TBS・宇垣美里アナを精神科医が一刀両断! ストレス回避法の“マイメロ論”は「鬱になる危険も」


 TBSアナウンサー宇垣美里が、雑誌のコラムで提唱した“ストレス回避法”が話題になっている。災難や理不尽な出来事に遭遇したとき、「私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」とサンリオキャラクターのマイメロディーになりきって、ストレスを溜めないようにするというもので、若い女性を中心に「マイメロ論」と呼ばれ、共感者が続出しているようだ。つまり、“ストレスを感じそうになった時には、自分とは別人格になりきって物事に向きあえばいい”との考え方だが、果たして本当にストレス回避法として有効なのだろうか? そこで、精神科医である高木希奈先生に見解を聞いた。

マイメロ論は鬱になる可能性も


――「マイメロディーになりきってストレスを回避する」という「マイメロ論」は、ストレス回避法に有効ですか?

高木希奈先生(以下、高木) 微妙ですよね……。確かにストレス回避しているものの、単に“現実逃避”しているだけなのでは。根本的な解決にはなっていないので、今後似た状況になったとき、同じような問題を繰り返す可能性があります。それと、マイメロ論の考え方は、精神的に退行しているのも気になりますね。20~30代以上の大人の女性が3~4歳の子どものような思考に戻るというのは、周囲も対応に困るでしょうから、人間関係にも影響すると思いますよ。

――マイメロ論の考え方を続けると、何か良くない影響が起こることもあるのでしょうか?

高木 全てこの思考で逃げ続けてしまうと、少しのストレスにも耐えられないようになって、鬱になる可能性もあると思います。また、別人格の思考を持ち合わせ続けるというのは、「解離性障害」の患者さんと似た状況を意図的に創りだしているということになります。解離性障害は、耐えがたいほどのストレスがかかり続けたことで、自分自身と感情が切り離されてしまう病気で、幼少期からの慢性的な虐待やいじめなどが原因となり、思春期~10代の若い頃の発症が多いんです。それ以外では、事件や事故など解離性障害になりうるほどの強いストレスにさらされ続けることが原因となります。つまりそういう事態にならなければ、マイメロ論の考え方が、解離性障害に移行することはめったにないでしょうが、実際に治療に取り組んでいる患者さんもたくさんいる症状に、なぜあえて寄せていくのだろう……と思ってしまいますね。

――そもそも、ストレスを溜めやすいのは、どんなタイプの人なのでしょうか?

高木 マイナス思考や自己否定感が強い人、完璧主義者や気の短い人、また、他人に気を使いすぎたり人目を気にしたりする人や、プライドが高い人などで、ストレスをうまく発散する術を持たない人です。

――そのような人に、マイメロ論的思考は合いますかね……?

高木 特に、真面目で几帳面、完璧主義者の人がマイメロ論を取り入れようとすると、「マイメロ論のような考え方をしなきゃ」と、余計にストレスを溜めてしまうかもしれません。なので、あまり向かないと思います。

――では逆に、向いているタイプなどはあるのでしょうか?

高木 例えば、他人の言葉を一字一句気にしてしまうくらいあらゆることが気になる人や、全ての出来事をマイナスに捉えてしまうような人には、ある意味有効かもしれませんけれど……どのようなタイプの人であれ、マイメロ論はおすすめできるものではありません。

退行するよりプラスに考える思考を持つ方がいい


――ストレスを溜めやすい人に、有効なストレス解消法はどのようなことですか?

高木 ストレスとの向き合い方は人それぞれですが、趣味や好きなことをするというのは、やはりストレス解消に有効です。また、マイメロ論のように“ストレス回避”としての思考をあえて持つなら、“認知行動療法”の方がいいと思います。精神科の治療でもよく使われている精神療法の1つで、「自分の認知を変えて行動を変えていく」というものです。仕事で上司から仕事を押し付けられた場合、「嫌がらせだ」などマイナスに捉えがちですが、「上司は自分を信頼してくれている」「周りより仕事ができるから私にお願いしたんだ」など、見方を変えてプラスの受け止め方をすることで、ストレスを溜めないようにするんです。

中には「物事をプラスに考えることが難しい」という人もいますが、ほとんどの人が訓練すればできるようになります。例えば現在、マイメロ論を実践している人は、思考を転換できる術を持ち合わせているともいえるので、認知行動療法が身に付く素質があるかもしれませんよ。

――例えば、先ほどと同じケースで、上司の依頼を断りたいけれど、「能力が低い」と見られたり、嫌われたりするのではないかとの思いから断れず、ストレスを感じる人も多いと思うのですが、その場合はどうすればいいでしょうか。

高木 相手に配慮しながら自己表現できるコミュニケーションスキルを磨く「アサーショントレーニング」です。ムリなお願いは、受け入れてもストレスになるし、断るのも「嫌われるのではないか」「今後の仕事に響くかも」などの思いが働いてストレスに感じますよね。単刀直入に断れば、角が立つこともあります。そんなとき、自分を頼ってくれたことにお礼を述べた上で、できない理由をきちんと説明して断るなど、相手を尊重しながら自分の感情を伝えれば、無用なストレスを溜めずに解決できるようになります。そもそも、その場しのぎでできない仕事を引き受けるのは逆効果です。あとになって「できなかった」では、評価を下げることになってしまいますから。まずは「できる・できない」を正しく判断できるよう、自分のキャパシティをしっかり知っておくことが一番ですね。

――あらためて、若い女性の間でマイメロ論が広まっていることについて、率直な感想を教えてください。

高木 こんな論理が出てくること自体に衝撃を受けました。意図して、解離性障害の状態に、自分を持っていくなんて……って、びっくりしたというのが正直な感想です(笑)。ただ、最近の若い人は、「頑張って稼いで、いい車や家を買いたい!」などの考えがあまりないと聞きます。あえて困難に立ち向かい、それを乗り越えようと頑張るより、イヤなことから逃げることも大事といった感覚が強いゆえに、マイメロ論がはやっているのかもしれませんね。

ただ私からすると、マイメロ論的思考が通用するのは、人格の確立していない10代までじゃないかと思ってしまいます。もし20~30代でこのような考え方をしている方が患者として私のところへ来られたら、マイメロ論的な思考をするよりも、「認知行動療法」や「アサーショントレーニング」をおすすめするでしょうね。
(取材・文=千葉こころ)

高木希奈(たかぎ・きな)
精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。現在は、精神科単科の病院で、精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務。著書に『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)などがある。
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