 学ぶ

火 午前:趣味に興じる 午後:息子と遊ぶ

水 家族で遊ぶ

木 学ぶ

金 午前:趣味に興じる  午後:息子と遊ぶ

土 家族で遊ぶ

日 家族で遊ぶ

月・木は「学ぶ」日ですが、大学などに行ってキッチリ学んでいるわけではなく、近所のバーガーキングで気の向くまま本を乱読したり、ネットサーフィンしたりというレベルです。

「趣味に興じる」は、テニスをしたり、オンラインで将棋をさしたり、孤児院でボランティアをしたり。「息子と遊ぶ」は、プールに行ったり、公園でボール遊びをしたり、家の中でレゴをしたり。「家族で遊ぶ」は、ショッピングモールに行ったり、友達の家に行ったり、ビーチでピクニックしたり、別の島に行ったり…という感じです。
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公園に行けば、現地の子どもたちとすぐに仲良くなれます。
Photo: 永崎裕麻

40歳定年で失ったものは?


固定収入

会社員としての収入は0になりました。

現在、貯金を切り崩しながら生活をしていますが、以前の記事でも書いたとおり、フィジー生活はローコストで抑えられるため、ダメージは小さく助かっています。

肩書き

「会社員」という肩書きがなくなりました。何をしている人か質問されるとき、「会社員」という答えは簡単で便利でしたが、いまは「定年中」というステータスです。

同僚たちとの協業タイム

同僚たちとは仲が良かったので、一緒に切磋琢磨し合いながら働くことは楽しかったです。その時間がなくなったことは少し寂しくもあります。

逆に、40歳定年で得たものは?


家族との時間

「最近、子どもの寝顔しか見ていない」とボヤくパパは世の中にたくさんいると思います。また、死ぬ前に後悔することとして、「もっと家族と一緒に時間を過ごしたかった」があります。

そんな風に、のちのち後悔する要素を減らすためにも、「家族との時間」を目一杯稼いでおこうと思っています。65歳くらいで一般的な定年を迎えるときには、子どもは成人していて一緒に遊びたくても遊んでもらえないかもしれないので、今のうちに「子どもとの時間」を貯めておきます。

今のところ、週4日(「水・土・日」+「火・金の午後」)を家族時間とするのが、少なすぎず多すぎず、自分にとって最も心地いいと感じています。
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ヤドカリ好きの息子と海辺にて 。
Photo: 永崎裕麻

学びの時間

定年すると、単純計算で「週40時間」が開放されたことになります。今までは仕事にしていた「教育業」と関連の深い分野の本をメインで読んでいましたが、時間が生まれたことで、これまで関心の薄かった「投資」や「起業」といった分野の本にも手を伸ばすことができるようになりました。

特に「投資」に関しては、先入観で「自分には不向き」と思っていましたが、実際に始めてみると、「未来を見る目」が養われるトレーニングとして非常に有意義で楽しいものだと、認識が180度変わりました。

趣味の時間

小学生の頃、大好きだった将棋ですが、成人してからは全くしていませんでした。「将来、役に立つかどうか」の軸でやることを優先順位付けすることが多くなっていたからでしょう。打算的ではなく、「純粋に楽しい」と思えることをする時間を担保し、オンライン将棋で「今ここ」を楽しめています。

移動の自由

「いつでも、どこにでも行ってもいい」実際は行使しない権利かもしれませんが、その自由があるという意識が非常に気持ちをラクにしてくれます。休暇の許可を会社に申請する必要がなく、妻の合意さえあればいいので即決できます。
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息子がカンガルーを見たいというので、お隣の国オーストラリアへ。会社に気兼ねすることなく、旅を謳歌できることに感謝。
Photo: 永崎裕麻

服装の自由

フィジー勤務だったので、制服はアロハシャツと非常にゆるい感じでしたが、それでも全くの自由ではありませんでした。いまは完全自由なので、ラクなボロボロのジャージで日々過ごしています。

健康

デスクワークが多く体がなまっていましたが、息子との遊びや趣味のテニスをする時間を増やしたことで、身体的な健康状態が改善しています。

また、組織の一員でいると、自分の意思に反して妥協せざるを得ないケースがでてきます。そういったストレスがなくなり、精神的にも健全な状態を維持できています。結果、頭痛の頻度がだいぶ減りました。

まとめ

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「あわてない、あわてない、一休み、一休み」by 一休さん
Photo: 永崎裕麻

「40歳定年制」は会社員としての収入が消えるダメージは確かにありますが、個人的には、そのデメリットを遥かに上回るメリットがあると感じています。あとから振り返ったとき、「40歳定年をしなければ良かった」と後悔する自分をイメージすることがまったくできません。

欧米では労働市場の流動性が高いため、転職の合間に「学び直し」をしたり、ライフキャリアについて改めて考えたりする機会が多いと思います。

日本でも、社会人が教育機関に入り直し、改めて教育を受けるリカレント教育の必要性が叫ばれていますので、合わせて「40歳定年制」の実践者も増えてくるかと思います。

私のように日本を離れ、ローコストで生活できる国に移動し、1年や2年という単位で家族とともに生活しながら、「人生の後半戦に向けた戦略を練りマインドを整えていくのも、長い人生を生き抜く方法として有効かもしれません。

私自身、40歳定年して3カ月が経ち、ぼんやりではありますが「進化の方向性」が見えはじめてきました。南国特有のスローな時間空間に身を置きながら、今後もじっくりと心の声に耳を傾けていきたいと思います。


永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)Facebook
fiji_happiness 11.jpg「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2011/2014/2016)のフィジー共和国へ2007年から移住し、現在11年目。現職は在フィジー語学学校(Free Bird Institute)のマネージャー。100カ国を旅した経験を活かし、内閣府国際交流事業「世界青年の船」「東南アジア青年の船」に日本ナショナル・リーダー(2017)や教育ファシリテーター(2013)として参加、教育企画の立案、スカイプ・コーチング、旅ライターとして執筆、などの活動もしており、フィジーと日本を行き来するデュアル・ライフを実践中。関心が強い分野は「留学」「海外就職」「海外移住」「難民支援」。1977年、大阪府生まれ。神戸大学経営学部卒業。一児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。


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