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【明田川進の「音物語」】第2回 音響監督の成り立ちと、「AKIRA」の音楽を芸能山城組に依頼した理由

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 今回は、音響監督の成り立ちについてお話したいと思います。僕が制作進行として虫プロに入った頃は音響監督という役職はまだなく、「鉄腕アトム」では、フジテレビの別所(孝治)さんというプロデューサーの方がアフレコに立ち会っていました。虫プロの先輩で、のちにグループ・タックを立ちあげる田代(敦巳)氏と2人で別所さんがディレクションを行っているのを見ていて、僕はアフレコ台本をつくるために、絵コンテからセリフを原稿用紙に書き写す仕事などをしていました。当時の印刷はガリ版でした。

僕が虫プロに入ったのは、ちょうど「アトム」の放送がはじまった1963年で、はじめて担当したのは杉井ギサブロー監督の回でした。その頃から、音に非常に興味がありました。その後、田代氏が、自分たちで音のディレクションもやろうと虫プロの中に音響のセクションをつくり、「アトム」の途中から田代氏が音響監督としてたつようになりました。それからは社内に音響監督がたつようになり、その頃から他でも音響監督という役職ができていったんじゃないかと思います。その前から外画の吹き替えを担当する監督はいましたが、そちらは効果音や音楽がすでにありましたから、アニメの音響監督とはちょっと違います。一方、東映さんは、実写でいうスクリプターのようなかたちで、演出の方が音の仕事もふくめて全部やるかたちをとっていて、今でも同じかたちのはずです。

東映さんのやり方を引き継いで、監督自らディレクションをする方が今も何人かいらっしゃって、そうやって自分の考えを直接役者さんに伝えられるのが、いちばんベターだと思います。ただ、今のアニメーションの制作現場のことを考えると、そこまで監督が携われないぐらいスケジュールがメチャクチャなことが多い(苦笑)。また、スケジュールのことはクリアできても、そこまでやっていると他の仕事ができなくなるからと、ある程度「音は音響監督に任せる」かたちになっているところがあると思います。そうした関係があるからこそ、音響監督は、監督から作品をどのようにしたいのかとの意をうけて、そこに自分の考えものせ、よりふくらませたかたちで音のプランニングをしていけるのです。

音響監督の仕事のひとつに、音楽メニューづくりがあります。今は、1話ずつ音楽を録っていく作品は年に1~2本あるぐらいで、ほとんどの作品は「貯め録り」といって、シチュエーションにあわせた50~70曲ぐらいの音楽メニューをまずつくります。メニューは音響監督がつくることが多く、監督から「こういう曲がほしい」との要望があればそれも入れこみ、つくったメニューは監督にチェックしてもらってから作曲家さんに渡します。そこから、メニューごとに細かい打ち合わせをしながら曲をつくってもらう流れです。

できあがった曲を映像につける方法も、2通りあります。どのシーンにどんな音楽をつけるのかという「Mライン」(※音楽ライン)を、すべて指定する監督もいますが、ほとんどの監督は音響監督にお任せで、こちらでラインを引きます。また、「MA」(※マルチ・オーディオ/音声処理作業)のときに、気になるところがあれば変えることもあります。選曲は面白いですよ。作曲家から「まさかこんな使い方をするとは思わなかった」と言われたり、曲と映像がピッタリあったりするとうれしいです。ただ、今のアニメの制作状況では、後半にどんな音をつくったらいいのか先が見えないケースもあるんですよね。そのため、音楽の貯め録りは、前半と後半の2回にわけて行うことが多いです。作品をつくるなかで必要な音楽が見えて、途中でこういう曲がほしいとの要望が監督からでてくることもあって、そんなときも2回目の録音で対応することができます。

 今はレコード会社の関係などもあって難しいところがありますが、昔はわりと音響監督から「音楽は、こういう人とやりたい」と言えました。僕が音響監督を担当した「AKIRA」(※1988年公開)では、監督の大友克洋さんに芸能山城組に音楽をやってもらったらどうでしょうと提案したことがありました。ケチャの音楽のサンプルなどを聴いてもらったら、大友さんも「やりたい」と言ってくれて、代表の山城(祥二)先生のところにお願いにいきました。最初は映画の説明だけをさせてもらい、次にうかがったときに返事を聞いたのですが、本当は先生、断るつもりだったそうです。ただ、芸能山城組の団員たちは若い人が多くて、その人たちは大友さんのファンが多かった。「大友さんの映画を断るのはおかしい」と言われて、やっていただけることになったと聞きました(笑)。

僕は芸能山城組がはじめてレコードをだしたときからのファンで、いつか何かの映像で使えないかと思っていました。そんなとき、「AKIRA」の音楽の打ち合わせで、大友さんから“レクイエム”というキーワードをいただいて、芸能山城組が手がけているホーミーやブルガリアンボイスのような民族音楽は、レクイエムという言葉にピッタリな気がしたんです。そうやって音楽から作品の世界観までつくっていけるのが音響監督の醍醐味で、当時は実写よりアニメのほうが、そうした新しいことができる可能性をもっていたように思います。

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