「昔は痩せてた」「美女にモテモテ」飲むほどウソをつく“虚言リーマン”の残念な末路とは?


(前回はこちら

どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――




ある意味「夢追い人」!? 迷惑極まりない虚言デブの末路


 年は40代半ば、常にスーツ姿。身長はそこそこあるけど体重はそれ以上にある、いわゆるデ……巨漢。若い頃は痩せていて、ブレイクダンスをやっていたというので、ここでのあだ名を「ブレイクさん」とします。

ブレイクさんは毎回、席に座ると上機嫌で高級ウイスキーのハイボールを注文し、「隣の店で頼むより100円安いから!」と自らの経済観念をアピールします。そしてハイボールをグビグビと喉に流し込み、夢のある話を披露してくれるのです。

「俺、こう見えてモテるから。特に外人。こないだも六本木のバーで飲んでたら、金髪のロシア人の女2人にホテルに連れてかれちゃって、結局3Pしたよお」

すごい……夢があります。顔のパーツが肉に埋もれて、もともとのお顔立ちがいまいち判別できないレベルの巨漢であるブレイクさんですが、六本木に行けば何をせずとも金髪美女からベッドのお誘いがあるようです。しかも3Pとは、求められ方が尋常ではありません。

「そんでコンドーム着けようとしたらよお、『アンタの子どもが欲しいから、そんなもの着けるんじゃねえ』って怒ってコンドーム取り上げて、投げつけてくるんだよお」

初対面の男性とベッドインして中出しを求める外国人女性……夢というより都市伝説です。本当だとしても「日本国籍」とか「養育費」等々のワードが脳裏をかすめます。また「中出しを要求しコンドームを投げつけてくる」女性がたびたび彼の武勇伝に登場するのですが(その時々で外国人だったりお水のお姉さんだったりします)、この世界のどこかではやってるのでしょうか?

――とにかくこんな調子で、夢のような話をたくさんしてくれるブレイクさん。バーとは非日常を味わう空間なので、そこでなされる会話の虚実は曖昧でいいとして……問題は話し方。店内全体に響く大声で、1時間以上同じ話を繰り返します。ちょっと面白いと思った話も繰り返されるとウンザリ。何度も話しているうちにディテールが変化したりするのですが、それを指摘すると顔を真っ赤にして自分の話が事実だと強弁。また長時間滞在するので、居合わせたお客さまは彼の話に辟易して次々と帰ってしまいます(常連さんなどは、彼が来店しただけで退散します)。当初はニヤニヤ聞いていた私も、これでは商売あがったり。どうにかして彼の足が遠のく方法はないかと考えるようになりました。

「実はゆうべ、Mちゃんと飲みに行ったんだよお」

ある夜、ブレイクさんはうれしそうに話し始めました。Mさんはこのバーの常連で、近所のスナックのママ。彼女のお店に行ったブレイクさんは、アフターで一緒にお寿司屋さんに行ったそう。そこでMさんが“熱烈アプローチ”をしてきたというのです。

さすがにこれはダウト! ……というのも、Mさんは自他ともに認める超イケメン好きで、営業でアフターに行ったとしても巨漢のブレイクさんに色目を使うことはあり得ません。私はさりげなくスマホのボイスメモを録音モードに。そうとも知らず、ブレイクさんはMさんとのデートの顛末を話し続けます(“熱烈アプローチ”から、いつの間にかセックスをしたことになっていました)。ある程度、言質が取れたところでボイスメモをMさんに送信。20分もしないうちに能面のような表情のMさんが来店しました。ブレイクさんはうろたえて口数が少なくなっています。

「おいデブ、何いいかげんなこと言ってんだ」

アイドル系の可愛らしい顔立ちのMさんが低い声で問い詰めます。必死ではぐらかそうとするブレイクさんですが、流言の証拠であるボイスメモを再生されると、顔を真っ赤にしてうつむいてしまいました。

「私、既婚者だから。こういう嘘、今後も広めるつもりなら法的手段を検討するよ?」

Mさんの言葉に、顔色が真っ青へと変化したブレイクさんはそそくさとお会計を済ませ、帰っていきました。以降は来店することもなく、店には平穏が訪れました。が、夢の住人は現実の世界では生きられません。きっとまたどこかのバーで、夢みたいな話をしているのでしょう。

(隔週金曜日・次回は4月27日更新)



プロフィール

浮川紫帆(うきがわ・しほ)
東京都内の繁華街の一角でバーを経営する30代バツイチ女性。ママ歴は6年。好きなお酒はマカストロングのお湯割り。

(イラスト=ドルショック竹下)

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