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盗まれた事実を今度こそ打ち明けよう――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記〈第9回〉

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約1000万円近い仮想通貨を盗まれた出野達也(23歳)が入会したばかりのオンラインサロンで事の顛末を打ち明けたところ、「書籍化したら半分くらい取り戻せるんじゃない?」と謎の提案をするA、Bが出現。実話に勝るドラマはない――と彼らは言うが、八方塞がりの出野の日々は、本当に彼を救うのか?「お金0.0」連載9回め、今週も現場からお伝えします。

第9回 バブルは上がって消えていく

――――先週からのつづき

母「私と伯母ちゃんと弟は、今返さんでいい。でも、親友さんには、言ってすぐ返さなあかん」

僕「うん…」

母「はよ言いなさい」

僕「ハイ…」

母「じゃあの」

ガチャリンコ

正論だ。こんなに正論を言う母だったのか。AさんBさんの話はいつ形になるかわからないけど、お金が入るとしてもずっと先のはずだし、それはそれとして乗っかりつつ、オカンの言うとおり今の状況は親友に伝えておくべきだろう。気が重いなぁ…。ほんとに気が重い。LINEで送って、返事がなかったら今日はもう寝てあした考えよう。サッと送ろう。うん。そうしよう。



「あの…、今晩のご予定はいかがでしょうか。お話したいことがあります」

ピコ-ン

食い気味に返事が来た…

親友

「わかりました。いつもの日本酒居酒屋にしましょう」



「…お願いします」

——–

—-



【新宿 十徳本店】

親友との待ち合わせはいつもの十徳。

アパート(事故物件)の階段を駆け降りて、青梅街道を駅前に向かう。

耳がちぎれるほどの風の中、言いにくいことを言いに行く。言うことで、許してもらえるんだろうか、悲しい思いをさせてしまうんじゃないだろうか、不安にさせるだけなんじゃないだろうか。

だけどもう、言わないという選択肢はないし、僕に残された道はない。道もないし、街は寒いし、走っていないと凍えてしまう。

十徳の扉を開けて店内へ。

店員「いらっしゃいませぇい!」

僕「こんばんは」

店員「いつもありがとうございます!お待ち合わせですよね?」

僕「へ? あ、もういらっしゃってます?」

店員「はい!」

早い。ありえない。店からLINE送ってたんだろうか。

先に座ってにこやかにお迎えするプランがなくなった。

親友「あれぇ?!こんなところでどうしたんですか~」

僕「え、あ、き、奇遇ですねぇ~…」

親友「今日は、日本酒です」

僕「はい」

親友「でも、まずはビールで」

僕「はい」

またもオキマリの挨拶で先を越されてしまった。ここまで完全に親友のペース。

これじゃダメだ。今回は、今回は言うんだ。言うんだ。

僕「すみません!ビール2つください!」

店員「は~い」

いや、ビールの注文じゃない。仮想通貨が盗まれたことを言うんだ。ぜんぶ。

僕「きょ、今日は!突然およびたてして!すみません!」

親友「問題ない」

僕「ありがとうございます。実は、築地の時から話そうと思ってたことがあるんです」

親友「俺もね、あるんだよ。最近ね、ひどくなった」

僕「え?」

親友「年下の上司が更に仕事を押し付けてくる」

僕「マジですか…大丈夫ですか」

親友「冗談じゃないよ。それでその上司は、サボって何もしないんだ」

僕「ひどいですね」

親友「何もできない。使えない。でも、名門大卒」

僕「そういう人もいるんですね」

親友「うむ。挙げ句の果てに、インチキ残業」

僕「インチキ残業?」

親友「会社で遊んでる」

僕「え…さすがにそれは」

親友「毎日やってる。会社の中では残業熱心な男だと言われている」

僕「訳がわからんですね。そんなのどうかしてますよ」

親友「だから、今度、人事の友達に言ってやる」

僕「…健闘を祈ります」

親友「俺なんかアルバイトだからいつクビになってもいいさ。ただ、インチキは許せない」

僕「そうですよね!」

親友「そういうえば話は変わるが、コインの方は最近どうなの?調子良い?」

僕「え!あ…えっと…実は…そのことについてお話があったんです」

親友「ん? 下がったの?」

僕「いや、そうじゃなくて…」

親友「そうじゃなくて?」

僕「僕のアカウントのパスワードが盗まれてしまって。誰かにログインされて、どこか知らない誰かのアドレスに送付されたんです…」

親友「ん??ん??ん??」

僕「つまり、根こそぎ盗まれました。」

………

……



い…え…た…

やっと言えた。ゆっくりと顔を上げて親友を見る。

黙ってる。

僕「あ、あの…」

店員「お待たせしました~ビール2つです」

僕「…」

親友「…」

僕「ありがとうございます」

机に置かれたジョッキの中で泡が上へと浮いていく。

黄金色の円筒の上を目指しては、積み重なって消えていく泡。合わせる顔もない僕は再びうつむいて、泡が上がる場所を見つめている。次々と泡は生まれ、上に向かって消えていく。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

今の僕は、大切なあなたの目を見ることもできません。

親友「そうか」

僕「…はい」

親友「…」

僕「…」

親友「お母さんとかには、言ったの?」

僕「はい…言いました」

親友「そうか」

僕「…」

親友「なんともないならよかった」

僕「え」

親友「盗まれたなら仕方ない。それより、他の人たちとの関係が心配だ」

僕「…」

親友「ほら、今日は、好きなだけ食って、飲め」

僕「………はい」

たくさん食べていっぱい飲んだ。沈黙が怖くてたくさん飲んだ。どんなことばを伝えたところで何のなぐさめにもならないし、この人からお金を借りて盗まれたのは僕なんだ。その事実の前ではどんな言葉も安っぽくて、気の利いたことを言おうとすればするほどつらくなる。

親友「あのね出野くん」

僕「は、はい」

親友「俺な、嬉しいんだよ」

僕「え?」

親友「出野くんが、色んなところに連れて行ってくれたり新しいこと教えてくれたりしてうれしいんだ」

僕「…」

親友「だからさ、きにすんな。若いうちは失敗することも多いだろ。でもな、それは若さの特権だ。もっと失敗してこい。脇が甘くて失敗するのはよくないけどな!はは!」

僕「ほんとに…すいません。」

親友「じゃ、お会計」

店「ハ~イ」

——–

——

—-

その頃…

A

「スギナミさん。僕が教授をしている某オンラインサロンで、ビットコイン盗まれたっていうコがいて、どうやら帰ってきそうにないのでもし連載から書籍化の可能性がありそうならば一度会ってやってもらえますか?」

スギナミ

「了解です」

A

「アリガト。じゃあ彼が書きなぐったいままでのエピソードとか時系列でもらってるので、のちほどチャットログ転送しますね。Bさんと3人で進めてるので、ゆくゆくは漫画化もできればとおもってます」

スギナミ

「了解しました。おまちしてます」

——–

—-



スギナミ

「お、おもしろいですねぇ…編集長も交えてぜひ一度打ち合わせを」

A

「了解。本人にもそうつたえます」

次号へつづく

【出野達也 (いでの・たつや) 】

1994年、兵庫県生まれ。かけだし俳優、日本酒マニア。高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラやアルバイトをこなす。のちに、仮想通貨で大金を得るが、盗まれる。

Twitterアカウント(@tatsuya_ideno)


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