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スーパーグループとして知られるブラインド・フェイス唯一のアルバム『スーパー・ジャイアンツ』

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クリームのエリック・クラプトンとトラフィックのスティーブ・ウィンウッドは、どちらもグループ内の人間関係に悩んでいた。68年にリリースされたザ・バンドのデビュー作『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』に大きな衝撃を受けたこともあって、クラプトンはクリームを解散、天才ウィンウッドと新グループを結成する。ドラムにはクリームのジンジャー・ベイカーが、ベースにはファミリーのメンバーで譜面も読める才人リック・グレッチが参加し、当時はスーパーグループとして騒がれたが、アルバム『スーパー・ジャイアンツ(原題:Blind Faith)』をリリースしただけで、70年初頭には解散してしまった。実質の活動は半年ほどであったものの、ロック史上に残る名グループである。

■ザ・バンドの登場

ザ・バンドがひっそりとデビューした1968年、エリック・クラプトンはクリームのギタリストとしてロック界の頂点にいた。ブルースとロックを融合させ、サイケデリックな香りやハードロックの萌芽をも感じさせる彼の音楽スタイルは、ビートルズ以降のロック界に大きな影響を与え、当時の若者たちに「クラプトンは神だ」と言わせるほどであった。

そんなクラプトンに「クリームを解散しなくてはいけない」と思わせるほどのアルバムをリリースしたのがザ・バンド。彼らのデビューアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』(‘68)は、ブルース、カントリー、ロックンロール、フォークなどをミックスし、まったく新しいアメリカ音楽を生み出していた。彼らにはシングルヒットがあるわけでも、スター性があるわけでもなかったのだが、完璧とも言えるアルバムの完成度からクラプトンをはじめビートルズのジョージ・ハリスンやブルース・プロジェクトのアル・クーパーらに熱狂を持って迎えられるのだ。ザ・バンドに影響を受けたアーティストは多く、1970年前後は特にイギリスと日本が顕著かもしれない。日本では、はっぴいえんど、はちみつぱい、ディラン・セカンドなどがそうであるし、イギリスではブリンズリー・シュウォーツ、グリース・バンド、アンドウェラなど、パブロックのグループはほぼザ・バンドを目指していたと言っても過言ではない。

ザ・バンドの登場で土臭さやアメリカ的なサウンドに注目が集まり、70年初頭のスワンプロックやカントリーロックのブームへとつながったのは確かである。ただし、ザ・バンドの音楽はスワンプロックでもカントリーロックでもなく、独自のアメリカーナロックを追求している。彼らのアルバムはどれも驚異の完成度で、最終作の『アイランド』を除き、ほぼ完璧な仕上がりである。

■クラプトンの方向転換

クリームを解散し、ザ・バンドのようなアメリカ的なサウンドを目指したクラプトンが、同じくアメリカ音楽に影響を受けたウィンウッドとセッションを繰り返すことで、新しい方向性を見つけることになるのだが、まだザ・バンド的なサウンドを100パーセント目指しているわけでなく、あくまでもブリティッシュロックのカテゴリーの中で勝負しようと考えていたようだ。ブラインド・フェイスを結成する際にクラプトンが考えていたのは、クリーム時代のようにギターを弾きまくることはやめ、あくまでもヴォーカル(ウィンウッド)を活かすためにバックギタリストに徹することであったように思う。ブラインド・フェイスは誰がリーダーを務めてもおかしくないスーパーグループではあるのだが、スティーブ・ウィンウッドをフロントに据え、他のメンバーはバックミュージシャンとして支えるというコンセプトであったのかもしれない。

■本作『スーパー・ジャイアンツ』 について

本作のレコーディングは手元にある2001年にリリースされたデラックス盤のライナーによれば、69年2月、3月、5月、6月にわたって行なわれていて、そのうち2月と3月分については、リック・グレッチは未加入である。また、3月録音はジャム的なリハーサルで本編には収録されていない。グレッチが加入したのは5月になってからであり、2曲に関してはウィンウッドがベースをオーバーダブしている。

アルバム収録曲は全部で6曲、そのうち「Well All Right」(バディ・ホリー作。本作で唯一のカバー曲)と「Presence Of The Lord」(クラプトン作)の2曲がグレッチ抜きである。あとはウィンウッドの曲が3曲、ジンジャー・ベイカーの曲が1曲という構成で、ウィンウッド作の3曲はトラフィック・ミーツ・クリームといったテイスト。特にクラプトンのギターソロパートでは、ドラムがジンジャー・ベイカーだけにクリーム的な味わいがあって、それはそれで素晴らしい。

当時、クラプトンはまだヴォーカルに自信がなかったので、本作は全曲ウィンウッドが歌っているのだが、ウィンウッドはリードギターでも素晴らしいテクニックを披露しているし、キーボードはもちろん、ベースの腕前も文句なしである。これだけひとりが活躍すると、普通に考えればウィンウッドのワンマンバンド的な仕上がりになってもおかしくないのだが、クラプトンとベイカーの個性が強いだけにしっかりと存在を主張しているのはさすがだ。

収録されたナンバーはどれも良い曲ばかりだが、特に日本でシングルカットもされたクラプトンの「Presence Of The Lord」は名曲中の名曲である。この曲、ザ・バンドに影響されているのは明らかで、ウィンウッドのヴォーカル、ピアノ、クラプトンのギター、ベイカーのドラム(いつもの彼と違って少しおとなしい)、どれも名演である。間奏のリードギター部分はクリーム的な演奏で少し浮いているが悪くはない。

本作中、もっともよく知られたナンバーが「Can’t Find My Way Home」。これは本編のアコースティックバージョンよりも、クラプトンとウィンウッドのツインリードギターが味わえる6分近くに及ぶエレクトリックバージョン(デラックス盤に収録)のほうが出来は良いから、本編にはこちらを収録してほしかった。この曲は多くのアーティストがカバー(ウィンウッドのセルフカバーもいくつかあり)しているので、聴き比べるのも一興だろう。

「Sea Of Joy」ではグレッチのバイオリン(フィドル的奏法)がブリティッシュフォーク的な雰囲気を醸し出している。グレッチはクラシックからカントリーまで嗜む音楽オタクだけに、こういう演出はとても上手い。アルバムの最後を飾る15分にも及ぶベイカー作の「Do What You Like」は、メンバー全員にスポットが当たる構成になっていて、ベイカー、ウィンウッド、グレッチの3人がブラインド・フェイス解散後に結成するジンジャー・ベイカーズ・エアフォースのサウンドを先取りしたサウンドとなっている。ベイカーのドラムソロは重厚で素晴らしい。

本作は、クラプトンが自分の音楽を模索している過渡期の作品だが、ウィンウッドという天才とコラボレートすることで緻密なサウンドが生み出されており、ロック史に残る傑作となった。本作以降、クラプトンはアメリカンロック(もしくはブルース)を追求していくので、『スーパー・ジャイアンツ』はブリティッシュロック時代最後のアルバムだと言えるだろう。

TEXT:河崎直人

アルバム『Blind Faith』

1969年発表作品

\n<収録曲>
1. 泣きたい気持/Had to Cry Today
2.マイ・ウェイ・ホーム/Can't Find My Way Home
3.オール・ライト/Well All Right
4.プレゼンス・オブ・ザ・ロード/Presence of the Lord
5.歓喜の海/Sea of Joy
6.君の好きなように/Do What You Like

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