MOROHA アルカラとの壮絶な熱量とお互いへの愛に満ちた渾身の対バン “越えられる奴にしか試練は与えられない”

SPICE

2018/4/15 19:00

MOROHA『怒濤』2018.4.12(THU)下北沢SHELTER


ある日、アルカラのHPにはライヴ情報と一緒にこんな一言が添えられていた。“アフロ君。アルカラが大変だった時。「お前頑張れよ」じゃなくて「俺も頑張ります」っていう連絡くれて嬉しかったで。”

4月12日。MOROHAの自主企画『怒濤』を観るため、僕は下北沢SHELTERへ向かった。開演時間になると、場内は足の踏み場がないくらい大勢の人で溢れかえっており、フロアだけでなく階段まで人でぎゅうぎゅうの状態。そして、ステージに現れたのはゲストのアルカラ。「アブノーマルが足りない」からスタートをして、トップギアで踏み込んだ。周りとそれないように誰かの足跡をたどって、気づけば可もなく不可もなく無難な生活を過ごしていた男が《まだまだ足りない アブノーマルが足りない》と口にする。すぐに情報が共有される今の時代だからこそ「誰かと一緒じゃないと怖い」という群集心理を正面からへし折る、アルカラらしい曲だ。
アルカラ
アルカラ

その後、息を吐く暇もなく「チクショー」、「3017」と連打を重ねて「さ・あ・な」では、「お前らが安全だと信じ込んでいる場所なんて本当は存在しない、そんな考えはただの捏造神話だ」と現代社会へのアンチテーゼを歌い上げた。人はみんな死へ向かって進んでいる、そのくせ将来安泰を欲しがる。本当に正しいのは僕らか彼らか。フロアの最後列で盛り上がる観客を観ながら、心臓を強く握られたような気分だった。

MCに入り、稲村(Vo./Gt)が口を開く。「今日は素敵な不敵な過激な『怒濤』というイベントにアルカラをお招きいただきまして、誠にありがとうございます。……俺はヤバイ!俺はヤバイ!」その流れから「サースティサースティサースティガール」を披露。赤いスポットライトが4人を照らし、まるで獲物を狩る動物のような激しい音と攻撃的な眼差しに終始ヒリヒリした。
アルカラ
アルカラ

中盤戦に突入して「デカダントタウン」へ。《誰かが戦って 涙目を拭ったとさ 人の苦楽は壁一重 ほんとは 妬ましげに見てんだ》。思い出したのは僕が会社員だった頃。ある時、自分よりも大きな仕事を任された同僚に嫉妬していた。連日夜中まで社内に残って苦しんでいる彼に「あんまり無理しちゃダメだよ」と言いつつ、内心はホッとしてた。自分の心にいる悪魔は「お前も頑張れ」ではなく「アイツが辛そうで良かったな」と囁いたのだ。醜い妬みを持つ僕の心を一蹴するようにアルカラは言う。《胸の奥 傷を癒せるのは自分次第だよ いま岐路に立て まだまだ なんでしょう》。結成15年を迎えても尚、“まだまだ”と歌う彼らに潔さとたくましさを教えられた。アルカラの音楽があれば、こんな自分でも変われるのかもしれない……そんな気がした。
アルカラ
アルカラ

再びMCになり、稲村が即興の歌とともにMOROHAへの思いを告げた。「アルカラが大ピンチな時にたくさんの方から連絡をいただいた。その中の1人にアフロがいる。そのメールに頑張れとか、大丈夫ですか?という心配の言葉は1つもない。書かれた言葉はたった1行、たった1行で俺に火を点けました」。浅く深呼吸をして、再び話す。「“太佑さん、俺も頑張ります”って。彼に出会えて本当に良かったなぁ。ピンチな時に力を貸してくれる、友達、仲間がいて、こう思いました……俺たちは15年もやっていて、戻ろうにも戻るだけの時間がかかるくらいならさ、もう前しか見てない。前しか見てなかったら、こんな素敵な1日に出会うことができました」そう言って「やるかやるかやるかだ」へ。
アルカラ
アルカラ

——遡ること2017年9月下旬。アルカラのギタリストが突然、連絡が取れなくなり、残された3人で話し合った結果、10月20日付けでメンバーの事実上の脱退を発表。

それは全国ツアー1週間前の出来事だった。

……あれから半年。今、目の前で《ほらどうすんだ やんのか》と歌っている。《緊急事態「チョキ」出して 後出しだ もう腹括れや》と。戻る場所なんてとっくになくなった、俺は一生音楽をやっていくしかねぇだろ。もう腹括れや。観客ではなく、稲村が自分自身にそう言ってるように聴こえた。

計12曲、あまりに辛辣で、力強くて、決意を感じるライヴを届けてくれたアルカラ。時の流れに身をまかせられるほど人生は甘くない。いつだって、どこへ向かうのか決断するのは他の誰でもなく自分だ。選んだからには覚悟して、進め。僕は勝手に彼らから、そんなメッセージを感じたんだ……。
MOROHA
MOROHA

続いて登場したのはMOROHA。2人の表情がかろうじてわかる程度の薄暗い照明の下で、アフロが口を開く。《この楽曲は 怒りと痛み 屈辱と葛藤 それらをメインスポンサーに迎えて作られた 手の中に残った悔しさだけがギャランティ それを 歌詞と旋律に全額ベットする》そう言って「ストロンガー」で幕を開けた。マグマのような闘志が下北沢SHELTERを燃やしていくのを感じる。続いて「革命」を演奏すると、観客が「オオ!」と声を上げるが、その歓声をよそに《逆境は最高のご馳走さ》と歌う姿が妙にカッコ良かった。
MOROHA
MOROHA

立て続けに2曲を披露した後、「GalaxyのCMでお馴染みの、hideのトリビュートアルバムに参加することでお馴染みの、ついにはテレビ東京『宮本から君へ』のエンディングテーマでお馴染みのMOROHAと申します」とアフロ。それがどうした? なぜかそう言っているようにも聞こえた。

そして4曲目に歌ったのは「恩学」。長野の田舎町で2人を支えてくれた家族、彼女、友達。MOROHAとしてではなく、1人の人間として自分を好きになってくれた人。そんな人たちを音楽で幸せにしたい、という真っ直ぐな思いが観客の心を優しく撫でる。きっと彼らが歌を届けようとしてるのはコアな音楽好きでもなければ、音楽評論家でもなく、痛みや喜びを感じる人間そのものだ。
MOROHA
MOROHA

そんな人間クサイ絆を感じたのが、この日のライヴ。アルカラが窮地の時にメールを送ったアフロがいれば、稲村は自分たちのフライヤーに手書きで「モロハ単独 Zepp Tokyo おめでとー!!」と綴った。「それいけ!フライヤーマン」からはミュージシャンが作る、その1枚1枚のフライヤーにどれだけの情熱が込められているのかを教えられた。

終盤戦になり「正しさばかりが、まかり通る世の中ではないですけども、優しさばかりがまかり通る世の中ではないですけども。ドラマとか映画じゃないから、時には悪意が混ざってしまう。そんな世界ですけど、音楽があるじゃないか僕らには……なんて、もうちょっと説得力が出るように頑張ります」。アフロが話し終わると、UKの綺麗で温かいギターの音色が会場を抱きしめた。オレンジ色の照明に包まれながら、優しい歌声が響く。「うぬぼれ」という曲にこんな一節がある。《あなたと向き合うことで 私は私を好きになれたのです》。暗がりのフロアで誰かが涙をすする音が聞こえた。MOROHAの音楽は痛みを教えてくれる、悔しさの意味を教えてくれる、本当の優しさを教えてくれる、戦いの意味を教えてくれる。そんな音楽に涙を流せるというのは、どれだけ幸せなことだろう。MOROHAと向き合うことで僕は僕を好きになれた。本気でそう思うんだ。
MOROHA
MOROHA

——かつて、2人はライヴをするために下北沢SHELTERのオーディションを受けたことがあった。結果は不合格。その時にアフロとUKは決意する。「いつか自主企画でソールドアウトさせてドヤ顔でステージに立ってやろう、とそんな風に思っていました。それが今日、達成されました。ライヴをしてみると、今日まで見据えて俺たちのことをオーディションで落としたんじゃないかなって、そんな風に思い込んでおります。ありきたりな言葉だけど、越えられる奴にしか試練は与えないって、自分で思い込む。それが力になったら素敵なことだなぁと思っております。まだまだ、思い込んでいることがたくさんございます。お前らに出来るわけがない、って言われたことが俺の燃料になっております」。

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