最新ニュース、芸能、ネットの話題をまとめ読み

 

豆腐一丁よりビッグ!奈良県・吉野のくず餅/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.21 奈良県「吉野の葛餅」】

今回のテーマは「吉野の葛餅(くずもち)」だ。

随分有名どころ、というか鉄板なところが来たな、という印象だが、改めて考えると「貴様は吉野葛の何を知っているのだ」と言う気もするし、「今、一瞬、信玄餅のこと考えただろ?」と言われたら、二の句が継げない。

まず葛餅の葛は植物であり、その根から取れるでんぷんを粉末状にしたものが「葛粉(くずこ)」、その葛粉を溶かし砂糖などで味付けし固めたものが「葛餅(くずもち)」である。

葛はすでに奈良時代からこのように食用にされてきたそうだが、最初にそれをやりだした奴は一体、何を根拠にどんな自信があって、葛の根を粉末にしてみようと思ったのか。

やはり太古から「気づく奴は気づく」のだろう。自分だったら根っこを生で食って腹を壊すぐらいしか出来ない。奈良時代に生まれなくて良かった。

◆奈良平城京の近く横田福栄堂の三番手、くず餅

吉野はその当事から葛の産地であり、今も「吉野葛」として有名なのである。

ちなみに漢方の葛根湯(カッコントウ)もその名の通り、葛の根である。生で食って腹を壊すどころか薬にまでしてしまっている。我々が生きていけるのはこういう「気づく側」の人のおかげと言っていい。

今回送られてきたのは「横田福栄堂」のくず餅である。奈良平城京の近くに店舗を構えるという、まさに本場、の一品だ。

店舗のHPに飛んだところ、早速「手づくりみそせんべい本舗」という力強いキャッチが出迎えてくれた。

「くず餅がイチオシではないのか」

一瞬そう思ったが、それは「香川県民は息の代わりにうどん吸ってるんでしょ」というような偏見にすぎない。

それに、横田福栄堂のエースはみそせんべいのようだが、くず餅だってちゃんと三番目にラインナップされている。

「三番手かよ」と思わなくはなかったが、他にくず餅の老舗は多くあろう中で、この店が選ばれたのは何か意味があるに違いない。

そう思い、くず餅のページに行ってみると、ここではくず餅は、プレーンな「白」と「小豆」の二種類が販売されているようだ。

どちらも美味そうだが一つ気になることがある。「1個入り」と言う表記だ。ちなみに1個756円である。

◆くず餅が一塊でやってきたのだ

考えても仕方ないので開けてみたところ、本当に「1個」としか言いようがなかった。

豆腐一丁より一回りでかいぐらいのくず餅が「1個」入っていたのである。

意表を突かれた。

完全に個包装されたくず餅が何個か入っているのをイメージしていたからだ。

「やっぱりお前、信玄餅のこと考えてただろ」と言われたら、その通りです、と言うしかない。

この形が吉野くず餅のスタンダードなのか、吉田福栄堂独自のものかは不明だが、とにかくくず餅が一塊でやってきたのだ。かなり迫力のあるたたずまいである。「業務用」という感じがする。

◆真理をこのくず餅から学ぶことができた

これを好みの大きさに切り分けて食べるのだが、もう一つ重要なのは、付属の黒蜜ときな粉も一袋という点である。

これは配分をミスると、黒蜜やきな粉が余ったり、逆に最後の方、くず餅オンリーで食うことになってしまう。

赤福ですら小分けされる時代に、ここまで「自分でやれ」というスタイルは逆に珍しい。

だが逆に「自由にやれる」ということでもある。

「俺は残り全部くず餅のみで食うことになっても、最初の一口に、黒蜜きな粉全部ブッこむ」というならそうしてもいいし、そもそも切り分けるかどうかさえ、自由だ。冷奴みたいに、くず餅1丁のまま、黒蜜ときな粉を全部かけてもいいのである。

ある意味、切り分けていないことにより、ケーキ1ホール丸ごと食う、みたいな夢のある食い方ができるのだ。

相手に至れり尽くせりされると逆に自由が奪われる、という真理をこのくず餅から学ぶことができた。

自分は独創性にかけるので、普通に切り分けて食べようとしたのだが、切り分けて食べる時点で「こんなに強かったっけ?」と思った。

◆食べてみるとやはり、強い

弾力の強さが想像と全然ちがう。切るのに苦労するぐらい強い。

だがグミでもハードタイプが好きなので、この弾力の強さは嬉しい。

私は黒蜜が好きなので、餅に対して多めにかけることにした。こういう調整ができるのもよい。

食べてみるとやはり、強い。だがくず餅自体は甘さ控えめで黒蜜がよくあっている。

おそらく、初回黒蜜をかけすぎたせいで、最後ノー黒蜜で食べることになるだろうが、初回自分好みの味で食べれたので満足だ。

しかし「吉野くず餅」と言われたら「ああ、あれね」と思うが、いざ実物を前にすると随分イメージと違うものである。百聞は一見にしかずだ。

<文・イラスト/カレー沢薫>

【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『負ける技術』『ブスの本懐』『やらない理由』などがある


外部リンク(女子SPA!)

Yomerumoをフォローする

Yomerumoから人気記事をお知らせします!

Twitter

グルメ最新記事

記事一覧

注目ニュース

> もっと見る


掲載情報の著作権はニュース提供元企業等またはGMOアドマーケティング株式会社に帰属します。記事の無断転用を禁じます。
すべての人にインターネット
関連サービス