ロイヤル・バレエ『冬物語』主演の平野亮一にインタビュー~英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマ シーズンにて4月下旬公開

SPICE

2018/4/12 14:15



世界的人気を誇る英国ロイヤル・バレエ団においてプリンシパル(最高位ダンサー)を務める平野亮一は、同団の屋台骨を支える名ダンサーだ。平野は2018年2月、シェイクスピア原作で、大人気作品『不思議の国のアリス』を手掛けたクリストファー・ウィールドン振付の『冬物語』全3幕(2014年初演)のメイン・キャストであるリオンディーズ役を踊った。その模様が4月下旬「英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマシーズン 2017/18」の一環としてTOHOシネマズ 日本橋ほかで全国順次公開される。「SPICE」では、3月末、平野に国際電話で単独取材を行い、プリンシパルとして踊る今の心境そして『冬物語』への思いを聞いた。
The Winter's Tale. Ryoichi Hirano as Leontes and Lauren Cuthbertson as Hermione (C)ROH,2018.ph.byTristram Kenton
The Winter's Tale. Ryoichi Hirano as Leontes and Lauren Cuthbertson as Hermione (C)ROH,2018.ph.byTristram Kenton

── 2016/2017シーズンよりプリンシパルに昇進されましたが、舞台に立つ上での変化はありますか?

昇進して2年目なのでプレッシャーをそこまで感じなくなりました。それよりも毎日の練習を凄く頑張るようになりました。舞台は何が起こってもおかしくない所なので、失敗もしますが、もし失敗しても「やるだけのことをやったから、しょうがない」と自分に言い聞かせられるように精一杯練習することを心がけています。最近はリハーサルが激しいですし、舞台数も集中しているので、舞台一つひとつに全力投球を心がけるようにしています。

── プリンシパルに昇進する以前から主役を含め重要な役柄を踊られていますが、プリンシパルとして踊る時に同僚の目や観客の反応は変わりましたか?

期待度は高くなっていると思います。プリンシパルという名前の重みはありますね。ファースト・ソリストで主役をやって「凄く良かったとよ」というのではなく、今は出来て当然なのが前提です。そういう見られ方をしていると思っているので、プリンシパルの肩書に傷をつけないようにしています。

── 2018年2月にロンドンのコヴェント・ガーデンにあるロイヤル・オペラ・ハウスで開幕した『冬物語』全3幕の初日でリオンディーズ役を務められ、ライブビューイングの収録舞台にも出演されました。初めてリオンディーズを踊ったのは昨夏のオーストラリア公演だと伺っています。

ブリスベンで踊りました。怪我をしたティアゴ(・ソアレス)の代わりに急きょ踊りました。今回のロンドンでは5回踊り、そのうちハーマイオニー役はローレン・カスバートソンが3回、クレア・カルバートが2回でした。

── 『冬物語』は平野さんが演じられたシチリア王リオンディーズが妻のハーマイオニーと親友のポリクシニーズの不義を疑い赤ん坊を追放するというように展開していきます。リオンディーズを演じるに際して、どのようにアプローチされましたか?

物語をしっかり把握するようにしています。僕の伝える物語があやふやだったら伝えきれません。2014年の初演の時はポリクシニーズのアンダースタディ(控え)でしたがクリエイションを見ているので、クリストファー・ウィールドンがどのように魅せたいのかを分かっていましたし、舞台を何度も観ていたので、自分なりの表現の仕方は頭の中にありました。ボディランゲージについて考えましたね。どのように体を使って感情を伝えるのかを凄く気にしました。

── 収録映像を拝見しました。リオンディーズが嫉妬に駆られる場面などで指先まで全身に神経を払って演じられているのが伝わってきました。ウィールドンとのリハーサルで役を創りあげていったのでしょうか?

はい。僕なりに役を創りあげていたのですが、頭の中で想像するのと見てもらうのとでは表現の取り方が違う所があったので、ウィールドンとアシスタントのジャクリーン・バレットに相談しながら「僕はこのように表現していたつもりだった」というように話し、やり取りしました。
The Winter's Tale. Ryoichi Hirano as Leontes and Laura Morera as Paulina (C)ROH,2018.ph.byTristram Kenton
The Winter's Tale. Ryoichi Hirano as Leontes and Laura Morera as Paulina (C)ROH,2018.ph.byTristram Kenton

── コヴェント・ガーデンで上演されるのは初演の2014年と2016年に続いて3回目でした。リオンディーズの初演キャストはエドワード・ワトソンで、エキセントリックな演技が話題になりました。それを踏まえて独自の解釈を打ち出した部分はありますか?

僕なりの表現の仕方はあったと思います。オリジナル・キャストがこうしたから…ということはしたくなかったです。そこを評価していただけました。「エドワードを思い浮かばせない役柄を創り出せた」と。僕もそう思いたいので凄くうれしかったですね!初演されたのはそう遠くないですし、インパクトのある役柄です。でもエドワードのことを思い浮かばせずに僕の演技に集中してもらえました。

── 初演からハーマイオニーを踊っているローレン・カスバートソンとは全幕の主役として組むのは『冬物語』が初めてだそうですが組んでみていかがでしたか?

何回か踊っていたので、どういう踊り方をするのかは見当がついていましたが、お互い探り合いながらやっていきました。オーストラリア公演に続いて組んだので、その時よりもすんなりと踊れました

── 第1幕では、ハーマイオニーが妊娠していますが、そこで踊るデュエットは普段の古典作品とは違うかと思います。いかがでしたか?

以前はリハーサルの時にローレンがお腹(に膨らみ)を付けていました。今ではそういうこともなく、ポイントポイントで気を付けないといけない所があるので、その辺りを重要視して気を付けるようにしました。

──第3幕の最後にハーマイオニーと踊るパ・ド・ドゥは思いが伝わってきて美しいですが、そこへの気持ちの持って行き方はどのようにされていますか?

第1幕の最後の、崖に堕ちるような感情の落ち方は自然とそう持っていかされるものです。でも、最後のパ・ド・ドゥは、リオンディーズになり切ることによってあふれ出てくる感情があります。考えながら演技すると偽物になってしまうんですね。自分の気持ちから自然にあふれ出るようにするには、物語を知り尽くし、役柄を考え抜いて入り込む。そうすると自然にそのキャラクターの感情が出てきます。それが一番大事だと思っています。

── 振付のウィールドン、音楽のジョビー・タルボット、美術・衣裳のボブ・クローリー、照明のナターシャ・カッツは『不思議の国のアリス』(2011年初演)と同じチームですが、彼らとの仕事で感じることを教えてください。

『冬物語』はクリスがロイヤル・バレエに振付する2つ目の全幕作品ということで『不思議の国のアリス』とは違う魅せ方をしています。『不思議の国のアリス』は大掛かりですが『冬物語』はシックです。違う魅せ方で大きな新しい作品を創ったということは素晴らしいと思います。

── 日本でもコヴェント・ガーデンからのライブビューイングが「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」として定着し、昨年末公開の『不思議の国のアリス』は再上映が行われるほど評判を呼んで注目が高まっています。日本の観客に一言いただけますか?

物語を楽しんでほしいというのが一番大きいですね。僕たちは物語の語り手で、体を使って物語を語っています。それから他にもいろいろな作品が上映されるので、どんどん観に来ていただきたいです。毎年違う作品を上演するので興味を持ってほしいですね。「聞いたことがない作品だから、どうしよう…」というのではなく、「聞いたことがないなら観てみよう!」と思って来ていただきたいです。

── 今シーズンまだまだ舞台が続きます。抱負をお話しください。

ウィールドンの新作『Corybantic Games』に出ます。『マノン』ではレスコーを、『白鳥の湖』では王子を踊ることになっています。プリンシパルとして情けないアーティストにはならないように、日々の練習を欠かさず頑張っていきたいです。


取材・文=高橋森彦

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